秋元通信

鈴木清が振り返る2016年物流業界

  • 2016.12.21

今年は、中小物流会社の将来を憂慮するような変化が多くありました。

『物流はなくならないが、物流業はなくなる』
『中小の物流会社は、協調なくして将来はない』

結論から言ってしまえば、これが私の2016年における総括です。お客様に対しても、同業の皆さまに対しても、今年は何度もこの言葉を繰り返しました。

 

先日開催した情報交流会で挨拶をする鈴木。実は、この時も同様のお話をさせていただいていた。

先日開催した情報交流会で挨拶をする鈴木。実は、この時も同様のお話をさせていただいていた。

この言葉の意味と意図をお話ししましょう。
「物流業界では今、巨大物流センターが空前の建設ラッシュだ」
これは、東洋経済2015年6月号に掲載された特集記事「物流大激突」の書き出しです。
今もなお、大手物流事業者や荷主企業は、先進的物流施設を利用した物流機能強化の手を緩めるつもりはないようであり、物流不動産開発はこの瞬間も活発に動いています。ちなみに、開発対象地域は、関東が約6割を占めています。
「先進的物流施設」と書きましたが、その多くは複数のテナント企業が入居可能なマルチテント型物流施設を指します。
しかし、良いことばかりではありません。供給過多の兆しも現れ始めており、空室が埋まるまでの期間が1年にも及ぶ施設も出てきているそうです。

そのあおりで、私ども中小倉庫会社における、旧来施設の集荷は、日増しに厳しくなっています。
仙台では、震災前後で営業倉庫の所管面積の倍近くに増えました。震災直後は、震災被害にあって使えなくなった施設の影響や復興需要などで施設供給はタイトでしたが、現在では復旧や復興需要も落ち着きはじめ、施設余りも懸念され始めています。

今、大型物流施設のテナントとして割合を増やしているのは、EC市場のプラットフォーマーだと思われます。
その中でもアマゾンの勢いは凄いですね。
Amazon.com のサービス開始は1995年7月。21年で現在の隆盛を生み出したことになります。顧客中心主義を打ち出し、「お客様が一番喜ぶこと」をするためだけを考えています。
その中心にあるのは、アマゾンの物流変革ではないでしょうか。
物流こそ競合他社との差別化であり、顧客に対する付加価値として、とても有益な武器になることに気付いたのだと思います。

「今すぐ欲しい」
私もそうです、欲しいものはすぐ手に入れたい。
実現させるために、アマゾンを筆頭に通販各社は、当日の速配を実現しました。

15年前、私はアスクルのビジネス構想を聞き、驚きました。通販で買い物して明日届けるから、『アスクル』。当時の通販は、配達まで7日はかかっていた時代です。さらに驚かされたのが、『今日くる』をいずれ実現するとおっしゃられていたこと。
この構想を聞かせてくれたのは、アスクルの前身となった会社の部長でした。
腹の中で笑っていた自分がいたことを、私は今でも覚えています。
アマゾンは、宅配業者への依存から脱するため、自前配送強化を図っています。物流センターの仕組みや配送ネットワークを完全に自社でコントロールしようというのです。
アマゾンにおける2015年度の宅配事業社への支払いは、1.3兆円。これは売上高の11.6%になるそうです。確かに高い水準に思えます。
ちなみに、日本最大手の宅配事業者であるヤマトのデリバリー事業の売り上げが1.1兆円であり、比較するとアマゾンの巨大さが見えてくるでしょう。
船、飛行機、トレーラー、物流施設、マテハンシステム、すべて自前のハードでコントロールをしているアマゾン。
アマゾンは単なる通販会社ではなく、むしろ巨大物流事業者と言ったほうが正解でしょう。

「今の物流事業者のサービスレベルは、自分たちが、求めているサービスにほど遠い。だから自分たちで物流構築するんだ」

こんな言葉を聞いたことはありませんか?
確かに、最近大型物流施設のテナントを診ると、自社物流を構築している荷主企業が多くみらます。私ども物流事業者に三行半を下したのだろうと感じます。
そして、私どものレベルを超えた物流改革が始まってるのだと実感します。
総務省の発表だと日本の人口推移は、2015年に初めて減少に転じたとあります。
2016年 1億27百万人
2020年 1億24百万人
2050年 1億人割れ
2060年 9千万人割れ
2100年 83百万

今後、30年から40年で、日本の人口は3000万人減少する計算になります。
年間個人消費額は、平均200万円から240万とされています。減少する3000万人を掛けると、700兆円にもなります。
まだ、先の話だからと楽観視することは危険な発想です。年々減少していくわけですから、これからの景気は想像できてしまいます。既に日本の一部の地域では過疎化が始まっているのはご承知のとおりです。
一例を挙げましょう。
山形県人口は116万人、秋田県人口は101万人に対して、川崎市は147万人。恐ろしい話ではありませんか。
日本の人口は、近い将来一極集中になってしまうのでしょうか?
物流施設の供給過多、荷主企業の物流事業者離れ、物流業界の人手不足(ドライバー不足)、消費の減少…
鑑みれば、中小物流会社の将来はあるのでしょうか?

一部では、既に大手物流事業者の再編や戦略的アライアンスも進んでいます。
私も驚いた、佐川と日立物流の資本業務提携。
大手3社の船会社、日本郵船、川崎汽船、商船三井がコンテナ船部門の提携を行うなど。
最近では、準大手がグループ会社や協力会社を集め、施設や車の共同化と称し、大企業並みの機能を構築し始めています。

「協調こそ生き残りのすべて」
私ども中小の物流事業者は、協調の重要性は、増すことはあっても減ることはないでしょう。
物流業界の下支えをしてきた、小規模の運送会社は、廃業やM&Aで集約され物が運べない運送業は現実味を帯びてきています。

『物流はなくならないが、物流業はなくなる』
『中小の物流会社は、協調なくして将来はない』

秋元運輸倉庫が、アルケミートレード、そしてイーカーゴというふたつの子会社を創ったのは、協調であり、ネットワークを強化するためです。
二社とも弊社の100%子会社ではなく、株主は物流会社、異業種など、複数の会社によって構成されています。
これからも良きパートナーとめぐり合うため、2017年は次なるビジネス環境を整えたいと考えています。


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