秋元通信

運送会社の採用がうまくいかない理由を考える

  • 2017.9.28

「ドライバーが集まらない!」
「なぜ、運送会社は採用ができないのか…」
「いくら募集をかけても、トラックドライバーも倉庫作業員も集まらない」

 
運送会社、倉庫会社の人不足は、大きな社会問題になりつつあります。
トラックドライバー不足は、今後の日本経済におけるボトルネックにもなりうると指摘されています。
 
ただし…
採用活動に成功している、つまりトラックドライバーを集められている運送会社は、世の中に存在します。
 
 
今回は、運送会社、倉庫会社といった、物流企業における採用活動が、なぜうまくいかないのか、もしくはうまくいっている企業は何をしているのかを考えます。
 
結論から申し上げましょう。

「採用活動に対し、手間とお金をかけている企業は、結果を出している」

当たり前といえば当たり前。ですが、これが現実です。特に大事なのは、「手間」の部分です。手間を惜しんでは、人は集められません。
そして、理想が高すぎる企業は、結局、人を集めることができません。妥協ではなく、現実を理解すること、とても大事なことです。
もうひとつ。
「これさえ行えば、採用対策はバッチリ!」という魔法の杖はありません。残念ながら、そんな夢のような話はありません。だから、あれもこれもそれも…、いろいろな対策(努力)をして、ようやく結果がついてきます。「楽して稼ぐ道はない」、当たり前の話ですね。
 
 
ある運送会社の話です。

「ドライバー募集がうまくいかないんだ」

同社から相談を受けた筆者は、詳しい話を聞くことにしました。同社では、新聞折込の求人チラシにドライバー募集の広告を出しています。しかも、毎月です。一回数万円の広告費とはいえ、もう5年以上続けているとのこと。

「4、5年前であれば、定期的に応募があったのに、ここ2年ほど、まったく応募がなくなってしまった。同じように広告を出しているのに、なぜなんだろう? トラックドライバー不足は、どの会社でも問題らしいから、しょうがないのか…」

担当者は、半ばあきらめた口調で、私にこのように語ります。
数万円とは言え、毎月出費すれば相当な金額になります。それならばいっそ、大手就職情報サイトに広告出稿したほうが良いのではないか?
筆者の問いに、担当者はこう答えました。

「それで募集がなかったら、お金の無駄ですよね」

今この時点で垂れ流している新聞折込求人チラシの費用は、無駄ではないのでしょうか?
 
 
採用マーケットという言葉があるとおり、求人には市場原理が作用します。
求職者が多ければ企業側は楽に良い人材を採用できますし、求人数が多ければ求職者にとっての売り手市場ということになります。
あなたの会社でトラックドライバー募集が低調なのは、隣の会社の求人が好調である裏返しかもしれません。そして、「隣の会社」とは、運送会社とは限りません。
 
私は、Web制作会社に在籍していたことがあり、現在も子会社アルケミートレードにおいて、Webサイト制作を行っております。Webサイト制作の仕事というのは、実は半分以上が採用Webサイトの仕事であり、従って物流企業に限らずさまざまな企業の採用担当部門とお付き合いがあります。
 

黒田電気株式会社の採用コンテンツの1ページ。弊社で制作しました。

黒田電気株式会社の採用コンテンツの1ページ。弊社で制作しました。

 
その経験から、率直に申し上げましょう。
物流企業は、もっと採用活動に本気にならないとダメです。私に採用Webサイトの相談をするような企業は、Webサイト以外にも採用に対してさまざまな投資、そして努力をしています。対して、ほとんどの物流企業が採用活動に対して費やすコストや労力は、一般企業に比べて圧倒的に足りません。

  • Web系の施策
    -会社ホームページの拡充。採用コンテンツの充実。
    -企業SNSアカウント(ページ)の運営。
  • 学校関係
    -高校や大学へのあいさつ回り
    -インターンシップの実施
  • 就職情報サイトへの広告出稿
  • 採用手法の確立
    -企業見学会や会社説明会の実施
    -内定後、ご両親を交えた懇談会や食事会の実施(※新卒の場合)
    -採用基準の標準化

