新型コロナウイルスは、私たちの生活を大きく変えました。
ただし、「変わったもの(こと)」のすべてが、悪いことばかりではありません。テレワークは、どちらかと言えば、良い方向に変わった例のひとつではないでしょうか。
今回は、新型コロナウイルスを期に、普及が進んだテレワークに関し、考えてみましょう。
ここからは、いくつかのアンケートを紐解きながら、実際にテレワークを行っている皆さんが、何を感じているのか、紐解いていきましょう。
民間調査会社が行ったアンケート(※1)では、現在テレワークを行っている人のうち、4人に1人が、「今後もテレワークを継続したい」と答えています。
テレワークと言うと、自宅での勤務を想像する方が多いかもしれませんが、同アンケートでは、28%の方がコワーキングスペースを利用しています。
コワーキングスペースを選択した理由は、ほぼ同率で以下が並びます。
- 適度な緊張感があり集中できる(67%)
- オンオフのメリハリがつけやすい(66%)
- 仕事に適した机や椅子がある(65%)
- 通信などの設備が完備されている(64%)
仕事環境については、テレワークにおける不満の原因になりがちなのでしょう。
KDDIが行ったアンケート(※2)でも、テレワークのデメリットとして、ネットワーク環境への不満が挙げられています(38.8%)。
しかし、もっとも高い不満は、「同僚との何気ないコミュニケーションが取りにくい」(46.8%)でした。
コミュニケーションに関する課題は、エン転職が行ったアンケート(※3)でも指摘されています。
テレワークによって、「コミュニケーションが変化した」と回答した方は、66%にのぼりました。その内容を診ると、「コミュニケーションの総量が減った」と回答した方が60%、「コミュニケーションがほぼなくなった」と回答した方が16%存在する反面、「多くの人とコミュニケーションを取るようになった」(13%)、「コミュニケーションを取りやすくなった」(10%)という方もいます。(※複数回答可)
つまり、テレワーク実施によるコミュニケーションの変化は、決してネガティブな要素ばかりではないと考えられます。
インフォーマルコミュニケーションとは、業務上の必要事項以外に関する会話、つまりは雑談のことを指します。
インフォーマルコミュニケーションについては、「会社は遊びの場ではない!」などと否定する人もいますが、職場における人間関係を円滑にする潤滑剤のような役目を果たす要素として、再評価もされています。
前述の「同僚との何気ないコミュニケーションが取りにくい」(KDDIアンケート)のように、テレワークに移行すると、インフォーマルコミュニケーションは低下することは、ある程度やむを得ないのかもしれません。
一方で、テレワークの実施に伴うインフォーマルコミュニケーション低下を解消する工夫をしている会社もあります。
今年になって行われたGoogleのセミナーでは、興味深い工夫が紹介されていました。
- Googleにおける、社員同士のオンラインミーティングでは、最初の10分間は仕事の話をしない。
- オンラインミーティング参加者は、自室の様子を隠さないことが推奨されている。むしろ、オンラインミーティング中の背景に写し込むことで、人間らしいコミュニケーションが促進できると考えている。
- 同様の理由で、子供やペットのオンラインミーティングへの乱入は大歓迎。
昨年末に上場した、あるベンチャー企業では、雑談用のチャットルームを常に開設しているそうです。息抜きをしたい人は、そのチャットルームを覗くことで、仲間とインフォーマルコミュニケーションを好きなタイミングで取ることができます。
テレワークに関し、社員の孤立化を深め、またコミュニケーション断絶を懸念する方はいらっしゃいます。ですが、それも工夫次第で解消可能なのです。
これも、「テレワークあるある」かもしれませんね。
テレワークとサボりの関係を調べたアンケートがありました(※4)。
- 20代の約2人に1人、30代以上の約3人に1人が「テレワーク時、サボっていると思われるストレス」を実感している。
