秋元通信

「事故を減らせない理由」、部分最適化と全体最適化の話

  • 2020.3.19

「事故が減らせない!」って悩んでいる会社、多いと思います。
人のことはあまり言えませんが、倉庫にせよ、運送にせよ、もしくは、商品事故にせよ、車両事故にせよ…
 
今回は、事故が減らせない理由のひとつとして、部分最適化と全体最適化を考えてみましょう。
 
 

なぜ、同じような事故が起こるのか?

 
これは、私が耳にしたエピソードですが。
 
商業施設のバースに入ろうとしたトラックが、高さ制限をきちんと確認せず、施設の天井にトラックのコンテナを擦ってしまったことがありました。
やらかしたドライバーは、同社ではベテランの域に入るドライバーだったのですが、うっかりして、高さ制限表示をちゃんと見ていなかったとのこと。
 
これは、配送先の軒先条件をちゃんと確認せず、高さ制限に引っかかる車両を配車した配車マンにも責任があるのですが…
 
ところがその一ヶ月ほど後、別のドライバーが事故を起こしました。
道路側にはみ出し設置されていた、商店の看板を引っ掛け、破損したのです。
 
後の事故をやらかしたドライバーは、このように言い訳しました。
 
「いや…だって、看板には、高さ制限の表示がなかったし」
 
 
別のエピソードです。
 
パレ積みの荷物で、落下事故が発生しました。積み上げていた荷物のひとつが、フォークリフトで荷役している最中に落下したのです。
そこで、その会社は事故対策として、ラップを巻くことを徹底させました。
 
どうなったと思いますか?
 
今度は、ラップで巻いた荷物全体ごと落下させる事故が発生したのです。
 
 
どちらも同じような事故が、連続して発生した事例です。
なぜ、このようなことが起きたのでしょうか?
 
 

事故対策の目的をもう一度考える。

 
後者のパレ積み事故を例に考えましょう。
 
最初の事故(パレ積み荷物の落下事故)のときに、同社が立てた事故対策は、「ラップ巻きの徹底」でした。
これは、事故対策としては有りですが、事故分析としてはNGです。
 

  1. 作業の標準化の課題
    同社はラップを使っていなかったわけではない。ただし、「面倒くさいから」「この荷物は大丈夫だろう」といった、現場作業員による勝手な判断が横行していた。
  2. 作業スキルの課題
    落下事故の直接の原因は、フォークリフトのオペレーションにおいて、作業手順の不備(探りやチルトの徹底など)や、作業品質の不備(速度超過など)があったため。

極端な例ですが。
どんなに頑丈にラップ巻きしたところで、時速20kmで走行し、急停車をすれば荷物は落下するわけです。
 
同社では、ラップ巻きを徹底させようとしましたが、フォークリフトを使った荷役作業において、どんな事故が発生しうるのか、安全に荷役作業を行うためには、どのようにしたら良いのか、その教育は行っていませんでした。
 
考えさせなかったわけですね、作業員に…
 
事故発生時、対策だけを重視し、原因の分析をサボると、このようなことが発生します。
 
 

部分最適化と全体最適化を考える

 
部分最適化とは、一連のプロセスにおいて、ある一部のプロセスだけにフォーカスし、最適化することを指します。
 
全体最適化とは、プロセス全体の最適化を指します。
 
企業全体の経営を考えた時、部分最適化と全体最適化は、以下のように分類されます。
 

  • 部分最適化の例
    - 経理システムを導入する。
    - 配車システムを導入する。
    - 給与体系を見直す。
    - 育児休暇制度を導入する。
  • 全体最適化の例
    - 企業理念を見直す。
    - 経営ビジョンを立案する。

断言しますが、部分最適化と全体最適化のどちらが良いか?、どちらが優れているのか?という議論は無意味です。
結局、どちらもやらなければならないわけですから。
取り組む順番や優先度を図ることは必要ですが。
 
少し話がずれます。
コンサルタントの中には、これを混同している方が結構います。
 
例えば、IT系のコンサルタントの中には、「SFA(セールスフォースアプリケーション)を導入すれば、あなたの会社の課題がすべて解決します!」と断言する人がいます。
 
また、経験を積んだ老獪なコンサルタントの中には、「全体最適化こそが絶対正義である」と主張して恥じない方もいらっしゃいます。
 
暴言かも知れませんが、全体最適化は理想であり、部分最適化は都合ではないでしょうか。
問題は、それがコンサルタントにおけるビジネス上の「理想」であり「都合」だったりするケースですね。
さらに補足すると、部分最適化における「都合」とは、ビジネススピードであったり、改善に割ける工数であったり、もしくはコンサルタント側のビジネス上のシナリオだったりします。
 
 

大切なのは、同時に、バランス良く行うこと

 
部分最適化を繰り返していくと、いつかは全体最適化につながるという考え方があります。
これも間違いではないでしょうか。
 
先の事故対策エピソード(パレ積みのケース)に戻ると、これはパレ積みの荷物だから発生したケースです。例えば、新たに手積み手卸しの仕事や、カゴ台車を引く仕事を始めたらどうでしょうか?
 
世の中に存在するすべての事故ケースを押さえるなんてことは、不可能です。
そもそも、100も200も事故対策を立案したところで、当事者(ドライバーやフォークマン)たちは覚えきれないでしょう。
それよりも、事故が発生する仕組み(原因と発生過程)を学ばせ、現場ごとに、「ここではどんな事故が発生する可能性があるだろう?」と考えさせるほうが、カバーできる範囲は広くなります。
 
ここでは、部分最適化を事故対策、全体最適化を学習として話していますが。
 
全体最適化には、時間がかかります。また、(誤解を恐れずに言えば)退屈です。全体最適化は難しいので、理解には個人差が発生するでしょう。
 
対して、部分最適化は短時間で身につけられ、また比較的易しいというメリットがあります。
 
物流業界において、事故が減らせない企業というのは、部分最適化だけを行っているケースが多いのではないでしょうか。
まあ、荷主さんが突っ込んでくるのも、対策の是非が中心でしょうからね…
 
部分最適化と全体最適化が事故対策の全てではありませんが。
もし、事故削減に悩んでいる方がいらっしゃったら、自社でこれまで行ってきたのが、部分最適化なのか、それとも全体最適化なのかを分析し、アプローチを変えるのも手でしょう。
 
ぜひ、ご検討ください。
 
 
 


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