秋元通信

オープン間近! 豊洲市場と環状2号線見学レポート

  • 2018.9.27
豊洲市場水産卸売場棟のマグロ競り場の様子。開場に向けて準備が進めらてています。

豊洲市場 水産卸売場棟のマグロ競り場。
開場に向けて、着々と準備が進められています。

 
 
いろいろとすったもんだありましたが、ようやく2018年10月11日に開場を迎える豊洲市場。
開場直前の見学会に参加しましたのでレポートをお届けします。あわせて、豊洲市場開場の一ヶ月後に開通予定の環状2号線の見学会レポートもお届けしましょう!

※以降の画像はすべてクリックで拡大します。 
 

東京の魚市場、その歴史を振り返る

 
以前お届けした、『家康のお墨付き!? 芝雑魚場の記憶』でも取り上げたとおり、江戸の街には複数の魚市場がありました。
 
江戸の街において、もっとも栄えた魚市場は『魚河岸』です。日本橋川の北岸、現在も残る日本橋と江戸橋の間にあった魚河岸は、江戸の街とともに繁栄を遂げ、明治、大正になっても庶民の食卓に新鮮な魚を提供し続けました。しかし、1923年(大正12年)に発生した関東大震災によって、壊滅的な被害を受けます。
東京の都市改造計画に伴い、魚河岸は1935年(昭和10年)に開場した築地市場にその役目を譲ることになります。
そして、今回築地市場誕生から80年が過ぎ、豊洲市場への移転が決まったわけです。
 
 
 

豊洲市場の特徴

 
そもそも、なぜ築地市場を廃場し、豊洲市場を新設する必要があったのでしょうか?
東京都中央卸売市場Webサイトから、その理由を探ると、「老朽化・狭い・非効率」というキーワードが診えてきます。昭和10年に開場した築地市場も、現在83歳のご高齢です。あちこちガタが来ていますし、運用やインフラなど、さまざまな点で今の時代にそぐわないこともあるでしょう。
次世代の市場として、豊洲市場が掲げている「豊洲市場の特徴」を確認しておきます。

  • 食の安全・安心を確保すること
  • 効果的な物流を実現すること
  • さまざまなニーズに応えられる施設であること
  • 省エネや地域の賑わいにも貢献すること

これ、覚えておいてくださいね。
以降、この特徴にふれながらご紹介していきます。
 
 
 

市場ではなく、工場?


 
まず、築地市場の各区画について確認しておきましょう。
ゆりかもめ:市場前駅の南側に位置するのが、青果棟です。
市場前駅から環状2号線を挟んで南西側に位置するのが管理施設棟、その先に水産卸売場棟があります。
市場前駅から環状2号線を挟んで北西側に位置するのが水産仲卸売場棟です。水産卸売場棟と水産仲卸売場棟は都道を挟んで南北に位置しますが、ターレーやトラックが往来できるアンダーパスで結ばれています。
 
豊洲市場の広さは、約40.7ha(12万3千坪)です。築地市場が約23.1ha(約69,900坪)ですから倍近い広さとなります。今回の見学会では、管理棟から出発、水産卸売場棟、水産仲卸売場棟、青果棟へと見学していきましたが、歩行距離は約5km、2時間近くかかりました。
 
 
見学会当日は、あいにくの雨模様でした。しかし、ゆりかもめ:市場前駅から豊洲市場までのアプローチは屋根付きのコンコースが設置されており、集合場所である管理施設棟PRコーナーに至るまで雨に濡れる心配はありません。
PRコーナーに至る通路では、開店準備を進めるお寿司屋さんなどが内装工事を行っていました。グレートーンで無愛想かつ無機的な外見の豊洲市場ですが、施設内、特に見学コースには魅力的なデザインが施されています。
 
見学会の冒頭では、係員の方から見学をする上での注意点と共に、豊洲市場のあらまし、環境面での安全性などに対する説明を受けます。地下水の問題など、世間の耳目を集めたポイントについては、簡潔ながらもしっかりと説明をしていました。本記事では豊洲市場の安全性については議論しませんが、このあたりは報道が先行し冷静な検証が疎かにされた側面もあるのでしょうね。
 
