秋元通信

鈴木清が振り返る2019年 物流不動産の可能性

  • 2019.12.27

秋元運輸倉庫 常務取締役、そしてイーカーゴ 社長の鈴木清です。
 
先日、取引銀行主催のビジネスマッチングイベントに、あきもとグループ会社3社(イーカーゴ、アルケミートレード、秋元運輸倉庫)で参加しました。
当日は、イーソーコグループのご協力もあり、面談もしくは当グループのブースにご来展いただき、数十社様と名刺交換をさせていただきました。数多くの企業と情報交換をいたしましたが、急ぎの物流案件に関するご相談がとても多く、しかも同じような内容であったことに驚きました。
 

『物流はなくならないが、物流企業はなくなる』

 
私が以前から言葉にしてきたことです。
当初、これは運送事業者に対する警鐘でした。
この言葉を発したのは、荷主企業における物流の内制化が、次々と表面化してきたからです。
しかし、今や運送事業者の課題は、日本経済をも揺るがしかねない、社会全体の課題へと発展してしまったことを、ビジネスマッチングイベントの場で痛感いたしました。
 
 
かつて私は、お取引先メーカー様より、「いいモノを作っても、運べなければただの産廃と同じだ」と言われたことがあります。
今回、情報交換をした企業様からも、さまざまな声をお聞かせいただきました。
 
「いつものドライバーが辞めてしまった」、「ドライバーの高齢化のため、配送を止めざるを得ない」と運送会社から言われた荷主企業。
 
「働き方改革を進めようとすれば、仕事を選ばざるを得ない」という運送事業者。
 
どれも、「運べない」という悲鳴です。
そして、この状況は、産業によって偏っていることも分かりました。が、しかし、この偏りは、いずれ別の産業へも広がり、そして産業界全体を覆うことでしょう。
 
それ故でしょうか。
「まごころ便について、詳しく聞きたい」、こんな声もたくさんいただきました。
 
 
国も、この物流危機に対し、ただ手をこまねいているわけではありません。
しかし、国が打つ施策の多くは、それなりの規模を持つ、物流企業、荷主企業が対象になっているように思っています。
 
日本の全企業のうち、99.7%は、中小企業であるとも言われています。
「商品が運べない」「商品を運んでくれない」と困っている企業は、どこまで広がっているのでしょうか…
 
時流への対応力に、どうしても乏しくなってしまう中小企業を中心に、こういった「物流難民」が発生、取り残された結果、せっかく作った製品を納品できないという危機。もはや死活問題であることは、誰の目にも明らかです。
 
2019年を振り返ると、「運べない」という悲鳴、物流難民問題を、あちこちで耳にする一年だったと感じています。
 
 
驚くべき数字があります。
 

  • トラック輸送業における、1社あたりの平均営業収入は、2億3千万円。
  • トラック輸送業における、従業員一人あたりの生産高は、月64万円。

 
業界別の事業規模を診ると、他業種に比べて、いかにトラック輸送業の地力が低いかが分かります。
こういった数字を診ても、ドライバーの給与が低いことは分かりますし、労働環境統計データを診ても、トラックドライバーという職業に魅力が薄いことは、明白です。
 
ここからは、2019年の物流動向と言うより、私が肌で感じていることを申し上げましょう。
 
『物流はなくならないが、物流企業はなくなる』
 
先に申し上げたとおり、当初、これは運送事業者に対する警鐘でした。
しかし、この問題提起に対する解決策のキーは、倉庫業であり、物流不動産にあると考えています。
 
運輸・倉庫業界の人手不足は、依然として高水準です。
特に、トラックドライバーの求人倍率は、3.2倍まで上昇しています。当社も、ドライバー採用には多額の費用をかけていますが、特に東京、神奈川については、とても苦戦しています。
物流企業における事業継続においては、人手不足への対応、そして働き方改革への舵取りが最大のテーマであることは、間違いありません。
 
「物流不動産って、しょせんは物流施設の貸し借りでしょ?」
 
こういう発言をされる方は、依然として多いですね。
 
当社も倉庫業を営んでいるからこそ申し上げますが、運送会社や、荷主企業から後ろ指をさされているのは、倉庫業者が多いと感じています。
 
「あそこの物流センターは、なかなか積んでもらえない」「あの倉庫は、トラックを待たせ過ぎだよ」と嘆く運送会社。
荷主企業からは、「突然入庫が断られた」「夕方の出荷を受けてくれない」といった恨み節が聞こえてきます。
 
倉庫こそが物流のボトルネックであり、だからこそ逆に言えば、倉庫こそが物流改革のキーであるわけです。
 
当社でも今年、倉庫スペックに対する、お客様からのご不満の声や、物流案件の取りこぼしなどが続きました。
そのため、千坪単位で倉庫を探したものの、未だ結果には結びついていません。
旺盛な倉庫需要は、続いているという証でしょう。
 
トラックドライバー不足と働き方改革への対応のため、倉庫の需要は、全国的に高まっています。
2019年から2020年にかけては、開発型倉庫が数百万坪単位で竣工する見込みです。
倉庫業務における生産性向上こそが、物流改革のキーポイントであることを、多くの企業が認識し始めている、もしくは既に認識しているのでしょう。
 
これが、物流不動産ビジネスにおける今後の伸びしろであり、可能性ではないでしょうか。
当社でも、物流不動産ビジネスから情報を収集し、このチャンスを積極的に活かすつもりです。
 
物流不動産は、社会のボトルネックとなりつつある物流危機における解決策のひとつとなりうるのですから。
 
私は、物流不動産の可能性を信じ、2020年も活動していきたいと考えています。
 
 
 

秋元運輸倉庫常務 鈴木清

秋元運輸倉庫常務 鈴木清


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