秋元通信

集中力を向上させる方法

  • 2021.3.25

集中力_アイキャッチ
 
 
最近、話題の昇降式のデスクを購入しました。
と言っても、机全体が昇降する本格的なものではなく、机の上に置く、昇降台タイプを自宅のデスクに乗せただけですが。
 
運動不足の解消や、腰痛の予防など、さまざまな効果が話題となっている昇降式デスクですが、私がもっとも期待したのは、集中力の向上です。実際使ってみると、座り続けているよりも、頭がスッキリとし、また眠気にも襲われにくい気がします。座って仕事をする時間、立って仕事をする時間を切り替えながら行うと、とても良い感じです。
 
新型コロナウイルス禍の影響により、在宅ワークをする方も増えていることでしょう。
しかし、在宅ワークでは、オフィスに比べて集中ができない(しにくい)といった課題を感じている方も多いようです。
 
今回は、集中力を向上させる方法について、考えます。
 
 
 

眠気と集中力に関係する、サーカディアンリズムとウルトラディアンリズム

 
体内時計の存在は、広く知られています。
人が備える、ホルモン分泌、体温の変化など、身体の基本的なリズムは、24時間の周期を刻むことが知られています。これは、光を遮った暗室に閉じ込められたとしても再現されます。哺乳類の体内時計は、脳の中心下部にある視床下部の視交叉上核に存在することが分かっています。
 
サーカディアンリズム(概日リズム)とは、体内時計が刻む、約24時間周期の身体活動の波のこと。
ある時間が来ると、自然とお腹が空く。
ある時間が来ると、眠くなる。
月経なども、体内時計が刻む生物のリズムのひとつと言われています。
 
サーカディアンリズムは、実は24時間ぴったりではなく、25時間周期だと言われています。人間の持つ、同調因子と呼ばれるものが、太陽の動き、すなわち24時間=一日に同調してくれているのですが。
この話は、本記事のエピソードとずれるので、割愛しましょう。
 
 
一方、最近注目されているのが、ウルトラディアンリズムです。
ウルトラディアンリズムとは、30分から4時間という、短い周期で体内時計が刻む、身体活動の波を指します。
ウルトラディアンリズムが生み出されるのは、同じく視床下部内にある、室傍核(しつぼうかく)と傍室傍核(ぼうしつぼうかく)領域であることが分かってきました。
この、室傍核と傍室傍核では、様々なホルモンを分泌し、体温や睡眠サイクルを調節すると推察されています。
そのため、ウルトラディアンリズムは、サーカディアンリズムとは異なる周期、もしくは性質を備え、私どもの身体において、様々な生理機能のリズムを制御していると考えられます。
 
例えば、睡眠中には、レム睡眠、ノンレム睡眠が周期的に繰り返されることが知られています。
レム睡眠では、脳が活発に活動し、記憶の整理や定着が行われているとされます。
一方、ノンレム睡眠では、脳は休息し、脳、そして肉体の疲労回復に貢献しているとされます。
 
実は、レム睡眠に似た脳波は、人が目覚め、活動しているときにも現れていることが分かりました。これが、日中の眠気や、集中力の低下などの原因となります。
この、日中に登場するレム睡眠もウルトラディアンリズムのひとつであり、おおよそ90分の周期で高まることが分かってきました。
 
私も、仕事中に眠そうにしていると、「集中しろ!仕事に対する真剣さが足りない!!」などと叱られた記憶がありますが。
日中に起きる眠気は、当人のやる気、真剣さなどに必ずしも由来するものではなく、ウルトラディアンリズムの影響もあるのです。
 
 
 

集中力を高める方法:「時間」を味方につける。

 

朝は、集中力のゴールデンタイム

 
脳科学者の茂木健一郎先生は、「『朝の3時間』は、トップスピードで仕事がこなせるゴールデンタイムだ」と言っています。
 
人は、日中の活動を通じ、さまざまな情報を得ます。これらの情報は、短期記憶として一時的に保存されます。この短期記憶を長期記憶へと整理するのが、睡眠の役目のひとつです。
短期記憶がリセットされた状態の脳は、新しい記憶を収納したり、もしくは創造性を発揮するのに適した状態になります。
 