 
管理棟から水産卸市場棟へ向かう見学コースの通路を歩きながら、筆者はある既視感を感じました。小さな窓しかない閉塞感、簡素ながらも清潔感のある通路。良く言えば開放的、悪く言えば猥雑な築地市場とは、まったく異なります。この夏、私はアサヒビール工場を見学したのですが、豊洲市場は雰囲気がとても似ています。
閉鎖型施設であること、これは豊洲市場の大きな特徴のひとつです。温度管理だけでなく、衛生面で大きなアドバンテージを持ちます。
外界との出入り口には、虫の侵入を防ぐためのエアカーテンが設置されています。市場関係者の出入り口には手洗い場が設けられ、またドアノブを介した感染を防ぐため、すべて自動ドアが採用されています。ターレーの出入り口には、消毒薬を含んだマットが用意されるとのこと。
 
こう診ると、豊洲市場は食品工場に準じた施設インフラと運用のレギュレーションを備えていることが分かります。
 
 
話がずれますが、環状2号線見学会で築地市場のそばまで行った際、魚特有の生臭さを感じました。市場らしい、と言えばそのとおりですが、今の時代にはそぐわないのも確かでしょう。閉鎖型施設となった豊洲市場周辺では、このような街の匂いを感じることはなくなるのでしょうね。
 
 
 

完成度の高い見学コース


 
築地市場では、場内への一般観光客の立ち入りが(基本的には)可能でした。
そのため、売り物のマグロに外国人観光客がペタペタと手を触れてしまう…、なんて残念な事態が発生していました。豊洲市場では、きちんと見学コースが整備されています。ただしその見学コースは現場とは隔離された窓ごしの見学となり、大原則として一般人が現場に立ち入ることはできないようになっています。
 
ところで、マグロ卸売場の床は緑色をしています。これ、なぜでしょう?
正解は、マグロの断面を見やすくするためだそうです。マグロ卸売場において、マグロは尾の部分を断ち落とされています。その断面を見て、仲買人はマグロの質を目利きしますが、その際、赤身の断面を見やすくするように床色を緑にしているそうです。
場内の灯りはLEDを利用していますが、色味は暖色です。これも本来の白っぽいLEDの灯りよりも、暖色のほうが見やすいからだそうです。
 
広いマグロ卸売場の各所には、赤地に黒文字で「大物」と書かれています。「ああ、大きなマグロを扱うコーナーなんだな」と思ったら、そもそもマグロのことを関東では「大物」と呼ぶだとか。ちなみに、関西や九州ではマグロのことを「太物」と呼ぶそうです。
 
 
マグロ以外の魚を扱う鮮魚卸売場の床は灰色味がかかった白、つまり通常のコンクリート色です。
マグロ卸売場も鮮魚卸売場も、場内の床は微妙な傾斜がついており、排水性を良くしています。また、柱や壁が床と接する部分は、直角で交わるのではなくカーブを描いています。これも、食の安全と衛生を守るため、ホコリやゴミを溜まりにくくする、豊洲市場の工夫です。
 
 
 

市場ではなく、物流センター?


 
いくつものシートシャッター、ドアを抜けて外周にあるトラックバースを見学します。ドッグシェルターが並ぶバース、ランプウェイ通路、待機するトラックを電光掲示板によって呼び出す仕組みなどを見ると、市場というよりも食品系の物流センターを想起します。
豊洲市場においては、トラックやターレーは一般道に出ることなく、市場内を行き来することができるようになっています。また、ターレーには専用の通路が用意されており、原則としてトラックとターレーが混走しないように設計されています。築地市場で現在見られる、トラックやら乗用車が行き交う一般道をターレーが縫うようにして走り抜けるカオスな風景はなくなるのでしょう。
 
豊洲市場は、市場機能(卸と仲卸)の他、加工、そして物流のハブとしての機能を持っています。
「市場であり物流センターであること」、これが豊洲市場の特徴のひとつです。
 
 
 

