アライアンスを「実現できている」運送会社は、どれほどあるのでしょう?
運送会社同士がアライアンスを組む目的は、配送の効率化、コスト削減、配送網の充実などにあります。もちろん、成功しているアライアンスもありますが、「アライアンスを実現したものの、その効果は限定的である」、もしくは「アライアンスを実現しようと模索したものの、実現していない」というケースも多いのではないかと推測します。
率直に言えば、当社の『まごころ便』は、前者にあたるでしょう。
少なくとも、もっと規模を拡大しないと、数ある物流ビジネスの中で存在感を示すことはできません。
そんな中、輝くような存在感を示す取り組みが注目を集めています。
それが、ラストワンマイル協同組合さまです。
今回は、ラストワンマイル協同組合の理事長である志村直純さまと、当社常務:鈴木清の対談を通し、ラストワンマイル協同組合さまの取り組みを紹介しつつ、ラストワンマイル協同組合さまと秋元運輸倉庫が手を取り合うチャレンジについて、ご紹介しましょう。
※以下、原則として敬称を省略いたします。
鈴木:
ラストワンマイル協同組合、注目を集めていますね!
志村:
ありがとうございます。
昨年設立し、現時点で25社が組合員として参画してくださっています。
現在、当組合のデリバリー網は約3500台ですが、今も打ち合わせ進行中の企業がいくつもあるので、1万台規模も見えてきています。
鈴木:
1万台!!
現在、ヤマト運輸が約4.7万台、佐川急便が2.7万台、日本郵政が3.3万台(※小型貨物自動車だけだと約2800台)ですので、ラストワンマイル協同組合は、宅配業界における第四の勢力になりつつあるのかもしれませんね。
ラストワンマイル協同組合が興味深いのは、大手倉庫会社が興味を示し、また手を組もうとしていることだと思っています。
現在の倉庫ビジネスでは、人とクルマの手配が大きなポイントになっています。どんなに立派なメガ倉庫を建てたところで、物が出せなければ意味がないですからね。
現在、物流業界が直面している人不足とクルマ不足が、むしろ理事長のところには追い風になっている感すらあります。
志村:
実は、10年ほど前にも、ラストワンマイル協同組合の原型となるような、配送ネットワークを立ち上げようとして失敗しています。
再チャレンジしたのは、2016年からです。
ある荷主さんから、「運送会社の仲間を募れば、配送網が拡大できるじゃないか?」と言われたのがきっかけです。
運送会社の皆さん、感じている課題は一緒です。
私どもが目指すビジョンや、ラストワンマイル協同組合の仕組みなどを丁寧に説明することで、信頼を得られたのでしょう。
鈴木:
荷主さんは、ごく簡単に、「運送会社が手を組めば良いじゃないか?」と、簡単に言ってきますが…
志村:
簡単じゃないですよ。皆さん、一国一城の主であるわけですし、責任がありますから。
プライドが邪魔して、手を組めないこともあると思います。
「うちの客を盗るんじゃないか!?」って疑心暗鬼もあるでしょう。
だからこそ、アライアンスを組む者同士、皆が公平な立場にあることと、ビジネス/仕組みの透明性は、絶対に必要でした。
鈴木:
ラストワンマイル協同組合では、運賃タリフをWebサイトで公開していますよね。
当社を含め、多くの運送会社では、運賃タリフをネット上で公開することはしていません。
志村:
運賃タリフが公開されているだけで、荷主はバンバン決まります。
分かりやすいということは、それだけで説得力を持っているからです。
これは、ラストワンマイル協同組合に参加してくれた組合員に対しても同じです。協同組合なので、組合員に利益を還元するのは必須なのですが、この仕組みが分かりやすいからこそ、ラストワンマイル協同組合に参画してくれる企業も増えているのでしょう。
利益、すなわち喜びの分配を透明性のある仕組みのもと、公平に行うというのは、当団体がとても大切にしていることです。
志村:
私どもの目的のひとつは、一円でも高い配送費を求めることです。
これは、ドライバーの給与に反映するためです。現在、物流業界ではトラックドライバー不足が喫緊の課題となっていますが、その割にドライバーの給与を上げる仕組みを持つ運送会社は、あまりありません。
ラストワンマイル協同組合では、ドライバーの給与アップのためには、まず荷物を集めることが大切だと考えています。限られた労働力で、きちんと利益を出すことが大切です。
