秋元通信

鈴木清が振り返る2020年 変わる勇気

  • 2020.12.28

こんにちは。
秋元運輸倉庫 常務取締役、そしてイーカーゴ代表取締役の鈴木です。
 
2020年を振り返る時、新型コロナウイルスの影響は、避けて通れません。読者の皆さまも、さまざまな点で、新型コロナウイルスに悩まされたのではないでしょうか。
 
新型コロナウイルスは、企業、そして業界の業績に、大きな影響を与えました。
例えば、建築業界です。5月頃には、大手ゼネコンが次々と現場の工事中止を決定しました。当社第一事業部は、セメントを取り扱っていますので、業績には影響が出ています。
 
一方、第二事業部については、比較的好調に業績は推移しました。
第二事業部では、原料系から日用消費財まで、幅広い商品を取り扱っています。もちろん、動きが落ち込んだ商品もありますが、巣ごもり需要にはまった商品は、好調に動きました。
 
他社の動向等もお聞きしていると、物流業界の業績は二極化したようですね。
例えば、紙系の物流については、テレワークの浸透とともに、ペーパーレス化が加速。電子書籍の台頭などにより、もともと縮小を懸念されていた業界に、さらに打撃を与えたようです。
一方、建築業界の中でも、戸建てやリフォーム需要は好調であり、したがって、建材でも、水回り(トイレ、バス、シンク、台所など)や内装材などの配送を請け負っている運送会社は、概ね好調であったと聞いています。
 
そして、新型コロナウイルス禍にあっても、圧倒的な存在感を発揮したのは、EC物流です。
 
 
 

EC各社が目指す、物流の自前化

 
新型コロナウイルス禍においても、業績が向上した物流企業の中には、EC物流に関わっていた会社が多く含まれるのではないでしょうか。
現在、Amazonを筆頭に、EC各社が行っている投資額はとても大きいです。以前から拡大していたECビジネスが、新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要等をきっかけに、さらに活況を呈しました。
投資が増加するのも、当然でしょうね。
 
EC各社は、自前物流の構築に乗り出しています。
Amazonが軽貨物の個人委託を行っているAmazon Flex。ヨドバシ・ドット・コムも、徹底して自社物流にこだわっています。
 
ただ、留意すべきは、EC各社が望む自社物流とは、イコール自社社員、イコール自社トラックではないということです。
 
ビジネススキームを考えたら、EC各社が自社社員、自社トラックで配送網を築くよりも、自分の手足となって動いてくれる運送会社を囲い込んだほうが現実的であることは明確です。
 
私ども運送会社の立場から考えると、EC各社に囲い込まれるかどうかは、大きな経営判断でしょう。囲い込まれれば、本当に手足として使い倒される可能性があります。そうなれば、自社の特色や競合他社との競争力などは、次第に薄れていく可能性もあります。
 
物流企業としての独立性を保ち、競合他社との差別化を示す武器を磨くことは、EC各社の自前物流に組み込まれてしまうと、難しくなるのではないでしょうか。
 
 
とは言え、倉庫会社として考えても、運送会社として考えても、ECビジネスに対する参入障壁は高いです。ECビジネスで求められるさまざまなスキルは、当社も含め、すべての会社が、おいそれとできるものではありません。
 
当社に限らず、すべての物流企業は、何かしらBtoCに関わる仕事をしないと、今後は難しいとは思うのですが。ECビジネスへの参入や、個人宅配送など、これまでBtoBを中心に行ってきた物流企業にとっては、悩ましいところですね。
 
 
 

「協働」の必要性

 
当社では今年3月、大井ふ頭(東京都大田区)に、「協働物流センター大井」と名付けた新しい物流センターを開設しました。
 
「共同」ではなく、「協働」と名前をつけたのは、かねてから考えている、物流協働体構想を加速させるためです。
 
世の運送会社、倉庫会社は、それぞれ特色を持っています。
個人宅配送に強みを持っている運送会社もあれば、EC受託に強みを持っている倉庫会社もあるでしょう。
 
それぞれ違う強みを持つ物流企業が、お互いの強みと弱みを補完し合うことで、事業の幅を広げること。
これからは、こういった取り組みにチャレンジできるかどうかが、物流業界の活性化につながるものと考えています。
 
世間では異業種交流会が盛んなようですが、異なる強みを持つ物流企業同士は、ある意味異業種と言えます。物流業界に限定した、良い意味で「狭い」異業種交流会によって、共に歩むことのできる、つまり物流協働体のパートナーを探すことが必要だと考えています。
 
 
 

今こそ、「変わる勇気」を持つべき時

 
物流業界って、よく他業界に比べて遅れていると言われます。
IT化もそうですし、働き方改革における時間外労働上限規制から、建設、医師とともに、トラックドライバーが2024年まで適用を猶予されたことも、その一例でしょう。
 
ただし今、もっとも変化へのスピードが求められているのは、物流業界かもしれません。少なくとも、私はそう考えています。
今までの仕事、そして仕事のやり方にしがみつきたくなる気持ちは、とても理解できます。ただ、結果として変化することを拒んでいたら、もはや会社が保たなくなるのではありませんか?
変化を拒み続ければ、例えばEC各社の手足となって働くように、考えることも変化することも難しくなってしまう道しか残されていないのかもしれません。
 
繰り返しますが、「今」にしがみつき、保守的になる気持ちは、よく分かります。
でも、その先にあるのは、変わりたくとも変わることができない、つまり自らの運命を、他人任せにする選択肢しか選ぶことしかできない道かもしれません。
 
だからこそ今、変える勇気を持つことが必要なのだと、私は考えています。
 
 
2021年は、前向きな一年となることを心より願います。
TOKYO2020も、無事開催されることを期待したいです。
 
2021年も、よろしくお願い申し上げます。
 
 
 


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