それが、適切な睡眠をとった後の、朝の脳における状態です。
だから、茂木先生は、朝の3時間をゴールデンタイムと呼んでいるわけです。
 
朝のゴールデンタイムを、一日の仕事を行う上で、創造的で濃度が濃い仕事にあてること。
そうすることで、集中力を保ち、良い仕事ができるという理屈です。
 
 
 

ポモドーロテクニックを利用する

 
前述のとおり、ウルトラディアンリズムでは、90分周期で眠気、つまり集中力を妨げる市体内時計が作動します。
ウルトラディアンリズムの最小単位は、15分と考えられています。
この15分周期を利用して、集中力を良い状態に保ちつつ、仕事をするための時間管理術が、ポモドーロテクニックです。
 
やり方は、かんたんです。
 

  1. キッチンタイマーを用意する。
  2. タイマーを25分にセットする。
  3. タイマーをスタート。タイマーが鳴るまで、25分間集中して仕事を続ける。
  4. タイマーが鳴ったら(25分経過したら)、5分間休憩をする。
  5. ステップ1~4を、1セット(「1ポモドーロ」と呼ぶそうです)とし、4セット行ったら、15~30分程度、長めの休憩を取る。

ポモドーロテクニックを考えたのは、イタリアの起業家で、作家でもる、フランシスコ・シリロさんです。ポモドーロとは、イタリア語でトマトの意味。シリロさんが使用していたキッチンタイマーが、トマトの形をしていたことから、ポモドーロテクニックとネーミングされたそうです。
 
人の集中力は、45分程度しか続かないとされています。限界までがんばっても、90分とのこと。
25分で仕事(すなわち集中力)をいったんリセットするというのは、集中力を限界まで使い切ることなく、効率よく継続するために適当なタイミングなんだとか。
 
ちなみに、ポモドーロテクニックでは、25分間は、これと決めた仕事に集中します。もちろん、メールやチャットのチェックなど、他のコトをしてはいけません。
というのも、せっかく設けた25分間の集中タイムが乱されてしまうからです。
 
5分間のインターバルタイムを「休憩」と述べましたが、これは脳のための休憩時間であって、喫煙タイム、おやつタイムなど、本来的な意味での休憩ではありません。
要は、集中タイムから脳をリセットするための休憩タイムですので、メールチェックなどは、この5分間で行うと、上手にポモドーロテクニックを活用することができます。
 
 
 

集中力を高める方法:さまざまなテクニックを活用する。

 

外出ランチで集中力をリセット。

 
当たり前と言えば、当たり前ですが。
同じ環境にずっといると、気分転換が難しくなります。通勤もない在宅ワークでは、なおのことです。
必ずしも、お店で食べる必要はありません。お弁当を持参し、公園などの違う場所で食べるだけでも、集中力はリセットされます。
 
 
 

ストレッチで集中力をリセットする。

 
ストレッチをすると、体内の血の巡りが良くなります。
デスクワークで凝り固まった腰、肩、首筋などをほぐす効果もあります。
 
ネットで、「集中力 ストレッチ」と検索すると、さまざまな情報が得られますが、特にストレッチのやり方や種類にこだわる必要もないでしょう。
ストレッチではなく、スクワットや腕立てを行っても、集中力のリセット効果はあります。
 
また、前項の外出ランチを応用して、10~15分ほどお散歩をするような、ちょっと遠くのお店に足を運ぶのも、効果的かもしれませんね。
 
 
 

照明を変える。

 
これは、自宅で在宅ワークをする方に気をつけて欲しいテクニックです。
 
一般的に、オフィスの照明は、ブルーライトの配合が多く、昼の光を模してセッティングされています。対して、家庭の照明は、暖色系の、夕方の空の色を模してセッティングされているケースがあります。
 
人は、昼の光を浴びないと、脳が活性しにくいのだとか。なので、家庭照明で利用されることの多い暖色系の照明は、集中力を活性化させにくいそうです。
 
もし、自宅で仕事をされる方は、仕事に使う部屋だけ、電球にこだわってはいかがでしょうか。
電球には、昼光色、昼白色といったものがあります。
一般的にオフィスで使われることが多いのが、昼白色の電球。ただ、集中力を高めたい場合には、より青みが強い昼光色の電球がおすすめだそうです。
 
