秋元通信

Amazon「デリバリープロバイダ」を考える

  • 2017.7.18

デリバリープロバイダをご存知ですか?
 

「デリバリープロバイダとは、Amazon.co.jpと提携している地域限定の配送業者の総称です」

これがAmazonのヘルプページに書かれた説明です。またニュースを検索すると、このような趣旨の説明が診えてきます。

「6月から開始された地域限定の配送委託事業者5社の総称」

ここ数週間、Amazonに遅配が発生しており、その原因がデリバリープロバイダにあるということで話題になっています。
 
多少の違いはあるものの、各メディアの報道内容は概ね以下のとおりです。

  • Amazonで商品の注文をしたのだが届かない。
  • 遅配が発生しているのは、デリバリープロバイダが配達を請け負った荷物である。
  • 遅配のレベルは様々だが、中には2週間以上かかっているというSNSへの書き込みもあり。
  • Amazonマイページ、もしくは担当するデリバリープロバイダの運送状況確認ページにおいて、配達状況を確認すると、「配達完了」と記載されているケースもある。

Googleトレンド(※Google検索における特定キーワードの推移を調べることが可能なツール)で、「Amazon届かない」という検索キーワードを調べてみました。
 
「Amazon届かない」という検索キーワードが、過去5年間で著しく増えた時期は三回あります。

期間1:2013年4月13日~同月20日 指数63
期間2:2017年4月13日~5月13日 指数100~93で推移
期間3:2017年7月2日~同月8日 指数93

指数とは、検索数を相対値で表す数値です。Googleは検索数の実数は明らかにしないため、指数によって検索数の増減を表現しています。指数の最高値は100なので、つまり、過去5年間でもっとも「Amazon届かない」と検索されたのは、期間2、つまり今年の4月中旬~5月初旬だったことになります。
過去5年間、上記みっつの期間を除けば、ほぼ指数は50以下で推移していることから、期間2、期間3において、今までにない遅配が発生していたことは、おそらく間違いがないのでしょう。
 
Amazonジャパン:ジャスパー・チャン社長は、先日行われたAmazon最大のバーゲンセール「プライムデー」に先んじて行われた記者会見で、遅配の発生を認めました。しかし、その件数など具体的な実態は明らかにしていません。
 
 
さて、ここで少し昔話をさせてください。
遡ること3年前の2014年7月、筆者はある経済誌から取材協力の依頼を受けました。
通販をテーマに特集を組みたいと話す記者。しかし、物流に関してはズブの素人で、筆者は通販の仕組みを基礎から解説する羽目に陥りました。
後日、記者から再度連絡が入りました。Amazonの配達を行う運送会社について教えて欲しいとの依頼です。遅配に対する不満の声がSNSに散見されるため、遅配の現実を取材したいとのことでした。
 
当時、私が記したメモを読み返すと、現在デリバリープロバイダに名を連ねている運送事業者の一部は、当時からAmazonのデリバリーを請け負っていたことがわかります。
また、それらの事業者に対するSNS上での不満内容をあらためて読み返すと、今この時点で書き込まれ続けている、デリバリープロバイダに対する不満と共通する点が多いことに気が付きます。

  • 時間指定に対する不満
    →指定した時間に配達が来ない/そもそも時間指定ができない、など。
  • 不在持ち帰りに対する不満
    →不在票がない/Webでは配達中、もしくは配達完了になっている、など。
  • 対応に対する不満
    →事務所に電話するも、誰も出ない/ドライバーの態度が悪い、など。
  • 遅配に対する不満

はっきり言えば、不満の内容を診る限り、この3年間で状況が改善が進んだとは言い難いです。
秋元通信読者の皆さまには、釈迦に説法になりますが…。ラストワンマイルのデリバリーを、営業所の人員体制も満足とは言い難い、またシステム的な統合/連結も不十分な中小零細の運送会社が担えば、このような不満は出て当然とも言えます。
 
 
ヤマト運輸とは違うのですよ、残念ながら。
これはとても悩ましいことです。
今年4月に配信した「赤字だらけの運送業界?【運送ビジネスはいつ破綻するのか!?】」でも述べたとおり、運送業界は、その98%が従業員50名以下の中小零細企業の集合体です。ところが、運送品質、とりわけ個人宅向け宅配のようなBtoCの運送品質は、ヤマト運輸のような超大手企業と同等レベルのものを求められるのです。
今号のメイン記事でも、共配における課題のひとつとして運送品質の担保を挙げました。
 
今回、ヤマト運輸 vs Amazon(と、言ってしまいましょう)の騒動の中で発生した遅配は、構造的な改善が行われない限り、また発生するでしょう。
そして、少なくとも3年前に遡る限り、構造的な改善、少なくとも十分と言えるだけの改善が行われてきたとは考えにくいです。
 
運送品質の要求は高まる一方で、それ以前に取り組まなければならない課題(人不足や収益改善など)が山積している運送業界…
Amazonに限ったことではありませんが、これはもうプレイヤーである運送業者だけで解決できる課題ではありません。そのことを、メーカーや商社など、すべての荷主となる立場の皆さんとともに、本気で考えなければならない時期が来てしまったのでしょう。

「配送パートナーと協議しながら、お客様に最高のサービスを提供できるよう努力を継続してまいります」

これは、Amazonジャパン広報担当者が、今回の遅延騒動に対して発表したコメントです。
 
協議、というのが相互理解と尊重に基づくものであることを、心から願いたいものです。
 
 

参考:検索キーワード「Amazon届かない」 過去5年間の推移 (Googleトレンド)

 

 
 

参考:「デリバリープロバイダ」に名前を連ねる5社

 

2017/7/18現在、デリバリープロバイダとして記載されている5社。補足すると地域限定でAmazonのデリバリーを担うのが、この5社であり、全国的にはAmazonの配送は他運送事業者も名を連ねている。

2017/7/18現在、デリバリープロバイダとして記載されている5社。補足すると地域限定でAmazonのデリバリーを担うのが、この5社であり、全国的にはAmazonの配送は他運送事業者も名を連ねている。


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