秋元通信

仕事が終わらせられない人への処方箋

  • 2019.4.26

かつての私の同僚で、机とその周囲が異常に汚い女性がいました。
彼女の職務は、紙もの、つまりパンフレットや会社案内などの営業と編集です。「だから…」と彼女は自分の職務を言い訳に、机上に1m以上の書類の山を積み上げ、それでも置き場所が足りず、自身の机の周りの床に書類の山を積み上げていました。
 
「要塞だよね…」、「いや、洞穴でしょ」、書類の山に埋もれ、姿すら隠れてしまう彼女の机に、私を含む同僚たちはこのように揶揄していました。
 
もうひとつの問題。
それは、彼女の仕事が遅いことでした。残業も多いのに、納期を違えることもしばしば。
 
「私だって頑張ってるのよ。だけど、仕事はどんどん入ってくるじゃない…」
 
そういう彼女に、私どもはほとほと困ったものです。
定められた就業時間内に、与えられた仕事をこなすことができない人。これは、一概に本人の責任ではないケースもありますし、何よりも本人はそれなりに頑張っているので、一方的に悪者にするのは心苦しいのですが。
今回は心を鬼にして、あえて「仕事が終わらせられない人」とくくり、その対処法を考えましょう。
 
今回は、「仕事が終わらせられない人」にありがちな、4つのタイプをご紹介しましょう。
 
 

「自分の仕事」を棚卸しできない人

 
コンサルタント等から業務改善指導を受けたことがある方であれば、毎日の業務について、棚卸しを行った(行わされた)経験がある方もいることでしょう。
業務改善における現状把握フェイズとして、各人が担当している仕事を一覧にして書き出す、つまり棚卸しを行うことは、常套的な手段です。
 
私の経験上、「仕事が減らせない人」ほど棚卸しが下手です。
つまり、日々「仕事が終わらな~い!!」と嘆いている方ほど、自分の仕事を把握していないことになります。
 
ここで疑問です。
自分の仕事をリストとして把握していない人は、どうやってその日の仕事が終わったと判断しているのでしょうか?
ありがちなのは、「自分定時」を決めているケースです。会社の定時が17時なのに、自分定時が19時とか20時とか、勝手に自分の中で定時を定め、その時間まで仕事をすることが習慣になってしまっているわけです。
 
棚卸しができない人は、自分の仕事の質と量をきちんと把握しておらず、行き当たりばったりで仕事をしています。仕事が終わらない、減らせないのも当たり前です。
 
 

仕事が捨てられない人

 
日々…とは言いませんが、長期スパンで考えれば、ひとりが担当する仕事は増えていきます。理由は後述します。
だから、仕事が増える分、捨てる仕事がなければ仕事量がパンクするのは当たり前です。効率化だけで、増える仕事に対応するのは無理です。
 
「仕事が終わらない」と嘆く人に対し、私はまず「では10個の仕事を捨ててください」とアドバイスします。乱暴に聞こえるかもしれませんがが、これが実によく効きます。
 
仕事の効率化がよほど進んでいる方でない限り(そしてそういう人は滅多にいませんが)、捨てられる仕事はあります。
そして、大事だと思いこんでいる、つまり放置しても問題がない仕事というのは意外とあるものです。
これは些細なことで良いのです。
例えば、配送伝票関係をホッチキスで止めるのを止めているケースもあるでしょう。こんなケースは、とても止めやすい例です。
「ばらばらになっちゃうよ!」と文句を言うドライバーがいれば、ドライバーに一人ひとりにやってもらえば良いです。
一組の伝票をホッチキスで止めることは、大きな手間ではありません。何十人/何十台分もの伝票を、内勤の方が行うから手間になるわけです。
 
その仕事を捨てる、つまりしなくなったことでなにか問題が発生すれば、そのときに対処を考えましょう。ただし、対処を考える際には、上司を含め、複数の人を交えて考えるべきです。
当人は、「捨てたことが間違いだった」と考えがちですので、第三者の客観的な目も交えて業務を見直すことが必要です。
 
