秋元通信

「ポケモンが物流業界を進化させる?」  知っているようで知らない最新技術の話

  • 2016.10.18

「ポケモンGOが、物流業界の技術革新を加速させるかもしれない」

社会現象となりつつあるポケモンGO。一方で、行き過ぎたブームに対し、批判も集まっています。

社会現象となりつつあるポケモンGO。一方で、行き過ぎたブームに対し、批判も集まっています。

そう言われたら、皆さんはどう思いますか?
今回は、ポケモンGOを入り口に、知っているようで、意外とその詳しい内容を知らない人が多い話題の最新技術を、物流業界への影響を考えつつ解説しましょう。

まずは、ポケモンGOに関するおさらいから。
ポケモンGOは、スマートフォンの画面を介して、現実の街なかに生息するポケモンたちを捕獲、育成するゲームです。
ポケモンGOを開発し、運営しているのは、ナイアンティックというアメリカの企業です。勘違いしている方も多いのですが、任天堂が運営しているわけではありません。ナイアンティックは、Googleの社内ベンチャーとして始まりました。

「スマートフォン向けの拡張現実技術を利用したオンラインゲーム・位置情報ゲーム」
ポケモンGOを技術的側面から説明すると、このようになります。

ポケモンGOは、VR(Virtual Reality/仮想現実)と呼ばれる技術がポイントのひとつとなっています。VRという言葉が生まれた1989年以降、鳴かず飛ばずだったVRに対し、もっとも成功した事例が、ポケモンGOと言えます。

なぜ、今までVRはいまいちパッとしなかったのか。
筆者は、「VR技術活用のステージが、エンターテインメント分野にほぼ限られてしまったこと」と、「キラーコンテンツの不在」が理由であったと考えています。

わかりやすいVRの使いみちのひとつに、現実世界に仮想世界の情報を重ねる使いみちがあります。ポケモンGOの場合は、現実の街なかにポケモンという仮想世界のモンスターを重ねたわけです。

VRは物流業界に、もっと詳しく言えば、倉庫作業に革新的な作業改善(生産効率の向上)をもたらす可能性があります。
倉庫作業をするあなたは、「A社の商品BCD、ロットナンバーB012345678は、どこにあるんだろう?」と考えます。すると、目の前にピカチューが現れ、広い倉庫の中を、探す商品まで案内誘導してくれたらどうでしょう。(ピカチューは冗談ですけどね)

「うちは、既にフリーロケーション管理のシステムを導入しているから無用です」
だとしたら、野積倉庫だったら?、水面倉庫だったら?
例えば、海コン現場の広大な駐車場に並ぶ多数のトレーラーから一台を探す場合に、「ここにあなたが目指すトレーラーがありますよ!」と、空に目印が浮かんでいたら、とても便利だと思いませんか。

ポケモンGOは、誤解を恐れず言えば期待はずれだったVRに再び注目を集めることに成功しました。つまりVRは、ポケモンGOをきっかけに再び技術開発が加速的に進む可能性があるのです。

ただし、これには課題があります。
ポケモンGOのように、目の前にスマートフォンをかざして、倉庫内を歩くわけには行きません。危険ですし、そもそも面倒で非効率的極まりありません。
そこで期待されるのが、ウェアラブル端末。さまざまな形状や形式のものがありますが、期待したいのは、メガネの内側にディスプレイを装着し、あたかも文字や画像などの情報が、目の前に浮かんでいるように見えるメガネ型ウェアラブル端末です。

VRの活用シーンを飛躍的に拡大すると期待されたメガネ型ウェアラブル端末ですが、その開発、市販化は行き詰まっています。ウェアラブル端末の旗手として期待されたGoogleGlassは2013年に市販されましたが、めぼしい成果もなく2年後には発売中止に追い込まれました。
理由はいくつもあります。
技術的な課題、価格、そしてプライバシーの問題。例えば、ラスベガスのカジノやバーにおいては、人目を忍んでカジノやバーに通う客を盗み撮りすることも可能であるとの懸念から、GoogleGlassは使用禁止になりました。運転中に使用することも、安全上の問題からも禁止すべきと議論されています。

