秋元通信

仕事を断るヒトの心理

  • 2015.9.30

「今さら何を言っているんだ君は!!」

これは、筆者が飛び込み営業をしている時、ある物流センターで浴びた罵声です。
飛び込み営業をしていれば、冷たいあしらいをされることには慣れています。しかしながら、初めて訪れた物流センターにおいて、「今さら….」というのはさすがに私も驚きました。

今回は、身勝手な判断で仕事を断ってしまう人の心理について考えてみましょう。

当時、ある運送会社にいた筆者は、運送案件を求めて物流企業に飛び込み営業をしていました。飛び込みをしていた地域は、自社便の配達先がある地域。帰り荷が取ることができれば万々歳、午後便でも引取翌日配送でもOK。何かネタがないものかと案件を探していた時のことでした。

「仕事が欲しい?? ふざけたこと言ってるんじゃないぞ! 私が相談している話はどうなったんだ!?」

事の次第は、こうでした。
怒っている方は、物流センター長。
実は、件のセンターには筆者の会社の自社便が週に何度か配達に訪れていたそうです。トラックは混載便を扱っていて、センター長がドライバーに聞いたところ、センター長がクルマを探していた荷物の発地も、具合良く引き取り可能な場所でした。

「こういう荷物があるからさ、うちに来るときに、ついでに積んできてよ」
センター長が、ドライバーにそう言ったところ、ドライバーはこのように答えたそうです。
「会社に相談しますが、たぶん喜んで引き受けると思いますよ」

それから数日が経ち、数週間が経ち、すでに数ヶ月が経ちました。
ドライバーに返事を催促するも、煮え切らぬ返事ばかりで進捗がありません。
そういった状況で、筆者が満面の笑みを浮かべ、「何か仕事ありませんか?」と突然訪問してきたわけですから、センター長の逆鱗に触れたのも、致し方なかったのでしょう。

件の物流センターは、本来の配達先ではありませんでした。近隣にある系列の物流センターが本来の配達先であり、そこに配送をするついでに、サービスとして二箇所卸をしていたわけです。そういった事情で、筆者もお付き合いがあることを知りませんでした。
ドライバー当人に話を聞いたところ、配車マンにはすでに相談をしていたとのこと。配車マンは、ヒアリングのために件の物流センターまで出かけるのが面倒だったということで放置。また、ドライバー当人も、その案件に気乗りがしなかった(受ければ運ぶのは当人ですから)から、配車マンへの催促も行わなかったというのが顛末でした。

激怒する物流センター長からすれば、サービスでいつも二箇所卸をしてくれている運送会社への恩返しも兼ね、ちょうど良い案件だと思ったのでしょう。それが放置されるにつれ、「恩を仇で返しやがって!!」という怒りに変わっていったのは、想像に難くありません。

筆者は怒りをぶつけられるだけぶつけられ、案件を獲得することはできませんでした…
別の話です。
そのシステム制作会社は、もともと大手システムベンダーの子会社でした。
連結対象から外れ独立して以降、業績は低迷。200名以上いた社員は、1/4にまでリストラされました。
ところが、そういう危機的な状況にもかかわらず、営業が苦心して取ってきた仕事を、制作部門長は断り続けていたそうです。
1円でも売り上げが欲しいであろう状況において、なぜこの制作部門長は、仕事を断り続けていたのでしょう?

「人員が減らされ、それでなくとも一人あたりの仕事負担は増えている。その状況下で、さらに仕事を増やそうと言うのか!?
まして皆、仲間がリストラされ、強いストレスも感じている。
新しい仕事など引き受けて、これ以上、制作スタッフにストレスが溜まったら、もう制作部門自体が崩壊してしまう!!」
「嫌われ恐怖症」という言葉をご存知でしょうか。
名前のとおり、人から嫌われることを脅迫的に恐れる心理であり、対人恐怖症の一種。重篤化すれば、社交不安障害などの精神疾患にもなりかねないと言われています。以前は、学校や職場などの限られた環境に起因するものでしたが、現在ではSNSなどのコミュニケーションツールの発展により、「嫌われ恐怖症」に陥ってしまう人が増えているとも言われています。

先の制作部門長は、間違いなく「嫌われ恐怖症」だったのでしょう。
会社の変化により、ご自身もストレスを感じていたことから、部下に嫌われることを恐れ、正常な判断もつかなくなっていたものと考えられます。

「だって、僕が断ったら、他のドライバーに負担がかかるんですよ!」
これは、冒頭のエピソードに登場したドライバーの言葉。
「案件に気乗りがしなかった」と答えたドライバーに、筆者が「だったら他のドライバーにやらせるから。君が気にすることじゃないよ」と言ったところ、発した言葉です。

仕事を断ることそのものは、正常なビジネス判断に基づくものであれば、あり得る選択肢です。
しかし、ここに挙げた例は、「えっ、そんなことで!?」という、第三者が俯瞰的にみれば驚くような例です。よくある話かもしれませんが。

このようなケースの場合、往々にして「仲間(※多くの場合は社内)から嫌われたくない」という心理が働いているように思えます。

お客様よりも、社内の反応を重視する。
会社のミッションに反しても、同僚/部下には嫌われたくない。

「出来ない理由を探すよりも、出来る方法を探そう」
出来ない理由のほとんどは、自らの側にあります。しかしながら、「仲間に嫌われたくない」というのは、出来ない理由にすらなり得ないでしょう。

同僚に嫌われるよりも、本当はお客様に嫌われるほうが、よほど恐ろしいのですが。
仕事を断ることの怖さは、お客様と本気で接していないと理解し難いのかもしれません。

 


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