鈴木:
最近では、路線便事業者も集荷を嫌がることがあります。
しかし、ラストワンマイル協同組合では、集荷にポイントを置いていることがユニークですね。
志村:
集荷を嫌がる運送会社は多いですが、ホントは集荷こそが儲かると考えています。
現在の試算では、集荷の上限は、一日70万個から80万個程度と考えていますが、これを達成するのは、決して難しいことではありません。
これだけの荷物を集めれば、自ずと売上と利益はついてきます。
倉庫ビジネスにしても、運賃タリフ込みで、保管/梱包/流通加工といった倉庫ビジネスの提案すべきではないでしょうか。
志村:
国内経済の今後を鑑みれば、BtoBの先細りは明らかです。
一方、通販ビジネスや、メルカリに代表されるフリマアプリ・マーケットの拡大によって、BtoCが拡大することも明らかです。
ところが、私が話した多くの運送会社は、「BtoCは魅力だけど、うちはBtoBでいいや」と言います。BtoBのマーケットが、いつまでも存在すると思っているわけです。
ちなみに、ラストワンマイル協同組合はBtoBを「やらない」と言っているわけではありません。当然、私どもの営業エリア内では、BtoCだけではなく、BtoBも狙っていきます。
さらに言えば、CtoCもアリだと思っています。
配送は、例えば街の商店街が担っても良いとは思いませんか?
副業として、配送を行ってもらっても良いわけです。
そのためには、戦略が必要ですが。
鈴木:
ラストワンマイル協同組合のWebサイトには、以下のように書かれています。
「荷主の課題を解決し、宅配大手のバイパスライン (副経路)を担うべく、中小運送業者が一丸となり、ラストワンマイル協同組合を設立するに至りました」
この考え方は、おもしろいですね。
志村:
鈴木さんがおっしゃったとおり、今や人と足(※クルマ)のない倉庫は、ビジネスとして成立しません。
だからこそ、倉庫も路線便だけに頼るのではなく、サブラインとしての保険が欲しいわけです。
サブラインを欲しがるのは、実は大手運送会社も同様です。例えば、大手運送会社では、営業所の垣根をまたぐ案件は、営業がしにくいという事情があります。そういった案件について、サブラインである私どもにお任せいただければ、面倒な社内調整不要で、大手運送会社は売上と利益だけを得ることができるのです。
鈴木:
倉庫屋である私どもは、当初ファンド系倉庫の登場を冷ややかな目で眺めていたわけです。
「どうせ失敗するよ」、そう思っていた倉庫屋の推量が外れたことは、皆さま御存知のとおり。
同じように、ラストワンマイル協同組合の存在は、これまでの物流ビジネスの発想を超える可能性を持っていると感じています。
例えば、路線事業者が荷物を集めて、ラストワンマイル協同組合が集荷の実働を担う、なんて取り組みもあるのではないでしょうか。
志村:
私どもの武器のひとつは、「色がないこと」です。
資本的な系列関係もないですし、ビジネスに枠も設けていない。
そういった意味では、鈴木さんがおっしゃったこともあり得るでしょうね。
鈴木:
私どもが展開する共配ネットワークである『まごころ便』について、志村さんにご協力させていただくこともありでしょうか?
志村:
もちろんです。
鈴木:
ありがとうございます。では、いろいろとご相談させていただければと…
秋元運輸倉庫と、ラストワンマイル協同組合とのアライアンスは、まずは当社が荷物を出し、ラストワンマイル協同組合が配送する、という形で始まる予定です。つまりは、『まごころ便』の配送網を、ラストワンマイル協同組合がさらに充実させるという形からスタートします。
志村理事長のお話には、説得力があります。
運送業界に限らず、企業同士が手を組もうというときには、理事長がおっしゃるとおり、疑心暗鬼やプライドが邪魔をしてきます。逆に言えば、ラストワンマイル協同組合の強みは、そういった負のファクターを吹き飛ばすほどの説得力にあるのでしょう。
その説得力を支えるのが戦略であり、戦略を仕組みで裏付けているからこそ、巡って説得力があるのでしょう。
私は仕事柄、多くの方からお話を伺いますが、志村理事長のような、強く太いオーラを持つ方に久しぶりにお会いした気がします。
今後、秋元運輸倉庫とラストワンマイル協同組合が、どのような化学反応を示すのか、ご期待ください!
ふたりの対談の様子を少しだけ、ご紹介しましょう!