先日行われた国際物流総合展においても、メガネ型ウェアラブル端末を使ったVRフリーロケーション管理システムの出展が複数ありました。しかし、どれも高額でしたし、機能もいまいちでした。はっきりと言ってしまえば、物流業界という狭いマーケットだけをターゲットに、VRであり、メガネ型ウェアラブル端末の発展を期待するのは無理です。
しかし、ポケモンGOというキラーコンテンツを得たことによって、VRだけではなく、メガネ型ウェアラブル端末の開発が加速する可能性は、大いに期待できます。そしてその恩恵を、物流業界も受けることができると、私は期待しています。

JAXAでは、「みちびき」を学ぶことができる特設サイトを儲けています。画像をクリックすると、みちびき特設サイト「QZ-vison」が開きます。

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ポケモンGOを支える、もうひとつの重要な技術にGPSがあります。
 
GPSは、アメリカが軍事用に打ち上げた人工衛星からの信号を元に、位置情報を取得する仕組みです。御存知のとおり、GPSには誤差があります。例えばカーナビにおいては、高速道路の側道を走っていても、高速道路を走っていると認識されることがあります。
 
GPSの誤差ですが、実は意図的に設定されているものであることをご存知でしょうか。先に申し上げたとおり、GPSはアメリカが「軍事目的で」運用しているものです。そのため、わざと10mほどの誤差を与えるように設定されています。軍事用に暗号化されたGPS信号を使うと、誤差は16cm内に収まるとされています。
 
湾岸戦争の際、アメリカは無人兵器を使ってピンポイント爆撃を繰り返しました。精度の高いGPS技術があったからこそできたことですが、他国に同じことをさせないために、他国、もしくは民間企業が利用可能なGPSは、あえて精度を悪くしているわけです。
 
 
しかし、GPSの産業利用を考えると、やはり精度の高いGPSが欲しくなります。そのため、日本では、日本独自のGPS衛星を打ち上げるプロジェクトを立ち上げました。
これが、準天頂衛星システム「みちびき」プロジェクトです。

「みちびき」は、2010年に初号機が打ち上げられています。2019年には3基追加の4基体制へ、2025年には7基体制になる予定です。
2019年の「みちびき」4基体制以降、「みちびき」の恩恵を私どもは受けることができるようになります。GPSの測位速度が従来の30秒~1分から15秒程度に短縮でき、またセンチメートル単位の誤差で位置情報の取得が可能になるとされています。

GPSの精度が良くなれば、物流業界にとってはさまざまなメリットがありそうです。例えば、運転日報。運転日報に記載しなければならないトラックの走行距離は、原則として車両からパルス信号で取得すべし、というのが現状のレギュレーションです。GPSの精度が上がれば、GPS機器から取得した運転日報もOKとされる可能性があります。運転日報を出力可能なシステムは、現状のレギュレーションだとデジタコと連動しなければならないため、どうしてもコストが高くなります。
これが、例えば「みちびき」対応GPSを備えたスマホで運転日報が出力できるようになれば、ドライバーは運転日報の手書きから解放され、運行管理者も運転日報のデジタル管理ができるようになるなど、コスト以外でのメリットもたくさん生まれそうです。

さて、だいぶ端折りながらもご紹介した最新技術、いかがでしたでしょうか。
筆者は仕事柄(そして趣味で好物なので)、この手の話は詳しいですが、ぶっちゃけ多くの人にとっては知らなくて良い話だと考えています。
ただし、この手の話を聞いて、「なるほど、もしウチだったら、これはこんな風に活用する手もあるかな?」を想像力が働く方は、ITの得手不得手に関係なくセンスのある方ですね。

今後も、折に触れてこのようなテクニカルな話をかいつまんでお届けしたいと思います。
お楽しみに!


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