物の本によると、女性を口説くことに長けた男性は、女性に「言い訳を与えること」が上手いんだそうです。
「『なんとかかんとか』だから、ついあの人に口説かれてしまったの…」
で、その『なんとかかんとか』の部分は、終電がなくなっただの、美味しい料理をごちそうになっただの、つまり与えられた言い訳ですね。
さて、企業Webサイトにおける採用コンテンツも、基本は同じ。つまり、学生に対して、その企業に応募するための言い訳を与えることが、とても大切なんです。
今回は、来春2017年3月卒業予定大学生たちのアンケート調査を紐解きながら、企業の採用Webサイトについて考えます。
アンケート調査は、就職情報サイト:マイナビが提供している調査を参考にしました。
マイナビではさまざまなアンケート調査を公開しており、筆者もよく参考にしています。
「楽」。
なんのことだと思いますか? これは、就職活動中(もしくは終えた)大学生たちに、「あなたの就職活動を漢字一文字で表すと?」というアンケートを行った結果、一位になった漢字です。
今年8月末時点で行われたアンケートでは、内々定を獲得した学生の割合は、77.5%! やはり売り手市場だった昨年と比べても、8.4%のアップだそうです。
やはり、「楽」だったんでしょうね、今年の就職活動は…
ちなみに、同アンケートでは、2位が「苦」、3位は「疲」、4位以下は、「耐」、「忙」、「迷」と続きます。
内々定を既に獲得し、就職活動を終了した学生たちにアンケートを取ったところ、約85%の学生が就職活動に満足していると答えています。自分が志望した企業に決まった学生が多いのでしょう。
さて、ここからが本題です。
入社予定企業を選んだポイントは、なんだと思いますか。
No.1 企業経営が安定している
No.2 福利厚生制度が充実している
No.3 社員の人間関係が良い
No.4 希望する勤務地で働ける
No.5 自分が成長できる環境がある
さらに続けます。
以下は、入社予定企業を選択した際に判断材料となった情報ランキングです。
No.1 待遇(給与・福利厚生等)に関する情報
No.2 具体的な業務内容(入社一年目の業務内容など)
No.3 企業の社風・企業文化についての情報
No.4 勤務地に関する情報
No.5 ワークライフバランスに関する情報
安定志向という言葉がありますが、このアンケート結果を診ると、「安心」志向の方がしっくりとくるように感じます。
親を安心させられるか、友達を安心させられるか、そして自分自身を安心させられるか…
まさに、思考のベクトルが「言い訳」だと思いませんか?
筆者は、前職においても、現職(アルケミートレードのITコンサルタントとして)においても、企業Webサイトにおける採用コンテンツの制作に携わってきました。今春も、黒田電気株式会社様の採用コンテンツを制作しています。
筆者が、採用コンテンツを創るうえで、必ず重要視しているポイントがあります。
「以下の点について、採用コンテンツに訪問した学生が、学生自身の言葉で説明できるような情報を与えること。また、その説明は140文字以内で説明可能な簡潔なものであること」
A.その企業は、どのような企業なのか。
B.なぜ、その企業に決めたのか。
説明できるというのは、納得できるということです。説明できないことに、人は納得することは困難です。また、学生は就職活動を行う上で、様々な人から「説明」することを求められます。例えば、友人。例えば、親。もちろん、面接に進めば企業からも志望動機やらなんやらと、説明することを求められます。
言い換えれば、学生は「なぜその企業に口説かれたのか?」という言い訳を求めている、というわけです。
マイナビのアンケートに戻りましょう。
「就職情報サイトや企業HPに載っている『先輩情報』は役に立ったか」というアンケートに対しては、約73%の学生が、「役に立った」と答えています。
では、「先輩情報」コンテンツにおけるどんな情報が役に立ったのでしょう。
No.1 日常の具体的な業務内容
No.2 この企業の選んだ理由(入社のきっかけ)
No.3 仕事のやりがい
No.4 職場環境(教育体制、福利厚生)
No.5 就職前に持っていた仕事へのイメージとギャップ
余談なのですが、「先輩情報」(「先輩の声」などの既存社員へのインタビューコンテンツ)において、社長への崇拝コメントを作りたがる企業があるんですが、あれはダメです。ドン引き…、というやつですね。
「男気があって、頼りになる社長です」
「顔は怖いですけど、ホントは優しいんですよ」
僕も(嫌々)作ったことがあるんですけど、Webページへのアクセスも低いですし、応募も増えません。もっとも、こういう発想に至る社長さんは、たいてい「止めたほうが良いです」というアドバイスは聞いていただけないのですが。
では、物流企業における採用コンテンツ創りは、何に気をつければ良いのでしょうか。
マイナビのアンケートでは、業界イメージ調査が行われています。ここに、良いヒントがありました。
◇「陸運・海運・物流」業界のプラスイメージ(抜粋)
社会全体への影響力 全40産業中、4位
安定性 全40産業中、6位
社会貢献・環境への取り組み 全40産業中、7位
グローバル 全40産業中、7位
明るさ・楽しさ 全40産業中、38位
人材の質 全40産業中、40位(最下位)
「人材の質」が全産業中最下位って、悲しいのを通り越して情けなくなります。
◇「陸運・海運・物流」業界のマイナスイメージ(抜粋)
変革性 全40産業中、6位
技術力・商品企画力 全40産業中、6位
女性の活躍 全40産業中、6位
「物流業界は、社会への影響も強い安定した業界である。社会貢献や環境への取り組みも進んでいる。
だけど、明るく楽しい業界ってイメージは乏しくて、働いている人たちの質も、あまり良くないのかな…
技術や商品を開発したり企画する業界ではないし、変革も行ってきていない。ましてや女性が活躍できる業界ではないんじゃないかな」
まとめると、大学生たちの物流業界へのイメージって、こんな感じなんでしょう。
良いところは強調し、悪いところは否定、もしくは反論しておく。
それが、企業における採用コンテンツにおいて大切なポイントのひとつです。何を強調し、何を反論(否定)するかについては、前述のとおりです。
一例ですが、弊社Webサイトにおいては、安定性をアピールするために、「秋元運輸の歩み」という創業100年をアピールするコンテンツを用意しています。
言葉にできる、ということは強みです。
だからこそ、言い訳という言葉を用意してあげることで、企業の採用力を上げることができるのです。
ちなみに、冒頭の「女性を口説くことに長けた男性は…」のくだりは、しつこいようですが他から仕入れた知識ですからね!
筆者に、もうちょっと女性を口説く能力があれば、きっと楽しい経験が得られた気もするのですが。人生、なかなかままならないものです(笑
「2017年卒 マイナビ大学生業界イメージ調査」のまとめ(Googleスプレッドシート)