 
 

室温や、二酸化炭素濃度を調整する。

 
集中力を保つためには、室内における二酸化炭素濃度は、800ppm以下であることが望ましいそうです。
二酸化炭素濃度は、意外とかんたんに上がってしまうそうなので、二酸化炭素濃度計を室内に設置し、積極的に窓を開けて換気を行うと、集中力のキープに寄与するそうです。
 
また、室温も重要です。
クールビズでは、室温28度を推奨していますが、メガネの製造/販売を行うJINSが独自に行なった調査では、男性の場合、室温23度でもっとも集中力が上がるという結果が得られたそうです。ちなみに、女性の場合は、25~26度程度だったそうです。
 
 
 

コミュニケーションを断つ。

 
特に管理職の方々は、仕事中に部下や上司から話しかけられて、集中力が途絶えた経験があることでしょう。
在宅ワークに関するアンケートでも、「ひとりで仕事をしているので、集中できる」という声が挙がっています。
 
「今は集中したい」、というタイミングには、周囲の人たちも配慮できるような、社内ルールを定めれば良いわけです。
 
例えば

  • デスク上に、「集中タイム」といった札を掛けるようにする。
  • 仕事中の、ヘッドホン着用を許可する。

 
ヘッドホン着用は、クリエイティブ系の会社では、普通に行われていることです。
音楽を聞いている人もいれば、ノイズキャンセリング機能のあるヘッドホンで、雑音を遮断しているだけの人もいます。
 
集中タイムに入っている方のために、周囲の人が電話対応を担うなど、オフィス全体での協力が必要となります。
 
 
 

集中タイムを予約する。

 
「集中タイムを予約する」というと大仰ですが。
 
以前、私の在籍していた会社では、普通に行われていました。
会議室を、自分の集中タイムのために確保し、ひとりだけ会議室にこもり、仕事を行います。
 
会議室には電話もなく、また仮に入電があっても、集中タイム予約中の人にはつなぎません。
これは、集中できますよ!
 
ただし、私のいた会社でも、すべての人が「集中タイムを予約」していたわけではありません。総じて言うと、30代、40代の男性は、わりと利用していましたが、女性の利用者は少なかったように思います。
 
 
 

「集中力を切らさない」工夫よりも、「集中力を高める」工夫をすべきでは?

 
働き方改革については、過去のメルマガ『秋元通信』でも取り上げました。2019年の情報交流会ではテーマに取り上げたこともあります。
 
「私は思うのですが、働き方改革=残業減少と勘違いしている人(会社)も多いのではないでしょうか?」
 
これは、情報交流会にて、私が申し上げたことです。
 
仕事のパフォーマンスを上げること。
これこそが、働き方改革の本旨であるはずですし、そうでなければ、働き方改革は、会社経営に悪影響を与えてしまいます。一日10時間働いていた社員が、8時間しか働かなくなれば、生産性は、2割ダウンするわけですから。
 
社員の集中力を高めることは、すなわち生産性向上につながる話です。
つまり、働き方改革にも通じるテーマなわけです。
 
そのためには、集中力に関する議論についても、「集中力を長く継続するための方法論」ではなく、「集中力を高め、仕事のアウトプットの質を高める方法論」のほうが、生産的でしょうね。
 
例えば

  • 会議にもメリハリをつけ、報告主体の会議は、集中力の低下する午後に開催する。
  • 一方で、営業施策、経営施策などを話し合うクリエイティブな会議は、集中力が高く、創造的な脳の使い方にも適切な、朝一番に行う。

 
以下は、メルマガ『秋元通信』において、何度かご紹介した方程式です。

「個人のチカラ=最大出力×発揮率」

集中力とは、この方程式の「発揮率」を向上させる方法論です。
 
限られた時間で、しっかりと成果を上げるためにも、集中力を高める工夫が、働く人すべてに求められるのでしょう。
 
 
 


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