こうやって月に二回、メルマガ「秋元通信」を発行していると、お褒めいただくことがあります。
「文章が書けるってすごいよね。社内の稟議書とか、そんなものは書けますよ。でも雑記と言うか、エッセイのようなものを書くことは、もうどうしたら良いのか分からなくて…」
お褒めいただいた後に、よくこのような悩みをお聞きします。
こういう悩みを抱える方にありがちなのは、実は「文章が書けない」のではなく、「プロットが創れない」ケースです。
プロットさえ創り上げれば、後はパズルのように、文章を当て込んでいくだけで、自然と体裁の整った文章になります。
今回は、マインドマップを用いながら、プロットを創り上げる方法を考えましょう。
「朝、起きました。
学校に行ったら、クラスメートたちが既に集まっていました。僕は少し遅れてしまったので恥ずかしかったです。
集合して、バスに乗りました。
最初に行ったのは、○○です。迫力があって、おもしろかったです・・・」
こんなふうに、時系列に沿って発生した出来事、そしてその感想を羅列する文章のことを、私は「遠足作文」と呼んでいます。
時と場合によっては、遠足作文が求められるケースもあります。
例えば、事故報告書の経緯説明については、時系列に沿って、事実を記載する必要があります。
遠足作文の良くない点は、文章が平坦になることです。
何かを主張する際には、もっとも重要なポイントが分かりやすくなるように、文章に濃淡をつける必要があります。
例えば、新たなソフトウェアを購入するケースの稟議書における導入理由を考えましょう。
◇ 遠足作文的な稟議書(文)の例
「経理担当者は、月初には各取引先からの請求書の受領処理を行っている。当社が受領する請求書は枚数ベースで400枚にも及び、その処理には大きな労力が費やされている。
月中には請求書関係の処理はないが、入金突き合わせを行い、売上を確定させる必要がある。ただし、本作業に掛かる工数は大きなものではなく、現状3名の経理人員で十分に足りている。
月末には、ご承知のとおり社外への請求書発行処理が行われる。当社の請求書発行処理は、お客様にあわせて、20日締め、25日締め、月末締めの三回行われており、しかもその請求書発行ボリュームは、波動があり一定ではない。
月初の請求書処理もそうだが、特に月末の請求書発行処理には大きな労力が必要なため、必要に応じ人事部を始めとする総務他部署より、応援を要請している。
本ソフトウェアを導入すれば、応援の必要なく、経理部人員だけでマンスリーの請求処理を遂行することができるようになる」
主張に濃淡をつけた稟議書(文)の例
「本ソフトウェアを導入することで得られる最大のメリットは、経理業務の効率化を図ることで、現在課題となっている人事部を始めとする総務他部署への応援要請を解消、経理部現体制:3名でマンスリーの経理業務をまかなうことができるようになることにある。
参考までに、現状の主な経理業務とそのボリューム、応援要請の状況を列記する。
・請求書の受領処理(月初)
受領請求書:約400枚(枚数ベース)に対し、応援実績:*人
・売上確定処理(入金突き合わせ/月中)
応援実績なし。現人員体制で可能。
・・・(以下略)」
プロットを考えず、いきあたりばったりで書こうとすると、遠足作文になりがちです。
「プロット(plot)」とは、物語の筋や仕組み、構造を指しますが、本記事では「プロット=構成」を指しています。
ある事柄を文章にまとめようとする際、「書きたい内容」というのがありますよね。
先の稟議書の例で言うと、書きたい内容(書くべき内容)は以下の通りです。
- ソフトウェアを導入したいという希望。
- 現在の課題。特に、経理部だけでは業務をまかないきれないという現状。
- ソフトウェア導入によって、現在の課題を解決できるという見通し。
実際には、もっと細かい要素に分解できますし、細かく分解したほうが、プロットは立てやすくなるのですが(後述します)。
「書きたい内容」を並べ、その並び順を見直し、場合によっては、各要素を大項目→中項目→小項目→・・・というように入れ子構造にすること。
これが、プロットを創る、ということなのです。
プロットを創りあげる方法として、昔から使われてきた方法として、メモ紙を使う方法があります。
- 「書きたい内容」をポストイットや、一枚づつ切り離すことが可能なメモ紙に、「一枚にひとつの『書きたい内容』」形式で書き出す。
- 上記を机上に並べる。
- メモ(ポストイット)を並び替えながら、プロットを考える。
