秋元通信

一般企業にプログラマー社員は必要なのか? 【企業とデジタル人材 / 後編】

  • 2020.9.16

※前編記事はこちらから
 
 
私が初めてPCに触れたのは、26歳の頃です。
それまでは、トラックドライバーでしたから、PCに接する機会もなかったのです。
 
今考えると、性に合っていたのでしょうね。
28歳の頃には、ExcelVBAを独学し、かんたんなプログラムならば書けるようになっていました。当時、私は量販店向けに携帯電話を卸す代理店部門に所属しており、売上集計を手作業でやるのが面倒くさくて、VBAを学んだのです。
 
その後、VBAを始め、いくつかのプログラムを覚えていきました。いずれも営業職だった頃です。他の人が、事務処理に忙殺されている中、私は、VBAなどを用いて事務処理業務を効率化し、営業成績を上げていきました。
 
特にVBAのスキルに関しては、それなりのレベルに達しているものと、自負していました。が、数年前、そのプライドは、打ち砕かれます。
きっかけは、自分で使うVBAではなく、他社から依頼を受けて、VBAを開発し始めたことでした。
 
分かっていたつもりではありましたが。
自分で使うプログラムを制作することと、他人が使うプログラムを制作することの間には、大きな違いがあります。あらためてVBAを勉強し直しながら、「ああ、井の中の蛙だったんだな…」と何度も自分のうぬぼれを恥じたことを思い出します。
 
 
 

一般企業において、プログラマーが不要な理由

 
一般企業において、プログラマー人材が不要な理由はなんでしょうか?
理由は、大きくふたつあります。
 
ひとつは、一般企業では、優れたプログラマーを育成するのは、限りなく困難だからです。
 
プログラミング能力は、筋肉トレーニングのようなものです。
数をこなすほど、そして難易度の高いプログラミングをこなすほど、プログラミング能力は高まっていきます。逆に言えば、一般企業で内制する程度のプログラミングでは、それほど高いプログラミング能力は求められません。だから、一般企業では、優れたプログラマーを育成するのは困難ですし、仮に優れたプログラマーを採用したとしても、やがてプログラミング能力は低下してしまいます。
 
 
もうひとつは、スキルの最新性です。
IT技術は、日々進化しています。これはプログラミングも同様です。極論、最新の技術を備えているのは、学校を出たての新人だったりする分野もあります。
一般企業でプログラマーを採用しても、最新技術を常に磨かせること、学ばせることは、はっきり言って無理です。お金と時間もかかりますし、そもそもこの課題は、システム開発会社だって頭を悩ませるところなのですから。
確かに、一般企業において内制対象となるプログラムなどは、最新の技術を必要としないケースもあるでしょう。しかし、どんなプログラムをいずれ古くなり、陳腐化します。
 
そうなったら、新技術に対応できない、自社プログラマーは、邪魔なだけです。
もっと最悪なのは、「自社プログラマーが対応できる、古いプログラムをいつまでも使い続ける」ケースです。こうなると、自社プログラマーの存在そのものが、業務改善のボトルネックとなってしまいます。
 
こういう会社も、間々お見受けしますけれども。
 
 
 

プログラマーは、外部人材に求めるべき

 
パッケージ化されたシステムだけで業務を行っていれば、自社プログラマーの是非など問う必要もありません。
しかし、SAPなどのERP、業務系システムやRPAはもちろん、KintoneやG Suite、Notes/Dominoなど、プログラミング、もしくはプログラミングとは呼べないものの、でも素人には難しいセッティングが必要なシステム/アプリケーションを利用している企業も多いことでしょう。
 
例えば、自社社員でも1時間2時間程度でできる程度のプログラミング(※以下、プログラミング未満のセッティング等含めて、「プログラミング」と表記します)であれば、ともかく。
それ以上の工数がかかるようであれば、外部の専門人材に任せたほうが、結果的に生産性を高め、結果についても満足できるものが得られる可能性が高いです。
 
以前、ギグワーカーについて、取り上げました。
 
→ 「人材不足解消の打開策!? 『ギグワーカー』とは?」
 
最近では、単発で仕事を外注できる斡旋サイトやサービスも充実しています。
もちろん、該当するシステムの開発会社、代理店などに依頼してもOKですが、世の中には、フリーランス、ギグワーカーとして、高いスキルを持った人材がたくさんいます。
社内で内制するよりも、こういった人材を見つけ、必要に応じ仕事を外注したほうが、はるかに生産性は高まることでしょう。
 
「でも、社内システムの修正や変更を依頼するのに、外注に頼っていたら、こまめな対応ができないですよね?」
 
基本的にはそうですね。
こまめな対応ができるかどうかは、相手次第でもありますが。でも、その前に考えるべきなのは、その修正なり変更が、本当に必要なのかどうかです。
 
「この画面の、このボタンの位置が気になるから、ちょっと右にずらして欲しい」
 
極端な例ではありますが、この修正を行ったところで、生産性は、どれほど上がるのでしょうか?
社内に、そのプログラムを修正/変更できる人材がいるから、気楽に、(もっと厳しい言い方をすれば)たいした考えもなしに、ホイホイと依頼していませんか?
もしそうだとしたら、それは社内リソースの無駄遣いでしかありません。改めるべきです。
 