- 年齢の高い人ほど、テレワークをしている同僚や部下に対し、「サボっているのでは?」という疑念を抱く傾向がある。
- 「テレワークのほうがサボってしまう」と答えた人の割合は、20代:66.5%、30代:50.8%、40代:44.3%、50代以上:42.4%と、若い人ほど多い。
私が以前勤めていた会社は、総務省が指定したテレワークモデル企業でした。
その経験を踏まえ、テレワークとサボりの関係を申し上げましょう。
よく、「テレワークだろうが、オフィス出勤しようが、サボる奴はサボるんだ!」とおっしゃる方がいます。しかし、これは半分正解で、半分間違いだと、私は経験上感じています。
実際には、テレワークのほうがサボらずに、効率よく働く人がいます。
もっと言えば、テレワークだと生産性が高いのに、オフィス出勤すると生産性が下がる人(≒サボる人)もいました。
結局、これって個性なんですよ。
例えば営業でも、ルートセールスが得意な人と、飛び込み営業が得意な人がいます。同じように、働く環境や方法によって、能力や成果に差がつくのは当たり前なのです。
ただし、ことを組織論やマネージメント手法から考えると、組織や上司がテレワークという新しい働き方に対応できていないがために、全体の生産性を下げてしまっているケースもあると、私は考えています。
- テレワークに対する不満(机や椅子、通信環境など)を並べ立て、オフィスと同じ環境/条件が備えられなければ、作業効率が下がると不満を言い続ける、困った社員。
- 部下や仲間のことが信じられず、「テレワーク中は、常にカメラをONにして、グループチャットに接続すること」を強いる、サボり監視行き過ぎな会社。
- 思いつきで指示やら進捗確認をする悪癖を解消できず、常にチームの誰かに電話やらチャットをし続ける、残念な部長。
- 役割分担が不明確で、かつ課長や部長も、誰がいつどんな仕事をしているのかをマネジメントしてこなかったがゆえに、テレワークになった途端に、仕事の漏れ、抜け、放置などが多発する、組織管理能力が低すぎる部署。
- 50名以上でオンライン会議を行うも、やり方を変えることをできず、各人の近況報告だけで1~2時間を費やしてしまう、非効率な会議。
同じ空間にいて、一緒に仕事をしていれば、なんとなくごまかせることもたくさんあります。
それは、社員一人ひとりのスキルであったり、ライン職のマネジメント能力だったり、もしくは企業文化に所以するケースもありますが。
テレワークという、制限のある環境に移行した途端に、こういった「ごまかし」は、効かなくなります。ですが、こういった「ごまかし」は、例えば働き方改革を進めていけば、いずれ顕在化するものです。
テレワークに向く人、向かない人というのは、確かに存在します。
しかしそれ以前に、テレワークに不満を感じる人や、テレワークで生産性を下げてしまう組織というのは、通信環境やテレワーク用PCなどのインフラ面と、「ごまかし」の日常化のようなソフト面のどちらか、もしくは両方に問題を抱えているケースが多いのではないでしょうか。
東京商工会議所が行ったアンケート(※6)では、テレワーク実施の効果として、以下が挙げられています。
- 働き方改革が進んだ(50.1%)
- 業務プロセスの見直しができた(42.3%)
- 定型業務の生産性が上がった(17.0%)
テレワークに限らず、新たな取り組みにチャレンジすることは、勇気と痛みを伴います。人は、どうしてもこれまでのやり方を正しいものと信じたがる傾向を持つため、新たなチャレンジには及び腰になりがちです。
ですが、もしかすると、テレワークはきっかけになるかもしれませんよ。
あなたの仕事能力を向上させ、組織や会社の生産性向上へと導くきっかけとして。
※1 新型コロナウイルス禍のテレワークアンケート(株式会社WOOC)
※2 KDDI
※3 テレワークにおける社員コミュニケーション (エン転職)
※4 テレワークと“サボり”の関係性に関するアンケート調査(ヌーラボ)
※5 テレワークの実施状況に関する緊急アンケート(東京商工会議所)