秋元通信

「質問」する技術

  • 2018.7.31

私は仕事柄、さまざまなひととお会いさせていただく機会に恵まれています。
中には、とても気持ちよくお話をさせてくれる方がいらっしゃいます。
 
そういう方には、概ね以下のような共通点があります。

  • 社長や経営層など、社会的にも高い地位にある人が多い。
  • 相づちが上手い。
  • ひとに会うことを嫌がらない。むしろ、好んでいろいろなひとと会おうとする。
  • こちらが質問をすると、時として「それは良い質問だね」と褒めてくれる。
  • 知らず知らずのうちに、その方に対し、好感を持っている自分に気がつく。

言ってしまえば、いわゆる「ひとたらし」という方々なんでしょう。
基本的に、ひとの本質は「話したがり」です。話すことに対し、得意なひと、苦手なひとはいます。しかし、他人の話を聞くよりも、自分の話を聞いてもらいたいと思うのが、ひとの本質ではないでしょうか。
 
「ひとたらし」の方々は、その本質を理解し、質問を行うことで相手を理解すると同時に、相手に好印象を与え、自分自身のことも相手にしっかりと印象づけます。
 
今回は、円滑なコミュニケーションを行うことを目的として、質問をする技術を考えます。
 
 
質問は、大きく大別すると二種類に分類できます。
ひとつは、Yes/Noのような、選択肢を選ばせる質問。
もうひとつは、Whatのような、自らの言葉を紡ぐことで回答する必要のある質問です。
前者を「クローズド・クエスチョン」、後者を「オープン・クエスチョン」と呼びます。
 
初対面の方に対して、円滑なコミュニケーションを望む時は、クローズド・クエスチョンから入ると良いでしょう。
「今日は暑いですね」や、「ご家族はお元気ですか」のような、当たり障りのない質問は、導入に用いるクローズド・クエスチョンの典型と言えます。
 
例えば、営業目的でお客様先を訪問したケースを考えましょう。

「どんなご用件でお呼びいただいたのでしょうか?」

いきなり、オープン・クエスチョンになっています。

「何か私どもでお役に立てることがあるのでしょうか?」

このように言い換えると、クローズド・クエスチョンになります。
私は親しいお客様に対しては、時々このような言い方をします。

「お仕事いただけるんですか?、ありがとうございます!」

実はこれ、クローズド・クエスチョンに確認話法を組み合わせた高等テクニック(…笑)なんですが、難しいことはさておき、相手との距離を詰め、コミュニケーションを親密に演出する効果があります。
 
次いで、オープン・クエスチョンに移行するのですが、いきなり核心に迫るような質問ではなく、答えやすい質問から始めるべきです。
「あなたの会社の事業内容を教えてください」といった、答えがある程度決まっていて、しかも答え慣れているであろう質問から入るのが良いでしょう。
答えやすい質問から入り、徐々に即答しにくい質問(考えないと答えられない質問)へと移行するわけです。
 
 
話が変わります。
「カウンセリング」、もしくは「カウンセラー」と聞いて、皆さまはどういうことを思い浮かべますか?

「カウンセリング(英: counseling)とは、依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助のことである。(中略)

アドバイスとは異なり、カウンセラーがクライエントに対して明確な解決策を直ちに提示することは原則的にない。これは、カウンセリングという場においてクライエントが自らに向き合い、その作業を通じて新しい理解や洞察に自発的にたどり着き、最終的にカウンセリングが終結した後には、カウンセリングにおける経験を生かしてクライエントが実生活の問題や悩みに主体的に相対して行けるように導くことが、カウンセリングの目的であると同時にカウンセラーの役目であるためであり、心理カウンセリングの際は大切にされる原則である」
Wikipediaより)

勘違いする営業とかコンサルタントが、よくいるのですが。
大切なものは、あなたの持つノウハウや製品、サービスにあるのではなく、お客様の中にこそあります。
優れた質問を行う行為は、自ずとカウンセリングに近づいていくのです。
 
