秋元通信

『透明性』というパートナーシップ 【共配の現場】

  • 2017.8.17

先月配信した、横浜元町ショッピングストリートにおける共同配送をレポートした「【共配の現場】横浜元町ストリート ~歴史を守る共配」は、多くの反響を頂きました。
直接ご感想を寄せていただいた秋元通信読者の方以外にも、コンサル会社からのWebアクセスが増えていましたね。
 
前回記事は、横浜元町ショッピングストリートを束ねる事務局の方にお話を伺いました。つまり、荷受側視線からのレポートと言って良いでしょう。
今回は、横浜元町ショッピングストリートの共配を行っている運送会社側からのレポートをお届けいたします。
 

荷役の様子。

荷役の様子。

お話を伺ったのは、株式会社藤木興業 三田社長です。
藤木興業は、藤木企業株式会社のグループ会社。藤木企業は、大正12年創業、港ヨコハマにて手広く堅実に物流業を営まれてきた老舗です。
 
元町の共配対象エリアは、元町1丁目から5丁目までのエリア。元町の商店街エリアだけではなく、山側に広がる住宅地域も共配の対象となっています。商店街がおおよそ650m×90mの範囲、住宅地は商店街から西方の山側に、おおよそ70mから最大200mほど伸びています。面積に換算すれば、約4万5千坪の範囲、東京ドームみっつ分より、やや広いくらいのエリアですね。
このエリアをドライ車3台、保冷車1台と軽貨物車1台の計5台で配送しています。
 
共配貨物は、同社が運営する共同配送センターに集められます。元町の入り口から、直線距離で約500mほどの場所です。

「仕分け作業はドライバーが行います。配送する順番を考えながらカゴ台車に積んでいく必要があるからです」(三田社長)
  

お店はメインストリートに面しているものの、荷物は裏通り向きの入口から搬入するように言われているケースもあります。お店が休みのときには、住居玄関に荷物を持ってくるように言われているケースもあります。お店の上階に住居を構えている方も少なからずいらっしゃるからです。
約12名いる配送スタッフは、それぞれ一丁目、二丁目…と担当分けしていますが、このような細かな軒先情報をしっかりと把握しているそうです。スタッフに対する人的依存が極めて高い配送形態と言えます。
 
 
横浜元町エリアにおける共同配送は、当初社会実験プロジェクトとして行われました。プロジェクトはいったん終了、準備期間を経て平成16年より現在に至る共同配送が始まります。しかし、その道のりは簡単ではありませんでした。
 
当初、共配の担い手として名前が挙がったのは、大手宅配事業者でした。ところが、別の大手宅配事業者が異論を唱えました。お互いに相手方のアンダーには入りたくない、というところでしょうか。状況は想像に難くありません。
結果、地元横浜に根ざし、物流ビジネスを展開している藤木グループに白羽の矢が立つこととなりました。
 
ここで、藤木興業はさまざまな課題に直面します。

  • ストックヤード(共同配送センター)を、どこに置くのか?
  • どうやって運ぶのか?仕分けはどのように行うのか?
  • エコカーゴステーション(トラックの駐車荷役スペース)を、どこに置くのか?

結局、共同配送がスタートするまで2年かかったと言います。
 
三田社長は振り返ります。

「『総論賛成、各論反対』なんですよね。当初は多くのクレームが入りました」

クレームの多くは遅配に対するものだったとのこと。遅配、と書きましたが、本来の意味での遅配ではありません。それまで各運送会社が運んでいた荷物が、いったん共同配送センターを経由するわけですから、配送が遅くなるのは致し方ないことです。しかし、そのようには思えないわけです。
  

「街からトラックをなくすことには賛成である。でも、今までと同じように荷物が届かなくなることは困る。そういうことなんでしょうけど…」(三田社長)
  

話は少し変わります。
筆者は今、共同配送を行っている事業者への取材を重ねています。共通して挙げられる課題のひとつに、ビジネスの透明性があります。
 
一例です。
共配の場合、運賃は個建ての場合がほとんどでしょう。しかし、個建ての場合、物量が多くなると車建てよりも割高になります。共配を行うある運送会社は、物量によって共配とチャーターを使い分ける荷主への対応に苦慮していると言います。
運送に限ったことではありませんが、ビジネスに波があるのは仕方のないこと。良い時があるからこそ、悪い時も辛抱ができるのです。良い時を選び、悪い時だけを押し付けるような関係は、健全なビジネスとは言えません。
 
 
横浜元町の共配において、開始当初算出された物量は、現在は維持されていないそうです。原因はいくつか考えられますが、ひとつに共同配送を介さない荷物(運送事業者)の存在が推測されます。
 
前回記事でも書きましたが、某大手宅配事業者は朝一便だけ共同配送センターに荷物を持ち込むものの、後は自社で配達/集荷を行っています。この事業者が共配以外の自社で運んでいる荷物がどれほどあるのかは分かりません。しかし、透明性の維持された関係とは言い難いことは確かでしょう。
  

「その時に応じた『共配のメンテナンス』は必要だと思うんですね。また、商店街、住民、行政や運送事業者など、関係者とのコンセンサスを取ることも大事です」(三田社長)
 

共同配送(本件に関しては、「エリア共配」)というのは、各方面から期待されています。しかし、独占禁止法などの兼ね合いから、強制力を発揮できないという事情もあり、「夢の配送形態」とはかけ離れた壁があるのも事実です。
 
 
筆者は、強制力が「発揮できない」、もしくは「し難い」からこそ、透明性のあるパートナーシップが必要だと思うのですが。
皆さまは、どうお考えになりますか?
 
 

参考:共配エリアについて

 
記事中に取り上げた配送エリア(元町1丁目~5丁目)と共同配送センターの位置関係をプロットしました。
 

 

関連リンク

【共配の現場】横浜元町ストリート ~歴史を守る共配
https://amlogs.co.jp/?p=3283
 
 


関連記事

■数値や単位を入力してください。
■変換結果
■数値や単位を入力してください。
■変換結果
  シェア・クロスバナー_300