秋元通信

官民の災害時協力協定の締結促進 「広域物資拠点開設・運営ハンドブック」

  • 2017.5.31

先月2017年4月11日、国土交通省は、「広域物資拠点開設・運営ハンドブック」を見直したことを発表しました。
「広域物資拠点開設・運営ハンドブック」の冒頭には、以下のように書かれています。
  

「東日本大震災において、支援物資の調達及び輸送等を国として初めて実施しました。その際、国土交通省として経験した課題等をとりまとめ、支援物資物流システムの構築の一環として、本ハンドブックを作成しました。
また、今般、熊本地震の教訓を踏まえ改訂しましたので、災害担当者のお手元に置いて頂き、今後の支援物資輸送業務の参考として活用頂ければ幸いです」
 

被災地支援物資物流オペレーションを「国として初めて実施」した事例が、東日本大震災というのも、驚きですが。
過去の経緯はともかく、あの悲惨な東日本大震災の教訓が、きちんと活かされ、検討されて次の対策へと昇華されたというのは、評価すべきです。
 
同ハンドブック策定の元となったアドバイザリー会議初回は、2011年9月に行われました。東日本大震災発生から半年後です。同会議において、すでに以下の意見が出ています。
  

被災者のニーズについては、平時は消費者のニーズを酌みとりながら送り届けるというプル型で行動しているが、被災時は、それが機能するかどうかは分からない。従って、「こういう場所でこういう条件で被災した場合は、こういう物資が必要として、プッシュ型で物資を輸送する」という考え方を整理する議論もあって良いのではないか。
被災者のニーズの変化はとても速いので、ある程度事前に必要となる物資を予測することも必要であるが、それでもやはり緊急支援物資の滞留は生じるであろう。そのあたりのオペレーションは自治体職員では難しいので、全体の戦略に関しては、初動段階から物流事業者の協力が必要となる。
 

そして、昨年4月に発生した熊本地震では、プッシュ型の物資支援が初めて実施されました。もちろん、熊本地震においてもすべて被災者が十分な早期支援を受けられたわけではありません。しかし、プッシュ型の物資支援は一定以上の効果を発揮したものと評価されています。
 
同ハンドブックについては、以下リンク先から読むことができます。
(ページ半ばの「広域物資拠点開設・運営ハンドブック」となります)
http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000010.html
 

  • 支援物流の概観図およびフロー
  • 支援実施者のリストアップおよび役割の確認
  • 災害発生時の初動基準
  • 支援物資の物流ハブとなる拠点のリストアップ
  • 支援物資の物流ハブとなる拠点のスペック把握の基準
  • 支援対象(被災地)となる市区町村ごとの支援対象人数と支援物資必要数の事前算出
  • 災害発生時の情報伝達手段や被災状況確認の方法
  • その他、災害発生時のオペレーション など
      

同ハンドブックには、概ねこのようなことが記載されています。
BCP対策の手順書としては、やや簡素すぎるきらいがある分、的確かつ最小限にまとめられています。惜しむらくは、同ハンドブックが義務ではないこと。義務ではないので、その運用や体制構築は、都道府県に任されており、また整備が行われたかどうかのチェック方法も明確ではありません。
また、同ハンドブックでは、運送会社、倉庫会社の協力が不可欠です。しかし、協力体制の維持に対するチェックはありません。
 
インセンティブを設定してくれたら良いのに…、と筆者は思ってしまいます。
Gマーク同様、認定制度にすることも必要だと思います。
 
見返りがなく、したがって責任もない支援は、継続が難しいです。災害支援のような、いつ起こるかわからない、細く長い体制維持が必要なものには、最低限の見返りと義務が必要ではないでしょうか。(※設備投資のための補助金等は存在します)
 
興味がある方は、ぜひ同ハンドブック、そして同ハンドブック制定の経緯を先のリンク先からご一読ください。いろいろな意味で、勉強になります。


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