秋元通信

赤字だらけの運送業界?【運送ビジネスはいつ破綻するのか!?】

  • 2017.4.27

宅配便の再配達問題をきっかけに、ここ最近、運送や物流が一般メディアやSNSでも話題に挙がる機会が増えています。
概ね、物流事業者に対する同情的な論調や発言が多いように見受けます。

ドライバーさんは、何度も再配達させられて大変だ!
Amazonはひどい…

個人的には、物流業界に対する擁護&同情の世論が行き過ぎているように感じます。実際に、一部ではありますが、逆風の意見も出始めています。

例えば、未払い残業代の支払いに備え、ヤマトホールディングスは2017年3月期の業績予想(営業利益)を580億円から340億円へと大幅に下方修正しました。
 
とは言え…、ですよ。

「えっ!?、再配達のせいで儲からないって言ってたのに、更に残業代を払っても、340億円も利益出しているの!?」

折しも、全日本トラック協会が、「経営分析報告書 平成27年度決算版」をリリースしました。これは、協会会員の運送事業者に対し、決算のヒアリングをまとめた統計であり、トラック輸送産業の景況感を把握する上で、とても重要な資料です。

不定期連載【運送ビジネスはいつ破綻するのか!?】。
今回テーマは、「赤字だらけの運送業界?」です。
「経営分析報告書 平成27年度決算版」に加え、財務省がまとめた「年次別法人企業統計調査」を比較しながら、運送会社の懐具合を考えましょう。

まずは、「経営分析報告書 平成27年度決算版」(全日本トラック協会)から。
同統計は、このようにまとめられています。

「燃料価格下落によるコスト削減により営業赤字企業の割合は減少したが、人材不足対策によるコストアップ要因が影響し、業績改善は限定的となった」

  • トラック輸送事業の平成27年度における営業利益率の平均は、マイナス0.3%。
  • 営業利益率は、保有する車両台数の少ない運送会社ほど悪い。
  • 営業黒字を出した事業者の割合は、51%にとどまる。
  • 車両10代以下の運送会社では、約55%が赤字である。
トラック輸送産業の営業利益率の推移。徐々にではあるが改善傾向にある。

トラック輸送産業の営業利益率の推移。徐々にではあるが改善傾向にある。

営業利益率の平均は、マイナス2.3%(平成25年度)、マイナス0.9%(平成26年度)、そしてマイナス0.3%(平成27年度)と改善傾向にはありますが、依然として赤字であることに変わりはありません。
その原因は、燃料価格の下落を上回る人材不足対策(人件費アップおよび傭車利用の拡大)にあると、同統計では考察しています。
 
 
 
 
経常利益率に目を向けましょう。
平成27年度における、売上高経常利益率は0.5%であり、貨物運送事業の営業利益率は0.2%とのこと。
前年度(平成26年)が、共にマイナス0.2%であったことを考えると、改善に転じていると言えます。とは言っても、1社あたりの貨物運送事業における平均経常利益は36.6万円です。
乱暴な言い方をしてしまえば、文字どおり、「吹けば飛ぶような」薄い利益であると言えます。

さて、財務省がまとめた「年次別法人企業統計調査」に目を移しましょう。
こちらも、最新版が平成27年度であり、全日本トラック協会の経営分析報告書と同年度での比較が可能です。
財務省の統計は、運送業界だけでなく、全業界を網羅しています。「運輸業・郵便業」について、ピックアップします。

◇平成27年度 運輸業・郵便業

売上高営業利益率 5.0%
売上高経常利益率 5.5%

あれ??、ずいぶん違いますね。
財務省の資料は、「運輸業・郵便業」の統計であり、全日本トラック協会の資料とは、母集団が違うことは確かなのですが。
 
さらに資料を紐解きます。

◇平成25年度から平成27年度における増加率の推移(「運輸業・郵便業」)

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儲かっている、もしくは業績が大幅に改善している印象を受けます。
実は、冒頭の「逆風の意見」を主張する方々のうち、アナリスト系の人のなかには、この財務省統計を根拠に「逆風の意見」を延べる方もいます。
なぜこのような矛盾(差異)が生じるのでしょうか?
先の財務省統計のなかに、この矛盾のヒントとなる数字があります。
 

◇資本金別の売上高利益率
  • 資本金10億円以上の企業における売上高営業利益率、売上高経常利益率は、それぞれ5.9%、7.4%。
  • 資本金1000万~1億円未満の企業における売上高営業利益率、売上高経常利益率は、それぞれ2.7%、3.1%。
  • 資本金1000万円未満の場合、売上高営業利益率、売上高経常利益率は、それぞれ1.3%、2.0%まで更に低下する。

大企業に比べて中小企業は利幅が小さい。当たり前といえばそうかもしれません。
そして、運送業界を考えるときに、忘れてはいけないことがあります。

「運送会社の49.0%は、従業員10名以下の会社。20名以下まで広げると、72.1%の会社が該当する。運送会社の98.3%は従業員が50名以下であり、対して従業員が1000名を超える会社は0.1%しかない」

トラック輸送産業は、中小零細企業の集合体である。
このことを前提に置かずして、運送業界を語ることは片手落ちです。

財務省統計では、調査対象企業の約52%が資本金1億円以上です。詳細は不明ながらも、トラック輸送産業における実際の企業割合と大きくことなる母集団を対象に調査が行われたことは、容易に推測がつきます。

日通の2016年度連結売上予想は、1兆8440億円。営業利益は570億円、経常利益は630億円。
SGホールディングスの2016年度連結売上予想は、9200億円。営業利益は500億円、経常利益は500億円。

当たり前ですが、トラック輸送産業の99%を担う中小零細企業とは、比べるべくもありません。
運送業界は、極端な数人の巨人と、その他大勢の小人たちで構成された業界です。
両者を同じ枠組みで論じることは無理です。

冒頭に取り上げたとおり、物流が一般メディアでも取りあげられる機会は、顕著に増えています。しかし、その大半は「極端な数人の巨人」を取りあげています。
「その他大勢の小人」に目を向ければ、薄氷を踏むような脆弱な業界であることが診えてきます。

再配達問題は、確かに頭の痛い問題でしょう。
しかし、運送ビジネスが本当の力強さを獲得するためには、「その他大勢の小人」が陥っている赤字体質を解消する必要があることを、もっと幅広く世間に知ってもらいたいものです。

本文中の統計

記事本文に登場する統計をまとめました。

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なお、ここからGoogleスプレッドシートにまとめたデータにもアクセス可能です。

 
 

【運送ビジネスはいつ破綻するのか!?】 シリーズ連載

 

  1. 14万人のドライバー不足!?
  2. 値下げする運送会社 ← 理解できない偉い人
  3. 路線便の行く末

 
 

参考および出典

経営分析報告書 平成27年度決算版について (全日本トラック協会)
http://www.jta.or.jp/keieikaizen/keiei/keiei_bunseki/keiei_bunseki2015.html

法人企業統計調査 (財務省)

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/index.htm

※本記事の根拠となった平成27年度の統計
https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h27.pdf

「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2016」 (全日本トラック協会)
※トラック輸送産業の事業者数構成比を参考にしました。

http://www.jta.or.jp/index_truckgaiyo.html

その他は、本文中にリンクを張っています。


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