これくらいは、一般企業であれば、普通にやっていることです。やった上で、「どこまで精度を上げるか」、「どうやって魅力を創り上げるか」ということを競っています。
残念ながら、物流企業でここまでやっているところは少ないです。そして逆に言えば、これをやっている物流企業は成果を上げています。
それじゃなくとも、トラックドライバー、倉庫作業員といったブルーワーカー系の仕事は、事務職、営業職、研究や製造職といったホワイトワーカー系の仕事よりも人気がありません。残念ながら、私ども物流業界は、スタート地点から負けています。
 
とても、とっても言いにくいんですけど…、「努力が足りない」ということです。
 
冒頭の、お悩み担当者の例では、結局、件の担当者は何もしていません。ある施策(この場合は折込求人チラシ)で効果が出なくなってきたのであれば、他の方法を模索しなくてはなりません。
 
就職情報サイトにせよ、折込求人チラシにせよ、もはや「これだけやっていれば採用はバッチリ!」という方法は残念ながらありません。あったとすれば、それはたまたま運が良かっただけで、普遍的な方法ではありません。これは断言できます。
 
6月にお届けした「採用基準という呪縛」でもご紹介したとおり、就職情報サイト:マイナビを利用している企業が、大卒ひとりの新卒採用にかけるコストは、46.1万円とされています。だとすれば、一般企業よりも人気がない(とあえて書きます)物流企業は、平均:46.1万円よりも多くのコストをかけないと、採用マーケットでは勝ち抜けないことになります。

「そうか、最低でも46万円かけないと、人は集まらないんだ…。そんなコストはかけられないよ…」

その気持はわかります。しかし実はここまで私が述べてきた理屈には、ある矛盾があります。
 
『隣の会社とは、運送会社とは限りません』
 
このように述べましたが、物流企業以外、就職先(転職先)として眼中にない人は、当然います。そのような方に対して、「うちの会社においで!」と呼び水をするのであれば、物流企業の中で目立つ存在になればいいのです。
そして、そのレベルであれば、あなたの努力で、ある程度結果が見込める施策があります。
 
ひとつは、無料で採用広告を出すことのできる「Indeed」や「engage」といったサービスを利用すること。東京都トラック協会に所属する運送会社であれば、同協会が運用する共同採用サイト「RUN TALK 109 TOKYO」に対し、無料で募集広告を出稿することができます。
各地のハローワークでは、無料で参加可能な合同企業説明会を定期的に実施しています。
高校や大学等へのあいさつまわりは、継続的な関係を構築するうえでもオススメです。
会社のWebサイトを、WordpressやJimdo、WixといったCMSツールでWebサイトを作れば、ホームページ制作会社にキャッシュアウトすることなく、あなたの会社のホームページに、あなた自身が採用情報を掲載することができるようになります。
 
もちろん、これらの方法は、どれも言うほど簡単ではありません。今私がもっともオススメするのはIndeedへの掲載ですが、こういうことに慣れていない方にとっては、頭を掻きむしりたくなるほど面倒で複雑に思えることでしょう。「RUN TALK 109 TOKYO」への出稿は…、ぶっちゃけ私も疲れました。
 
採用には、最低限の投資は行わないと効果が出ません。ただし、その投資金額を少なくする方法はあります。さらに言えば、物流業界の場合、まわりの物流企業の採用にかける努力が十分とはいえないため、出し抜くのは可能です。
 
なお、「理想が高すぎる企業は、結局、人を集めることができません」については、今回一切触れませんでした。本テーマは、また別の機会に考えましょう。
 
その努力に踏み出すか、踏み出さないかは、あなた次第。
手間はかかりますけど、その手間は、広い意味で貴社の財産に必ずつながります。
 
お互い、頑張りましょう!
 
 
 

参考

筆者が物流ウィークリーさんに取材を受けた記事をご紹介します。
 
「勝負はトップページ最上段 -秋元運輸倉庫 採用HPの魅せ方」
物流ウィークリー記事_2018年8月28日


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