 
クローズド・クエスチョンからオープン・クエスチョンに移行し、質問を繰り返すことで、相手への理解は深まっていきます。
質問項目は、行き当たりばったり、その場で発想するのではなく、あらかじめ用意しておくほうが望ましいでしょう。
ただし、相手の課題や求めるものが、どんな感情を背景として発しているのかによって、オープン・クエスチョンの尋ね方は変わってきます。
 
 
例えば、「トラックドライバーのことで、悩んでいるんだよね…」とぼやく運送会社社長がいたとします。

  1. ドライバーの定着率を上げたい(退職率を下げたい)
  2. ドライバーの採用ができない(ドライバーを増やしたい)
  3. ドライバーが少ないことで、お客様からの仕事に応えられないケースを減らしたい(お客様からの信頼を失うことが怖い)

どの悩みも、ドライバーの増員で解決できるように、一見思えます。
しかし、ぼやきの本質を探らずに、次のステップに進むことは良くありません。
 
 
ひとの行動は、主に以下に分類されます。

  • 「欲求」(こうしたい/こうなりたい)
  • 「必要」(こうしなければならない)
  • 「回避」(自己防衛、リスクや危険からの脱出など)

他にも、「模倣」、「習性・習慣」などもあるのですが、ここでは議論から除外しましょう。
 
先の例で言えば、1.が「必要の要素が高い欲求」、2.が「欲求」、3.が「必要の要素が高い回避」となります。
「トラックドライバーのことで、悩んでいるんだよね…」と言う社長の本質が、3.「回避」であるのに、「ドライバーをガンガン採用できる体制をつくれば良いんですよね!?」という、1.「欲求」に基づいた質問をしてしまうと信頼関係が損なわれる危険性があります。もしかすると社長は、「トラックドライバーの増員は難しいから、お客様の依頼にもっと答えられるような配車の効率化ができないものか?」(回避に近い欲求)と考えている可能性もありますから。
 
相手に質問を行いながら、求める相手の課題が、「欲求」、「必要」、「回避」のどこに分類されるか考えつつ、質問していく方向性を探る必要があります。
 
自分のことを理解してくれる相手って、心地よいですよね。
先に挙げた「ひとたらし」の方々とは、「私はあなたを理解しようとしていますよ」ってことを、質問というツールを上手く利用し、演出してくれる方々ではないでしょうか。
 
 
先日、とあるシステムの説明を受けたときのことです。
担当した営業は、システムのことを一生懸命説明します。そして最後に、こう言ったのです。

「どうですか? うちのシステムはお役に立てそうですか?」

そのシステムが、私のニーズにマッチするのかどうかの判断を、私に委ねてきたことになります。これはお粗末ですね。
 
 
昔、ある家電量販チェーンの社長に言われたことがあります。

「お客様が買う商品を決めるのではない。私どもがお客様が買う商品を決めるのだ」

ただし、この言葉を誤解し、お客様に「これを買いなさい!」と言ってしまうと、単なる押し売りでしかありませんから。
お客様自身に、「これが欲しい!」と気づかせることが必要で、そのためには説明するだけでなく、質問をすることで、お客様の中にある「欲しい!」に自ら気がついてもらうことが必要です。
 
 

「愛されるよりも 愛したい真剣(マジ)で」
(「愛されるよりも 愛したい」 KinKi Kids)

こんな歌詞がありましたけど、でもまあ、愛されたいですよね(我ながら言っていて恥ずかしい…)。
 
 
繰り返しになりますが、ひとは自分を理解しようとする相手に対し、好意を抱きます。
その点で、質問の技術を向上させることは、コミュニケーションを円滑にさせる効果があるのでしょう。
 
質問の技術は、仕事においても、プライベートにおいても、きっとあなたの世界を豊かにしてくれます。
ぜひ、実践してはいかがでしょうか。


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