秋元通信

「採用基準」という呪縛

  • 2017.6.30

あるメーカーでのエピソードです。
実業団活動も行う同社は、根っからの体育会系です。昔は大学の運動部出身のOB/OGたちが、採用活動の主力でした。しかし、さすがに近年は運動部系縁故採用も社会風潮の変化からままならず、一般企業同様、就職情報サイトなどを介した採用活動を行うようになりました。
 
ところが、どんな組織にも時代の流れを理解しない人はいるものです。
同社の某営業所長もそんなひとりでした。
 
件の営業所長の元に新入社員を配属すると、数ヶ月で辞めてしまうんだそうです。人事がヒアリングを行うと、「お前たちの採用基準が甘いんだ!」と叱責を受ける始末。では、どんな人材ならば良いのかを聞くと、「元気なやつ!」と分かるような分からないようなリクエストを受けました。
翌年、人事が一番「元気な」新入社員を配属しました。
すると、数日して件の所長から、人事にクレームが入ったそうです。
いわく、「あれは元気なんじゃなくて、バカなだけだ!! 人事は、バカと元気の区別もつかんのか!?」とご立腹です。
では、どのような新人がお望みなのでしょうか?、と聞くと、さらに怒られたそうです。
人事のくせに、会社のことが分かってないのか。
会社のことを愛していたら、必要な人材は自ずと分かるはずだろう!
 
エモーショナルな採用基準を押し付けてくる所長に、人事はほとほと困り果てたそうです。
 
 
就職情報サイトを運営するマイナビが行った、2017年新卒採用活動に関する企業へのアンケートでは、内定者に対して「質・量とも満足した採用活動ができた」と答えた企業は、31.6%しかいなかったそうです。
では、ここで言う「質」とは、何のことなんでしょうか。
マイナビが行った別の調査では、新卒正社員を採用する上で重視している社会人基礎力※のもっとも重要なポイントは、「主体性」(78.7%の企業が回答)で、以下「柔軟性」(63.3%)、「実行力」(58.6%)と続くんだとか。
社会人基礎力を除くと、一番のポイントは「志望動機(やる気)」。次は「企業文化(社風)に馴染めそう」、「企業理解」と続きます。
 
 
どうなんでしょうか?
概念としては理解できますが、それを具体的に、どのように標準化して、エントリーしてきたあまたの学生を選別するか、とても曖昧な印象を受けます。
ちなみに、マイナビの調査によれば、エントリー数に対する内定者ひとりの倍率は、92.7です。つまり、仮に10名の内定者を出す企業であれば、900名以上のエントリーから選抜を行うことになります。
採用基準の標準化ができていない企業は、そもそも「質・量とも満足した採用活動」を実現することなどできないでしょう。
 
 
話が変わります。
マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、ミスタードーナツに共通する「あること」をご存知ですか?
実は三社は、ほぼ同時期に日本一号店を出店しています。マクドナルドは1971年7月、銀座に一号店を。ケンタッキーは1970年11月に、ミスタードーナツは1971年4月に、それぞれ名古屋市、箕面市に日本一号店を出店しています。
その後のチェーン展開において、マクドナルドが圧倒的な早さとチカラを見せつけたことは、皆さまご存知のとおりです。マクドナルドの強さのひとつは、マニュアルにあると言われています。
  

「従業員全員を60点にすること」  

マクドナルドのマニュアルの強みは、この言葉に象徴されます。必ずしも高い基礎スキルのある人材を必要とせず、例えば理解力が多少劣った人でもスタッフとして活動させられるだけのマニュアルを出店早期から準備できていたのです。結果、採用基準のハードルを下げる、人材確保の上で大きなアドバンテージとなりました。
 
前号の秋元通信では、「ブラック企業が人を集められる理由」をお届けしました。
記事中で挙げた4つ理由のひとつ、「育成プロセスが優秀であり、採用基準ハードルを低く設定できるから」と、マクドナルドのマニュアルに対する考え方は一致します。(マクドナルドがブラック企業だと言っているわけではないので念のため)
 
 
採用マーケットという言葉があるとおり、採用活動も、企業側(需要)と求職者側(供給)のバランスで、成立の難易度が変動します。
これは、募集職種にも言えることです。
 
マイナビの調査によれば、営業職を希望する学生は27%。対して、営業職に配属する可能性があるとした企業は、51.8%あったそうです。この数字は応募、もしくは求人数に対する調査ではなく基準が一致しないため、一概に判断しづらいのは確かです。しかし営業職の募集において、需要と供給のバランスがアンマッチであることは、あらためて言うまでもなく指摘されています。
人が集まらない職種を募集したら、それは確かに「質・量とも満足」することは難しいでしょう。
だったらどうしますか?
一部の企業では、コンサルタントと銘打って募集していますね。内実は、営業なんですが看板のすげ替えで人が集まるのも悲しいかな、事実です。
 
 
最後にもうひとつ…
採用マーケットと言うとおり、ここにもお金の問題が関係します。
これもマイナビの調査ですが、2017年卒における採用コストは、入社予定者一人あたり46.1万円なんだとか。
当然、良い人材を確保しようとすれば、コストはもっと上がります。採用コストをケチれば、質を満足することは難しくなるでしょう。
これもよくある話ですが。
ドライバーが集まらないと嘆く運送会社に、よくよく話を聞くと、採用コストに年間数万円しか掛けていないケースが間々あります。人が集まらないのも、当然の帰結です。
 
 
採用活動は難しいです。手間もお金もかかります。
弊社でも、まさに今、ドライバーと倉庫作業員の募集をかけていますが、なかなか苦戦しております。
ただ、ちょっと興味深い結果も出ておりまして…
いずれ、その話はお届けしましょう。
 
 
 

参考および出典

※社会人基礎力とは
2006年より経済産業省が提唱しているキーワードで、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」と定義されています。
詳細は割愛しますが、人間力とか、パーソナリティに近しい意味合いと捉えて、大きな相違はないでしょう。
http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/
 
 
マイナビ 新卒採用サポネット
https://saponet.mynavi.jp/
 
企業新卒内定状況調査
https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2016/12/2017sotu_naiteijokyo12151157.pdf
 
マイナビ企業人材ニーズ調査
https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/2016needs0125.pdf
 
 
アルバイト主体でも店が回る マクドナルドの人材育成
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1307/23/news068.html


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