まるで「テーマパーク」な仲卸売場


 
豊洲市場の仲卸店舗における、間仕切り問題をご存知でしょうか?
築地市場には存在しない間仕切りを仲卸売場に設けることに、仲卸業者たちが反発した件です。いわく、「間仕切りがあったら、マグロの解体ができないじゃないか!?」と言うのが彼らの主張でした。
間口の狭い店舗がお重のように並べられた市場独特のレイアウトでは、刃渡り1mを超えるマグロ包丁を扱う上で間仕切りが邪魔になることは、素人の私でも分かります。
でも、間仕切りは食品衛生法上、必須なんだとか。結局、同じテリトリーの仲卸店をひとつの区画にまとめ、食中毒等の問題が発生した際には連帯責任とすることで、間仕切りをなくす特例を認めたそうです。

仲卸店舗のフロアは、巨大な体育館の中に仲卸業者が並ぶ街並みを押し込んだように見えます。まるで室内型テーマパークのようです。
水産仲卸売場棟には、『魚がし横丁』という観光客向けのフロアが設けられます。某芸能人の実家が営む、築地の人気玉子焼き屋さんも看板がかかっておりました。飲食店や物販店が並ぶこの一角は、きっと豊洲市場観光の中心になるのでしょう。
 
 
 

彩り鮮やかな青果棟


 
築地市場では陰の薄い青果市場ですが、豊洲市場ではしっかりと存在感を示しています。市場前駅から一番近いのも青果棟です。
見学コースに入ってまず目につくのは彩り鮮やかな装飾です。野菜の名を冠した色とりどりのプレートが、見学者の目を楽しませてくれます。見学コースからは、自動立体倉庫の様子も眺めることができます。
豊洲市場青果棟では、卸売場と仲卸売場が同じフロアに隣接しています。仲卸売場は、閉鎖型の店舗とオープン型の店舗の二種類が並んでいますが、これは市場関係者の声を市場設計に反映した結果なんだとか。
場内の一角には、『フレッシュラボ』なる一角があります。これはキッチン施設を設けた施設であり、例えば地方農家の方々を招き試食会を実施するなど、さまざまな試みに利用されるそうです。ここから、新たなビジネスも育つのでしょうか?、今後が興味深いです。
 
 
 

期待高まる環状2号線の開通


 
2018年9月15日に行われた、『環状2号線(豊洲~築地) 施設見学会』にも足を運んできました。
レポートをお届けしましょう!
 
…と言っても、道路ですから。率直、施設面で、目を引くような斬新なポイントはないです(ごめんなさい…)。
今回見学会が行われた、豊洲から晴海、勝どきを超えて築地までの約2kmには、豊洲大橋(豊洲~晴海)、黎明大橋(晴海~勝どき)、築地大橋(勝どき~築地)のみっつの橋があります。特に豊洲大橋と築地大橋は、都心を愛でる景観スポットになりそうです。歩道がしっかりと整備されているので、歩いていても気持ちがよいです。
 
環状2号線が暫定開通するのは、11月半ばです。豊洲市場開場後、一ヶ月ほどで開通させる予定だそうです。ただし、このとき開通する築地から汐留までの区間は、築地市場の西側を通る暫定道路であり、築地市場跡の地下トンネルを通る本線が開通するのはまだまだ先になります。
 
 
豊洲市場も環状2号線も、残念なことに開業前にさまざまなケチがつきました。
しかしながら、見学会に参加し、完成間近のその姿を診ると、「よくできているよなぁ!」というのが私の率直な感想です。豊洲市場は、東京の新たな観光スポットとして、間違いなく人気を集めることでしょう。
豊洲市場では、未ださまざまな課題が指摘されています。例えば、高額な運用コストの問題がありますが、これだけの魅力と機能を備えた市場を新設し、もし採算が取れないとしたら、それはインフラの問題ではなく、営業であり広告であり、そしてなによりも戦略の課題ではないでしょうか。
開場後の豊洲市場がどのように活用され、活性化していくのか、とても楽しみです。
 
皆さまも、ぜひ開場したら足を運び、豊洲市場の魅力をその目で確かめてください。
 
 
 
 

フォトギャラリー

 
本文では紹介しきれなかった画像をご紹介します。
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参考

 
豊洲市場について (東京都中央卸売市場)
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/

『江戸の繁栄を象徴する―魚河岸』(月刊日本橋)
https://nihombashi-tokyo.com/jp/history/245.html

豊洲市場について(東京シティ青果株式会社)
https://www.city-seika.com/toyosu/


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