頭の中だけで、理路整然と書きたいことを挙げ、そしてプロットに並び替えることは、意外と困難です。「書きたいことを挙げる」、つまり文章の構成要素を漏らさず列記するのであれば、やはり紙などに書き出したほうが確実です。
このメモ紙を使った方法は、とても有効ですが、実用的には、やや使い勝手が悪い点もあります。
「紙を並べる」→「並び替える」という過程においては、ある程度大きな机などのスペースが必要であることが、理由のひとつ。
もうひとつは、途中保存がしにくいことです。机の上にメモ紙を並べたまま、放置して許される職場、状況であれば良いのですが…。実際には、難しいですよね。
そこで、私がオススメするのは、マインドマップです。
マインドマップとは、樹形図のようにアイデアを書き留めていく、ブレインストーミングの手法のひとつです。ブレインストーミングとは、細かいことは抜きにして、ざっくりと言えば、アイデアをひねり出す手法を指します。
ポイントは、樹形図状にアイデアを書き出していくこと。
これによって、書き出したアイデアに大分類→中分類→小分類という入れ子構造が出来上がります。
例えば、「猫が可愛い理由」をブレインストーミングしてみましょう。
◇ 猫が可愛い理由
- 見た目
- もふもふしている。
- 意外と表情が豊か。
- 行動
- ひとりで勝手に遊んでいる。
- 人にすり寄ってくる。
- キャラクター
- 好奇心旺盛。
- 意外と甘えん坊。
ここでは3階層にしかブレイクダウンしませんでしたが。
このように、アイデアの各要素をひとつづつ詳細にブレイクダウンし、それを樹形図状に書き留めていくのが、マインドマップの基本です。
マインドマップを転用して、文章のプロットを作成する際には、PCやスマホなどで利用可能な、ソフトウェア型のマインドマップを利用しましょう。
(PC向けには、XMINDなどのマインドマップのフリーソフトもあります。探してみてください)
ソフトウェア型のマインドマップを勧める理由(逆に言えば、紙でマインドマップを勧めない理由)は、書き出した樹形図の各要素を、ドラッグ&ドロップで、他の場所に移動できるからです。
私の場合、このようにして、マインドマップを利用して、プロットを作成しています。
この時点では、あまり樹形図の入れ子構造にこだわりません。
逆に、思いついたキーワードなどは、とにかく書き出していきます。特に文献などを調べながら書く際には、調べた内容をかなり詳細にマインドマップに書き出していきます。
マインドマップに書き出した要素を、ざっと俯瞰しながら、似たような各要素(ネタやキーワードなど)をグルーピングしていきます。
マインドマップ・ソフトウェア上で、ドラッグ&ドロップし、樹形図の形に整えていくわけです。
ここ、意外と大事です!
すぐに次工程のプロット作成に移行したいところですが、この時点では、文献を調べたり、アイデアをブレインストーミングしたときの、「熱」のようなものが残っていて、冷静にプロットを作成することができません。
例えば、プロットのまとまりを考えると、捨てるべきアイデア、キーワードなども、この時点では冷静に判断することができません。
そこで、いったん作成したマインドマップを数日放置します。
自分の頭がクールダウンすることを待つわけですね。
改めてマインドマップを診ます。
どういう順番で、どのようにプロットを組むと、もっとも良いプロットになるのか?
全体を俯瞰しながら、プロットを完成させます。
マインドマップ・ソフトウェアであれば、組み上げてみて、もし「う~ん、イマイチだなぁ…」と思ったら、何度も組み上げ方をチャレンジすることができます。
プロットは、文章を書きやすくするための要素であると同時に、文章を良くするための要素でもあります。
例えば、おにぎりを作る際のことを考えましょう。
- あらかじめ、塩を混ぜたご飯でおにぎりを作る。
- 手に塩を付けて、おにぎりを握る。
- 握ったおにぎりに、塩を振る。
一般的には、2.ですよね。
興味のある方は、1.と3.も試してみてください。まるで味が違います。どれが美味しいのか、どれが美味しくないのかは、あえてここでは書きませんが…
プロットも同じです。
せっかくの素材(ネタ)も、プロットの良し悪しで、その印象も、出来上がりも大きく異なってきます。
今回は、「文章を書くことが苦手」という人向けに、プロットの大切さと、創り方をまとめてみました。
またいずれ、機会があれば、今度は、良いプロット、悪いプロットの例を考えてみましょう。
お楽しみに!