秋元通信

路線便の行く末 【運送ビジネスはいつ破綻するのか!?】

  • 2017.9.21

「ご存知のように路線便はパッケージ化された商品です。路線便という一つのできあがった規格からはみ出したものは扱えない。そのため路線業者は『それはできません』『これはお客様のほうでやってもらわないとできません』と、ある意味で自分のエゴを打ち出した。そこに路線の限界がありました」

 
これは、今から13年前、ある路線便事業者の社長が、LOGI-BIZ2004年4月号においてインタビューに答える形で語っている言葉です。
 
今、路線便はどのような状況にあるのでしょうか?
昨年より始まった「ヤマトショック」の波に乗る形で、路線便各社は運賃の値上げと取り扱い荷物の選別(規格化)に取り組んでいます。今回、本記事を書くにあたり、荷主、物流会社など、現在路線便事業者とお付き合いのある何社かにお話を伺いました。路線便事業者の中には、値上げや荷物の選別(規格化)に従ってくれないのであれば、「取引を見直してもらって構わない」と強硬な姿勢を取る会社もあると確認しています。
 
今回は、「路線便の行く末」と題し、路線便の「今」を整理してみましょう。
 
 
国土交通省が毎月発表している、最新の「トラック輸送情報」(平成29年6月分)では、このように報告されています。
 

「(特別積合せ貨物事業者のうち)調査対象24 社の本月の輸送量は、5,597,770 トンで、前月と比べ総輸送量が約395 千トン増加したため、前月比107.6%(季節調整済み99.8%)となり、前年同月との比較では、約200 千トン増加したため、前年同月比103.7%の実績であった」

 
 
日本国内の貨物は減少傾向にあります。特にトンキロベースで考えると、トラック輸送の減少傾向はさらにはっきりとしています。その中、本統計における特積み事業者24社の貨物推移は、2015年度:6363万トン、2016年度:6547万トン、そして(現時点では)2017年度は6769万トンと堅調に増えていくことが予測されます。
 

 
ここに挙げた数字はあくまで特別積合せ事業者286社(※平成27年度現在)のうち、24社の統計であることをあらためて記しておきます。
ちなみに、特別積合せ事業者の数は、2008年:300社を頂点として、2013年には276社まで減り、以降増加に転じ、2014年:280社、2015年:286社となっています。
 
貨物推移だけを見ると、それほど悪くなさそうな路線便事業者ですが、一般貨物を扱う運送会社以上に深刻な課題を抱えています。
そう、トラックドライバー不足ですね。運送の特性ゆえに、どうしても行き先で宿泊が多い、つまり家に帰ることのできない路線便トラックドライバーは、一般貨物のトラックドライバー以上に、不人気の職業となってしまっています。
 
特に20代の若者から小さな子供を抱える30代に敬遠され、路線便事業者のトラックドライバー確保は厳しい状況に置かれていると言われています。
弊社に応募してくる現役トラックドライバーの中にも、「長距離はもう嫌だ」、「家で寝たい」という志望動機を話す方がいらっしゃいますし、弊社トラックドライバー採用サイトにおける検索エンジンからの流入キーワードを診ると、「地場配送」や「家で寝れる」といった検索キーワードが見受けられます。
気持ちは分からないでもないのですが。
 
余談ですが、同じような課題は、内航船の乗員における採用にも見受けられるんだとか。
一部の路線便事業者の中には、日帰り範囲でトラックドライバーを中継(引き継ぎ)させることで、この「長距離ドライバー=家に帰ることができない」問題に打開を図っている事例もあります。
しかし、こんなことができるのは、全国規模、少なくとも主要都市に営業所を構えている一部の事業者だけです。すべての路線便事業者ができる打開策ではありません。
 
 

「私の認識では路線事業というのは、レディメイド(※既製品。反語はオーダーメイド)の輸送サービスです。誰でも買うことができる。小さなものから大きなものまで何でも飲み込める。しかし、顧客の本当のニーズは別のところにあった。顧客は自分だけのサービスを求めていた。そこに、すれ違いがあったということだと思います」