 

PCスキルが低い人

 
これ、意外とコンサルタントも指摘しないのですが、考えてみれば当たり前です。指摘しにくい、というのもあると思いますが。
 
前職において、ある部長が、PCスキル向上のため、毎日始業開始後10分間、タイピングソフトによるトレーニングを配下の部下全員(事務職&営業職全員)に課したことがありました。一ヶ月も経つと皆タイピングスキルは向上し、3ヶ月が過ぎた頃には全員がブラインドタッチができるようになりました。
嘘のようですが、これだけで業務効率は格段にあがり、部署全体の残業時間も減りました。この成功体験は他部署にも共有され、私の部署でも実践しました。
 
実践してわかったのですが。大切なのは、ブラインドタッチができるようになることではなく、ブラインドタッチという新たなPCスキルを身に付け、仕事が早くなったという成功体験を積むことにありました
 
「マウス右クリックでコピペするなんて…。今では考えられないです。ショートカットキーって、偉大ですね」
 
こう語った私の部下は、ブラインドタッチを覚えたことをきっかけに、右クリックから卒業。さまざまなショートカットキーを覚えただけでは飽き足らず、自らExcelVBAを学び、さらに業務の効率化を目指すようになりました。
この例は出来過ぎにしても、タイピングをきっかけに、PCに対する苦手意識が克服され、PCをより効率的かつ効果的に使う方法を模索するように、部下たちが変化していくさまを見るのは爽快でした。
 
 

仕事が増えることが理不尽だと考えている人

 
業務改善等を進める時、もしくは進めている時に、こんなことをおっしゃる方がいます。
 
「業務改善を進めて仕事を減らしたって、次から次へと新しい仕事が降ってくるんだから、永遠に仕事が減ることはないよ…」
 
これ、ありがちな発言です。しかしこの発言、根本的に勘違いをしています。
 
まず、業務改善は楽をするために行うためのものではありません。誤解を恐れずに言えば、残業時間を減らすためのものでもありません。
業務改善は、より高い売上や利益を求めたり、より高い品質を求めるための手段です。つまり、つまり組織全体がより高い質の仕事を行う、パワーアップのために行う手段であって、残業時間が減るとか、社員たちの仕事に対するストレスが減るというのは、副次的な効果に過ぎないとも言えます。
 
会社は常にビジネスの変化、社会情勢の変化にさらされています。
特に現代は変化のスピードが早いため、都度適切な舵取りを行い、仕事であり業務の内容を見直していく必要があります。
会社が変わるのに、個人の業務が変わらないことはありえません。業務が変わること、仕事が増えることは、会社がマーケットに追随していくためには不可欠なことです。
 
仕事が増えることを受け入れられない人が、成長するわけがありません。
成長しない人は、いずれ増えていく仕事量に耐えきれずパンクします。
これも当たり前のことです。
 
 
さて、冒頭のエピソードに戻りましょう。
件の女史は、いよいよ会社内でも問題になりつつありました。残業時間が多すぎるため、コンプライアンスにも抵触しますし、何よりもプライバシーマークを取得しようとしていた会社にとって、彼女の机まわりの状況は、審査の障害となるからです。
 
「出社したら、まず『今日の仕事』を書き出し、上長に報告すること」
 
彼女に課したのは、このひとつのルールだけでした。ただもちろん、溜まりに溜まった書類の山は、ダンボール一箱分を残してすべて廃棄させましたけれども。
 
上長は、日々『今日の仕事』をチェックし、営業として客先に訪問する仕事を指示、追加しました。代わりに、不要と思われる仕事は行わせないようにしたのです。
 
これだけで、彼女の残業時間は大きく減り、また営業成績も上がっていったのです。
 
ただし…
健康上の理由により上長が退職した後、彼女の仕事ぶりは元に戻ってしまいました。
そう彼女は、指示されたことしかやらない、典型的な「ぶら下がり社員」だったのです。
 
「ぶら下がり社員」については、またいずれ考えましょう。
お楽しみに!


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