筆者がシステム屋に転職して間もない頃です。
社長が営業ミーティングの場において、こんな発言をしたことがありました。
「営業の君たちは、もっと自信を持って欲しい。君たちが案件を取ってこないと、会社の売上は上がらないんだから。制作部門に二回三回断られたくらいでめげないでくれ!」
自信を持て?
制作部門に断られる??
私には意味不明でした。自信を持たずに、少なくとも「自信があるように装う」ことなく、どうやって営業ができるの?
また、同じ社内である制作部門が案件を断ってくるって、それ、どういうこと?
「営業部門が絶対正義」、そんな営業会社から転職した私には、意味不明であり、モチベーションが下がった瞬間でした。
そして社長が指摘した社内の壁に、私はすぐに直面することになります。
私が初めて獲得したWebシステム開発案件について、制作部門が「できない」と言ってきました。
なぜやらないのか?、詰め寄る私に制作部門長は「やらないのではない、できないのだ」と言います。私にとっては、そしてお客様にとっては同じことです。
さらに詰め寄る私に、制作部門長は、このように言いました。
「新人が生意気言うんじゃない。君の分の仕事が増えたんだから、制作がオーバーフローするのは当たり前だろう!」
結局、私は外注を使い、自らがディレクターを務めることでシステム開発を終えました。
すると、制作部門長はこんなことを言い始めました。
「そういうことをするな!制作部門の志気が下がる」
「営業を潰すのは誰なのか?」
日本企業にありがちな社内調整も取り上げつつ、営業の育成について考えてみましょう。
「営業担当者の約2人に1人が『営業活動において社内調整がうまくいっていないと感じている』」
あるアンケート調査の結果です。
同アンケートでは、ふたつの質問をしています。
A.「営業活動における社内調整はうまくいっていますか?」
B.「商談規模が大きい営業活動においてあなたが課題だと思うことは何ですか?」
A.の結果は、「そう思う」:8%、「どちらかというとそう思う」:47%。一方、「どちらかというとそう思わない」:39%、「そう思わない」:6%であり、45%が社内調整に問題があると考えています。
B.については、どうでしょうか。
上位回答は以下の順番になっています。(複数選択方式のアンケート結果です)
- 自社内における意見調整や合意形成 43%
- 顧客課題把握 34%
- アカウントプラン(攻略戦略)づくり 34%
お客様よりも社内のほうに営業活動における課題は大きいと感じている人が多いわけです。1.はもちろん、3.のアカウントプランにしても社内調整の要素は含まれますから…
先のエピソードでは、私は社内調整を諦め、自ら外注を探し、制作を指揮することで案件を成立させました。しかし、これは実はとても危険な選択であったと、今になれば分かります。
2015年にお届けした秋元通信「営業が育たない理由」では、以下のように書きました。
営業を育てられない会社には、いくつか特徴があります。
- ど根性的な上司がいて、部下を潰してしまう。
- 商材の市場性などの理由で、そもそも営業が難しい。
- 業務全体の中で、事務処理や雑用の割合がとても多く、営業をしている隙がない。
他にも特徴はいくつもありますが、物流企業の場合、「営業にいくらチカラを費やしても、案件を売上化するチカラが会社にない」というケースが多々見受けられます。
例えば、以下の様なケースですね。
- 「運送案件を見つけ、求車情報をつかんできても、それをこなす余力、クルマの空きが会社にない」
- 「保管案件、空き倉庫を求める未来のお客様候補を見つけてきても、倉庫は既に満杯である」
苦労して案件を見つけてきても、それが売上につながらない。
これでは、営業は潰れてしまいます。
営業のミッションは売上を上げることです。
営業自ら制作を指揮することは、売上を確定することにはつながっても、売上を増やすことにはなりません。一般論ではありますが、営業の仕事は受注を獲得したらそれで終了、売上を確定する作業は他部門に託し、新たな売上を見つけること、つまり次の営業活動に移らなければいけません。
営業が自ら制作していたら、営業活動が疎かになってしまいます。
そして、このジレンマに陥る営業は、けっこう多いのです。
「◯◯君は、お客様からのウケはいいんだけどさぁ、営業成績は今ひとつパッとしないんだよなぁ…」
そりゃそうです。
営業自ら制作していたら、お客様の信頼は得られます。
しかし、営業活動に割くべき時間を浪費(とあえて言いましょう)していたら、営業成績が上がるわけがありません。
さて、ここまではシステム開発の話でしたが、これを物流企業に当てはめたらどうでしょうか?
「制作」を「倉庫作業」、もしくは「運送(運転)」に置き換えたら?
営業の名刺を持ちつつ、配送、つまりトラックドライバーも行うという運送会社社員をお見受けします。
営業の名刺を持ちつつ、倉庫作業も行い、フォークリフトにも乗るという倉庫会社社員をお見受けします。
あえて厳しい言い方をしましょう。このような働き方は、会社にとっても、営業本人にとっても、とどのつまり言い訳でしかありません。営業職と呼びつつ、人手不足の物流屋において、都合の良い雑用係として使っている企業のなんと多いことか…
話が脇道にそれてしまいました。脇道ついでに、もうひとつ昔話をしましょう。
私が秋元運輸倉庫に来てしばらく後、当時取締役であった鈴木清とともに、集中的に新規開拓を行おうとしたことがありました。新規開拓と言ったところで、狭い業界内のことですからお互いに名前は知っています。多くの会社に歓待していただき、そしてお土産として案件をご紹介いただきました。
しかし…
実は当時、お土産としてご紹介いただいた案件を、ひとつも売上につなげることができなかったのです。
例えば、以下の様なケースですね。
- 「運送案件を見つけ、求車情報をつかんできても、それをこなす余力、クルマの空きが会社にない」
- 「保管案件、空き倉庫を求める未来のお客様候補を見つけてきても、倉庫は既に満杯である」
苦労して案件を見つけてきても、それが売上につながらない。
これでは、営業は潰れてしまいます。※秋元通信「営業が育たない理由」から
まさにこのケース。社内調整に失敗したわけです。
メルマガ秋元通信は、この失敗をきっかけに始まりました。
営業を育てるのが先か、それとも社内の体制を整えるのが先か?
悩ましい話ですが、会社としては同時並行で進める必要があります。そこで、秋元運輸倉庫の名前を覚えておいてもらうために、メルマガを開始したわけです。
営業というのは、多かれ少なかれストレスにさらされる仕事です。
ところが、物流企業はもちろん、システム開発会社など、売上部門(※売上を確定させる部門/作業や制作を行う部門)が企業活動の中心にあり、営業活動の経験値が少ない会社では、営業活動もしくは営業その人に対し、あからさまに非協力的な人がいます。
それでは、営業は育ちません。潰れてしまいますよ…
営業が潰れる原因はいくつもあります。
しかし、社内調整が原因となるような事態は避けたいものです。
営業活動においての一番の課題は顧客との関係構築ではなく、社内調整だった!【営業活動に関する意識調査】
(株式会社アルヴァスデザイン)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000015496.html