秋元通信

IT化の遅れが、致命的な経営リスクに!? 「2025年の壁」問題とは

  • 2020.5.29

筆者が子供の頃、自宅の電話は黒電話でした。
やがて、Fax付きの電話、子機付きの電話などが家庭にも普及し始めたものの、私の自宅では依然として黒電話を使い続けていました。
 
高校生になり、大学生になり、親に聞かれたくないような電話をする時も、居間の一角にある黒電話を使わなくてはならず…
「コードレス子機付きの電話が欲しいなぁ」と思いつつ、私がコードレス子機付きの電話を手に入れたのは、結局、社会人になり、一人暮らしを始めてからでした。
 
 
日本で初めての電話サービスが開始されたのが、1890年(明治23年)。
黒電話が登場したのが、1933年(昭和8年)。
NTTが発足し、黒電話以外の電話機が普及し始めたのが、1985年(昭和60年)。
 
一方、携帯電話が一般にも普及を拡大したのは、1990年代後半のこと。ちなみに、今では当たり前の、カラー液晶を搭載した携帯電話端末(シャープ)が初登場したのが、1999年のことでした。
以降、携帯電話は、高機能化&多機能化を続け、スマートフォンに至ります。
 
 
電話サービス開始から携帯電話までは100年近くかかったのに、その後の20年で、電話は飛躍的な進化を遂げました。
 
なにせ、当社の新入社員などは、固定電話を使った経験がない者もいます。
固定電話の使い方から、新入社員教育を行う時代ですよ、今は…
 
 
前置きが長くなりました。
時代は加速度的に進化を遂げ、社会は大きく変わり続けています。
IT化もデジタル化も、もはや待ったなしの状態であり、取り残された企業は、衰退を余儀なくされかねない時代に突入しています。
 
こういった状況に、経済産業省は、「2025年の壁」というキーワードを用いて、強い警鐘を発しています。
 
今回は、「2025年の壁」問題を考えましょう。
 
 
 

「DX」(デジタル・トランスフォーメーション)とは?

 
「2025年の壁」を説明する前に、確認していただきたいキーワードがあります。
それが「DX」(デジタルトランスフォーメーション / Digital Transformation)です。
 
 
DXとは、なんでしょうか?
 
経済産業省が発表した、『産業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について』では、以下のように説明しています。
 

『企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること』
 
出典:『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(本文)』3ページ

 
何を言っているのか、よく分からないと言うか…。
とりあえず、最後の『変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること』の部分だけ、注目すれば、まずは良いかと存じます。
 
 
もともと、DXという言葉が生まれた当時(2004年)は、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」(DXの提唱者であるとされるスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマン氏の言葉)という、誤解を恐れずに言ってしまえば、「ITって、人の生活を豊かにするよね」程度の言葉でした。
漠然とした未来を予想する言葉が、DXに関する説明でした。
 
ところが、最近になってキーワード:DXが使われるときには、「デジタル化、IT化の競争に負けちゃダメだぞ!」という危機感とともに語られるケースが多くなってきました。
その典型が、経済産業省のレポートかもしれません。
 
 
ちなみに、「エコシステム」とは、生物学で使われる生態系のこと。
転じて、ビジネス上の文脈で使われる場合には、直接的な関係、間接的な関係を問わず、企業やビジネスが存在している環境や関係者すべてを指しています。
 
 

なぜ今、経済産業省は、DXを訴えるのか?

 
簡単に言えば、「このままではマズイよ!」という危機感から、経済産業省は、DXの推進と必要性を訴えています。
 
 
「デジタルデバイド」というキーワードをご存知でしょうか。
デバイド(divide)は、「分ける」とか「分割する」を意味する英語です。
 
デジタルデバイドは、2000年頃に提唱された概念です。簡単に言ってしまうと、コンピューターやPDA(※現在で言うところのスマートフォンに近い携帯端末)を保有し、IT技術を使いこなす人たちと、そうではない人たちの間に、深刻な貧富の差、社会的地位の差などが生じることです。ひいてはその差が、地域や国家の格差にもつながるという警鐘も行われました。
 
 
DXは、企業間にも深刻なデジタルデバイドを生じさせます。
 
例えば、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)は、高度で巨大なIT技術を持ち、国境を超えて世界に君臨しています。
GAFAは、わずか10年20年の短期間で、巨大すぎる企業へと成長を遂げたのです。
 
IT、デジタルといった技術は、GAFAの例を挙げるまでもなく、私たちの生活に欠かせないものとなりました。
今後、その影響力は、拡大することはあっても、縮小することはないでしょう。
言い方を変えれば、DXは、今後さらに重要性を増していきます。
 
DXは、企業の生き残りを考える上で、大きなキーファクターのひとつとなる可能性があるのです。
 
 
 

「2025年の壁」とは?

