秋元通信

ぶら下がり社員を考える 【前編 / ぶら下がり社員とフリーライダー】

  • 2019.5.24

かつて私は量販店向けに携帯電話を卸す代理店で働いていました。
その代理店では、正社員とは別に、営業アシスタントとして多くのアルバイト(ほとんどがフリーター)を採用していました。
私の手足として働いてくれていた営業アシスタントのひとりに、とても優秀な男がいました。もともとは店舗で販売をしていたところを、その優秀さを買われて営業アシスタントに抜擢された彼は、数いる営業アシスタントの中でも、抜群の結果を出していました。
 
私が地方へ異動したあと、彼はフリーターから社員になります。
相談を受けた私は、もちろん諸手を挙げて彼の希望を応援しました。ところが数年後、私と彼がいた会社は経営の危機に直面します。社員の誰もが、会社と自分自身の将来に不安を隠せません。
件の彼も同様。久しぶりに再会した彼は、臆面もなく私に会社に対する不満と不安、愚痴をぶつけてきました。
 

「不安は分かるよ…。だけど、君は将来を期待された幹部候補のひとりなんだから。むしろ会社の危機は、自分のチャンスだぞ!」

 
そう励ました私に対し、彼が私に向けた表情を、今でも私は忘れられません。
それまでの熱量を持った話しぶりから、とつぜん子供のような、素の表情になった彼は、不思議そうにつぶやいたのです。
 

「僕って、幹部候補だったんですか? そんなこと、僕は一度もお願いしたことはないですけど。あ~、やっぱり正社員になると、そういうこと求められちゃうんですね。フリーターのままでいるべきだったなぁ」

 
 
「ぶら下がり社員」という言葉をご存知でしょうか。
ぶら下がり社員とは、それなりに優秀で、仕事もそれなりにこなす反面、向上意識や出世意欲に乏しく、言われた以上のことをしない、もしくは「したがらない」社員のことを指します。
 
今回は、会社にとってさまざまな問題をもたらす、ぶら下がり社員を考えます。
 
 
ぶら下がり社員としばしば混同される言葉として、フリーライダーがあります。
フリーライダーとは、簡単に言えば給料泥棒のこと。仕事はなるべく怠ける。でも、給料たっぷりと欲しがる。そのためには、他人の成果に相乗りしたり、横取りすることも辞さない社員を指します。
 
余談ですが、フリーライダーという言葉は、本来経済用語です。
「経済学においては、ことに公共財のように非排除性があるサービスについて、対価(供給のための費用)を支払わないで便益を享受する者を指す用語である」

フリーライダーとは/Wikipedia)

 
世の中には税金をキチンと払っている人と払っていない人がいます。
例えば、公共の公園というのは、国ないし地方自治体が整備、管理しているものです。しかし、「あなたは税金を払っていないから、公園に入っちゃだめです」とは言えません。
これは、消防や警察、自衛隊などにも言えます。
例えば、税金を払っていない人に家に入った泥棒を、警察が税金未納を理由に捕まえないことはできないわけです。
 
もともとは、対価を払わない人を排除できない公共的なサービスなどを考える経済用語だったわけですが、それが転じて給料泥棒的な社員をフリーライダーと呼ぶようになったのです。
 
フリーライダーは、悪人に近い存在と言えるでしょう。少なくとも、善人ではありません。仲間の手柄に便乗したり、盗んだりするわけですから。
フリーライダーである人は、フリーライダーになれるだけの素養を持っています。
 
高圧的な口調を用い、チカラづくで反論を抑え込む。
言葉巧みに自分の行動を正当化する。
もしくは、会社経営者の血筋にあるなど、政治的なチカラを利用するフリーライダーもいるでしょう。
 
フリーライダーは、社会道徳の境界ギリギリを歩こうとします。
したがって、会社が本気になれば、フリーライダーを排除することは不可能ではありません。
 
ぶら下がり社員はどうでしょうか。
ぶら下がり社員はフリーライダーと違い、基本的には組織のルール、社会道徳の範疇にいます。つまり、フリーライダーのような純然たる悪者ではないわけです。
むしろ、ぶら下がり社員は同僚や部下から一目置かれている場合すらあります。
 

「現場は疲弊してるんですよ。新規荷主開拓?、何を言ってるんですか? まず、現場改善が先ですよ! 部下たちを過労死させるつもりですか!?」

 
こんなこと言われたら、とても良い人な気がしませんか?
でも、よく考えてみてください。発言内容から、この人は現場をマネージメントする立場にあると考えられます。
となると、「現場が疲弊している」現状が放置されているのは、発言主の責任でもあるはずです。だとすれば、この発言主は言葉巧みに責任をすり替えていることになります。
 
 
ぶら下がり社員の問題点はなにか?
端的に言えば、組織であり会社の成長阻害要因になることでしょう。
会社は、成長しなければなりませんし、変化しなければなりません。変わらないことは、現状維持ではなく、マイナスです。会社が変わらなくとも、マーケットや社会情勢は変化し続けるからです。
 
例えば、会社が新事業に取り組もうとしています。社員は、新たな知識やスキルを身につける必要があるでしょう。
例えば、働き方改革の一環として業務の見直しを行うケースがあります。社員一人ひとりが抱えていた業務はいったん解体され、再配置される必要もあるでしょう。
 
ぶら下がり社員は、こういった自身の仕事内容/業務内容の変化を拒否しようとします。現状を変えようとせず、業務改善や新事業には非協力的です。
 
ぶら下がり社員は、「出世しない」「頑張らない」、でも「辞めない」を主張します。
つまり、ぶら下がり社員は会社組織にとって必要な、主任、係長、課長、部長といった管理職ポストを拒否する可能性があります。例えば、「係長にはなるけど、課長にはなりたくない」、そんなわがままを言われれば、管理職が不足し、組織維持にも問題が生じる可能性があります。
 
もうひとつ。
ぶら下がり社員は、伝染します。これが最大の問題点でしょうね。
最悪なケースとしては、ある部門全体がぶら下がり社員化するケースもありえます。
 
ぶら下がり社員も、フリーライダーも、会社にとっては頭の痛い存在です。
しかし、ぶら下がり社員は、必ずしも会社にとって悪者とは言い難い面があります。フリーライダーは、給料未満の働きしかしませんが、少なくともぶら下がり社員は、給料に見合った働きはしているとも言えます。
むしろ、給料以上の労働意欲を求めているのは会社側であり、悪いのはぶら下がり社員ではなく、会社であるとも考えられかねません。
 
ぶら下がり社員が生まれてしまう理由は何でしょう?
また、ぶら下がり社員に対して、会社はどのように対処すればよいのでしょうか?
 
続きは、次回の秋元通信でお届けしましょう。
お楽しみに!


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