 
前述のインタビューからの抜粋です。
インタビュワーの「路線便は採算のとれない構造不況業種になってしまっています」という問いに対する回答です。
 
インタビューが行われた2004年に遡ること3年、フットワークエクスプレスが倒産、民事再生法を申請しました。日通や西濃運輸などと並び、路線便の顔であった同社の破綻は、業界に大きな動揺を与えました。
 
動揺の冷め切らない2004年に、路線便事業者のトップから、レディメイドという言葉が発せられたのは、動揺ゆえのことだったのでしょうか?
しかし、規格外の荷物を扱うことはやはり苦しく、佐川急便、ヤマト運輸に続き、路線便事業者が次々に「大きい」、「重い」、もしくは準危険物などの扱いにくい荷物を、(それまで運んでいてくれたにも関わらず)断り始め、荷物を選別する方向に舵を切り始めたのは、皆さまご存知のとおりです。
 

「交渉…ではなかったです。『ダメなら荷物は運びません』、はっきりと言われました。ああ、うちの荷物は、もう運びたくないんだなぁ。分かりましたよ」

 
これは、この春、路線便事業者から値上げを突きつけられた某運送会社の言葉です。
 
 

「うちも、路線さんに『もう運べない』って言われたら死活問題ですから。値上げを了承したんですよ。苦しい台所事情は、うちだって分かってます。そしたら、間をおかず、次から次へと、A社、B社、C社…と値上げの要望です。談合してるんじゃないの?、そう思っちゃいますよ。少なくとも、営業レベルでの情報交換はしているんでしょうね」

 
これも、ある倉庫会社の言葉です。
 
商品の発送を、路線便に頼っているメーカーや商社にとって、路線便の値上げはもちろん、「運べません(運びません)」と断られてしまうことは、事と場合によっては事業の存続に関わる深刻な事態です。
物流企業だって同様です。今どき、全国津々浦々まで自社トラックを走らせる…なんてことのできる物流企業はごくわずかですから、路線便には多かれ少なかれ、お世話になっている物流企業も多いことでしょう。
 
 

「今お話ししている路線だとか、区域だとか、あるいは軽貨物運送であるといったような輸送業者の業態は、実は顧客にとっては何の意味も持っていない。あくまで、物流会社側の問題です」

 
三度登場、前述の2004年インタビューからの転載です。
サービスの間口を広げすぎた路線便事業者は、物流ビジネスへの追い風、もしくはトラックドライバーへの同情という世論を頼りに、強硬な生き残り策を進めようとしています。
 
どこか、違和感を感じるのは私だけでしょうか?
荷主、つまりお客様が不在になっている感覚を持ってしまうのは、私だけでしょうか?
 
路線便事業者とお付き合いのある、もしくは依存度の高い会社は、これを期に脱路線化を進めるでしょうね。荷主側は共配の取り組みを加速するでしょうし、物流企業側は路線便に頼らない運送ネットワークの構築に、より真摯に取り組むようになるでしょう。
 
 

「路線業者は『それはできません』『これはお客様のほうでやってもらわないとできません』と、ある意味で自分のエゴを打ち出した。そこに路線の限界がありました」

 
2004年に、この気づきを得たのは、素晴らしいことです。
だからこそ今度は、路線便事業者も、利用する側の企業も、次の一歩を踏み出す必要がある、踏み出さなければならない時がいよいよやって来たのではないでしょうか…
 
 

出典

 
トラック輸送情報(平成29年6月分)
http://www.mlit.go.jp/report/press/joho05_hh_000395.html
 
LOGI-BIZ 2014年4月号
特集「特積みトラック運送の50年」内インタビュー記事
「アセット型物流業の復権に賭ける」 第一貨物 武藤幸規社長 インタビュー
 
 

【運送ビジネスはいつ破綻するのか!?】 バックナンバー
  1. 14万人のドライバー不足!?
  2. 赤字だらけの運送業界?
  3. 値下げする運送会社 ← 理解できない偉い人

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