 
経済産業省のレポートでは、日本経済が、DXを活用し勝ち組となるのか、それとも負け組へと転落していくのか、運命の分かれ道となるのが2025年であるとしています。
 
その根拠として挙げているのは、以下です。
 

  • 企業で利用中の基幹システムのうち、構築後21年以上経過するものが6割を超えるのが、2025年である。
  • SEなど、IT人材の人材不足が、約43万人を超え、大きな社会課題となるのが2025年である。
    (システム開発はもとより、保守運用においても、SEの人材不足を理由に適切なサービスを受けることができないエンドユーザー企業が発生する懸念がある)

 
その他にも、多くの日本企業が利用するSAP ERPのサポート終了、ビッグデータ・マーケットの隆盛などが、理由として挙がっています。
 
例えば、IBMが生んだオフコンの名機AS400(iSeries/System i)は、10年以上前に構築した基幹システムも、平然と稼働させます。箱(サーバ)はリプレイスしても、基幹システムはそのままで良いのです。
 
こういった過去の遺産的な既存システムは、ブラックボックス化します。
心当たりがある読者の皆さまも、いらっしゃるのではないですか?
ブラックボックス化した既存システム(レガシーシステム)は、DXを推進する際のお荷物となるだけでなく、今後、経済的なお荷物にもなっていきます。
 

  • IT人材の人材不足によって、維持管理コストが高騰すること。
  • COBOLなど、旧時代のプログラム技術者は年々減少しており、コストの問題ではなく、物理的に運用保守、改修などを行うことができない時代が訪れ始めていること。

 
「2025年の壁が来る前に、企業としてDXが加速する時代の変化にきちんと対応しましょうよ」
 
経済産業省の試算では、「2025年の壁」問題をクリアできない場合、2025年以降、最大12兆円/年の損失が見込まれるとのこと。
 
年間12兆円ですからね。
経済産業省が、必死に警鐘を鳴らすのも理解できます。
 
 
 

システムの意味を、もう一度振り返ろう

 

「そうしたいのはやまやまなんだけど…。うちの基幹システムの都合上、その処理はできないんですよ…」

 
社内外を問わず、新しい取り組み、新しいビジネスなどを開始する際に、ビジネスプロセスを議論していて、よく聞く言葉です。
 
ビジネスプロセスを絶対正義とするわけにはいきませんし、そもそも、そのビジネスプロセスが正しいとも限らないわけですから、一概にシステムを悪者にすることはできませんが。
でも、こんな会話が度々登場するのであれば、そのシステムには、何かしらの問題があるのでしょう。
 
「システム」(system)とは、「制度」や「方式」、「組織」「機構」などを表す言葉です。
プログラム装置=「システム」は、「システム」という言葉が持つ複数の意味のひとつでしかありません。
 
今の時代、10年の20年も前のやり方が通じますか?
もちろん通じるものもあるでしょう。しかし、通じないものも多いことでしょう。
 
時が経ち、通じなくなったやり方は、変えるべきですし、変える以外に有効な対策はありません。
 
ここで言う、「やり方」とは、基幹システムであり、商慣習であり、企業が抱えている、人や文化なども含むものです。
そう、まさに広い意味での「システム」です。
 
考えてみれば、経済産業省が、「2025年の壁」として発した危機感は、当たり前のことなのかもしれませんね。
 
「変わらないということは、現状維持ではなく、退化である」
 
我が身に顧みて、2025年問題を考えるきっかけに、本記事がお役に立てれば幸いです。
 
 
 
 

参考

 
日本で電話が生まれて150年 黒電話や公衆電話など『電話の歴史』を振り返る
https://time-space.kddi.com/it-technology/20191023/2765
 
ガラケーはどう進化してきたのか – シャープ20年のケータイの歴史を振り返る
https://news.mynavi.jp/article/20150124-galapagos/
 
経済産業省が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か?
https://www.softbank.jp/biz/future_stride/entry/column/20200226/
 
 
 


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