秋元通信

「拡散希望」という落とし穴

  • 2018.9.13

特に西日本において多大な被害をもたらした台風21号、そして北海道胆振東部地震は、被災の有無によらず、多くのひとに動揺をもたらしました。
そのためでしょう、SNS上には多くの「拡散希望」が流れました。
 
今回は災害発生時に必ず登場する「拡散希望」、つまりシェアされることを要求する投稿について考えましょう。
 
 
今回の北海道胆振東部地震では、以下のようなデマがSNSで拡散しています。
 

  • 札幌全域で「6時間後に断水する」というデマ
  • 地鳴りが聞こえたので、○月○日 ○時○分に大きな地震が再び発生するというデマ

このような状況で、このような投稿を読めば、多くのひとが心を揺さぶられることと思います。当然のことです。
 
災害時には悪意のデマを流布しようとする輩が出てきます。
また最近では、悪意に端を発したわけではないものの、「余計なおせっかい」投稿によって現場に混乱をきたすケースも発生しています。
 
 
例を挙げましょう。
 

『【拡散希望】○○市○○避難所では、飲み水が足りていません。なのに他の避難所では飲み水が余っています。市の担当者にクレームを入れたのに対応してくれません。とても困っています』
 
『【拡散希望】今回の台風で大きな被害の出た**市にて、毛布が不足しているそうです。
余った毛布があったら、ぜひ送りましょう!』

 
 
「拡散希望」の文字に心を揺さぶられたあなたは、心優しい方です。
しかし、シェアボタンを押す前にまず確認して欲しいことがあります。その投稿に書かれた内容は、本当に真実なのでしょうか?
 
例えば、避難所のケース。
もしかしたら、飲み水は現地に輸送されている途中かもしれません。そもそも、それでなくとも混乱している被災地です。投稿を見た善意(…?)の誰かが担当者にクレームをいれたら、さらに現場は混乱するでしょう。
 
例えば、毛布のケース。
仮にあなたが宅配便で毛布を送っても、災害によって配達遅延が生じている地域ですから、毛布が被災地に届くまでには時間がかかるはずです。
もしかしたら、あなたの毛布が届いた頃には、現地は別口で行政が手配した毛布が用意されているかも知れません。
 
別の見方です。
「飲み水が足りない」とか「毛布が足りない」とは、誰が判断したんでしょうか?
また、その判断は正しいのでしょうか?
ちょっとした避難所運営の不手際を、ことさら大きく誇張している可能性だってありますよ?
 

  1. その「拡散希望」の内容が、論理的に考えて妥当なものか、冷静にジャッジすること。
  2. その「拡散希望」の内容が、道徳や倫理に反するものであれば、絶対にシェアしないこと。
  3. どんな理由であっても、被災した当事者(個人だけでなく、役所も含める)を非難し混乱に導くようなシェアはしないこと。
  4. その出来事の当事者が発信した情報以外をシェアすることは、原則としてNG。
  5. どうしてもケース1.のシェアを行う場合は、内容の裏付けを取ること。

 
上記4.と5.について、補足します。
4.については、いわゆる「善意のおせっかい」に加担しないための原則です。
5.については、それでもその投稿をシェアし拡散したいと思うのであれば、あなたがその投稿内容に責任を持つべきだからです。
 
災害発生時にあなたのタイムラインに流れた「拡散希望」に対し、あなたは心を揺さぶられたのでしょう。シェアボタンを押し、拡散に加担したいと思うのはあなたの善意のあらわれです。
 
しかし、善意というのは本来そんなに軽いものではありません。
Facebookのシェアボタン、Twitterのリツイートボタンひとつで表現できるようなものではなく、責任と勇気を伴った行為のはずです。
 
あなたが「善意の加害者」にならないよう、あなたの善意が誰かを苦しめることがないように、「拡散希望」には十分な注意を払いましょう。

以前お届けした、『デマに騙される人の心理』もあわせて、賢いSNSとの付き合い方の一助として本記事がお役に立てれば幸いです。


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