もちろん、外部リソースを利用することには、リスクもあります。
情報流出などのセキュリティもそうです。一番の懸念は、「本当に適切な人材が見つかるのかどうか?」かもしれませんね。
 
 
 

人材を活かすも殺すも、マネージメント次第

 
「これ、やっといて!」
 
相手が部下であれば、あえてこういう言葉を発するケースもあるでしょう。
具体的な指示を出さず、あえてファジーな指示を出すことで、部下が自分自身で考え、行動することも期待できます。
手取り足取りの指示を行うと、指示待ち型になってしまう(もしくは、「指示待ち型の関係性」になってしまう)危惧もあります。
 
ただし、外部人材を使う場合は、これはNGです。
まず、第一に認識すべきは、外部人材は単なるツールに過ぎないことです。道義的には問題がある認識ではありますが、これを正しく理解し、実践しないと、外部人材/外部リソースを十分に活用することができなくなります。
 
外部人材は、ハサミのようなものです。
よく切れるハサミも、使い方が悪ければ、なまくらになってしまいますし、逆もしかりです。
外部人材に仕事を依頼する際には、具体的に指示を出し、その人がもっとも高いアウトプットを実現できるように、十二分に配慮すべきです。
 
逆に言えば、外部人材/外部リソースを十分に活用するためには、しっかりとしたマネージメントを行うことができる、社内人材が必要です。
 
これが、今回のテーマであるデジタル人材です。
 
 
 

業務を自動化しても、肝心の社員が成長しない!?

 
ある会社では、RPAを用いて請求業務を自動化tました。
同社が月に処理する請求書は、400通ほど。月末月初にかけて、請求担当者は数十時間の工数をかけていました。
この請求業務をRPA化した結果、請求業務は、月にわずか数分で完了するようになりました。
 
しかし、このRPA化によって、会社が受けた恩恵は、請求担当者の残業時間が減っただけでした。厳密に言えば、請求業務の正確性が上がったり、属人化を脱却できたりといった恩恵はあったのですが、これらは会社が求めた、本当の恩恵ではありません。
 
会社は、RPAによって請求業務を自動化することをきっかけに、請求業務プロセスそのものをより生産性の高いものへと変革させることを期待していました。
そして、その牽引役を、請求担当者が担うことを期待していたのですが。
 
当の請求担当者は、実務従事者である自分、言い換えれば作業者である自分から脱却できなかったのです。当人は、残業が減って、仕事が楽になったので喜んでいます。
 
「私は、請求担当者を喜ばせるために、RPAに投資したわけではないのですが…」
 
これは、同社社長が私に語ったボヤキです。
 
デジタル化は実現できたけれども、デジタル人材は育成できていない。
同社が直面したこの課題は、今後、多くの企業において顕在化していくことでしょう。
 
 
 

企業が求めるべきデジタル人材とは?

 
一般企業で求められるデジタル人材に求めるべき素養を挙げると、以下のようになるでしょうか。
 

  • システム調達能力
    プロジェクト推進に必要なシステム、アプリケーション、ITサービスなどを評価し、自社にとって最適なものを選択できる調達能力。
  •  

  • 人材マネジメント能力
    プログラミング人材など、自社のプロジェクトに必要な人材を調達し、また能力を最大化できるようにマネジメントできる能力。
  •  

  • プロジェクト管理能力
    プロジェクトの進行管理を行う、PM(プロジェクトマネージャー)としての能力。
    ただし、ここで言う「プロジェクト管理能力」には、システム開発におけるものとは少し異なり、プロジェクト遂行のために必要な、社内根回しなどの交渉能力も重要視される。
  •  

  • コンサルティング能力
    課題を分析し、適切な改善策を立案できる、問題解決能力。

 
 
でも、ここに挙げた要素って、別にデジタル人材に限った話ではありません。
おそらく、これからの企業に求められる人材って、このような素養なのでしょう。
 
以前、私はこのように書きました。
 

“「より創造的で価値のある仕事」とは、より高い知見を必要とする仕事です。より難しい仕事をしないと、RPAやAIに仕事を奪われて終わりです。”
 

 
たぶん…、でも間違いなく、世にある仕事は、手足を動かす「作業者」と、人を動かし、仕組みを創る、価値創出型の仕事に二極化していきます。もちろん、これまでもこの傾向はあったのですが、より二極化が加速するイメージです。
 
先に挙げたデジタル人材の素養は、ハードルが高いでしょうね。
現在の感覚だと、こういった人材を育成、もしくはリクルーティングすることは、簡単ではありません。
 
でも、企業は、それに立ち向かわなければならないし、雇われる側であるサラリーマンらも、「より創造的で価値のある仕事」ができるように、成長しなければなりません。
 
でなければ、RPAやAIに仕事を奪われて終わりです。
そういった時代は、おそらく多くの人が想像する以上に、身近に近づいてきているからです。
 
 
 

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