秋元通信

新型コロナウイルスは、2021年春卒の就職活動にどのような影響を及ぼしたのか?

  • 2021.6.15

新型コロナウイルスは、高校生、大学生の就職活動に、どのような影響をもたらしたのでしょう。
市井のニュースや統計資料等をもとに、2021年春卒の高校生、大学生の就職活動について振り返りましょう。
 
 
 

「買い手市場が戻ってきた?」、大卒採用の結果

 
リクルートキャリアの研究機関である、就職みらい研究所が発表した『就職白書2021』を紐解いていきましょう。
 
まず、企業側の状況です。
 

  • 採用予定数を100とした時の内定人数は、96.8。2020年卒の89.5と比較すると、大幅に採用計画に対する充足傾向が見られる。
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  • その理由として、もっとも高いのは「内定辞退者が予定よりも少なかった」(45.8%)だが、2020年と比較すると、「選考応募者が予定よりも多かった」が、前年18.9%から、32.4%と大幅に増加している。
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  • 結果、企業に対して行った入社予定者全体への満足度調査によれば、「満足」が前年比12.1ポイント増の71.3%と大きく増えた。

 
ただし、これには大きなポイントがあります。Web面接実施の有無です。
Web面接を実施した企業では、採用計画に対し、「充足した/計画よりも多い」と答えた企業が60.0%ありますが、Web面接を実施しなかった企業では、46.8%と差が生じています。
 
ちなみに、Web面接の実施率は、従業員5,000人以上の企業では、94.3%であったのに対し、従業員300人未満の企業では50.1%でした。
 
 
 

コロナ禍の就職活動、大学生たちの感触は?

 
以下も同じく、『就職白書2021』から紐解きます。
 
コロナ禍での就職活動に対し、活動開始当初に「就職活動中の景気動向によって不利に なる」と感じた学生の割合は65.5%。2020年卒に比べると、18.6ポイントも増加したそうです。
さらに、就職活動中にも、「就職活動中の景気動向によって不利に なる」と感じた学生は68.0%。前年比36.4ポイントの増加です。
 
「私たちの就職活動は厳しくなるかも…」と思っていたら、「やはり厳しい!」と感じた大学生がさらに増えたということですね。
致し方ないとは思うのですが、やはりかわいそうです。
 
ただし、その結果については、概ね満足している大学生が多いようで、77.8%(前年比2.4%)が「納得している」と答えています。
 
一方、Web面接に関してはどうだったのでしょう?
 
企業説明会などに関しては、「Webの方がよい」と答えた大学生の割合が高い(55.8%)のですが、面接や内定後の面談については、対面で実施して欲しいと答えが大学生が多くなっています(面接:53.7%、内定後の面談:56.4%)。
 
理由は、「対面の方が自分をわかって貰える」「対面の方が会社の雰囲気が掴みやすい」から。
 
では、Web面接やWeb企業説明会の実施には、課題はないのでしょうか?
 
 
 

Web面接は、本当の意味で、企業と大学生をつなぐツールにはなっていない?

 
『就職白書2021』では、採用活動を介して、企業が学生に対して伝えるべき情報(給与から社風まで)について、39項目に分けて、「企業が伝えることができた情報」と「学生が伝えてもらうことができた情報」について、その乖離状況を調べています。
 
結果、39項目すべてで乖離が発見されました。
その平均乖離率は30.3ポイント。もっとも高い「社内研修・自己啓発支援の有無とその内容(業務研修・語学研修など)」は55.2ポイント、次に高い「自社が求めている具体的な能力・人物像」は53.4%の乖離があります。
 
いわゆる「求める人材像」に関する情報伝達に、これだけの乖離があるのは、明らかにまずいでしょう。
今春社会人になった人たちのうち、Web企業説明会・Web面接を行ったグループでは今後、就職後の早期離職率が上がるかもしれません。
 
 
 

意外と影響が少なかった?、高卒採用の様子

 
ハローワークが発表した、『令和2年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況』のサマリーは以下のとおりです。
 

  • 就職内定率 99.1%で、前年同期比0.2ポイントの低下
  • 就職内定者数 約14万5千人で、同12.9%の減
  • 求人数 約38万6千人で、同20.2%の減
  • 求職者数 約14万6千人で、同12.7%の減
  • 求人倍率 2.64倍で、同0.25ポイントの低下

 
確かに求人数も減ったのですが、そもそも就職を希望する生徒の数も減っています。
結果として、内定率、求人倍率とも、ほぼ2020年卒並に落ち着いた結果となったようです。
 
※詳しくは、厚生労働省Webサイトをご確認ください。
 

 
 
ただ、個別に診れば、「求人票を確認して応募したが、企業側から急に『今年は採用をしません』と言われ、就職活動を反故にされた」などの問題もあったようです。
『秋元通信』でも、コロナ禍の就職活動による課題は、取り上げたことがありました。
 
新型コロナウイルスは、高卒採用市場にどのような影響を及ぼしたのか
 
見えてきていないだけで、コロナ禍の就職活動に割りを食った生徒は、きっといることでしょう。
 
 
 

就職活動でもデジタルデバイドが進む

 
本記事を書く上で、私はあるレポートを見つけました。
ある工業高校の先生が発表した論文です。
 
レポートの中で、その先生は、企業が一方的にWeb面接を行うことに対し、強い口調で非難しています。
 
高校側とすれば、生徒のためにWeb面接の環境を整えなければならないこともあるでしょう。そのために、それでなくとも数の限られた教員が、Web面接への準備、生徒へのフォローなどに手間を取られる、その苦しさはもちろんあるでしょう。
 
ただし、その先生は、きっと分かっていないです。
Web面接に対応できるかどうかが、生徒であり、学校に対する選考の第一段階になっていることを。
 
逆もしかりです。
学生からすれば、Web面接を行わない企業という時点で、学生から企業に向けた志望企業選択のひとつとなっているのです。
 
 
デジタルデバイドという言葉があります。
以前、デジタルデバイドに関して取り上げた、『IT化の遅れが、致命的な経営リスクに!? 2025年の崖問題とは』から、デジタルデバイドに関する説明を転記しましょう。
 

『デジタルデバイドは、2000年頃に提唱された概念です。簡単に言ってしまうと、コンピューターやPDA(※現在で言うところのスマートフォンに近い携帯端末)を保有し、IT技術を使いこなす人たちと、そうではない人たちの間に、深刻な貧富の差、社会的地位の差などが生じることです。ひいてはその差が、地域や国家の格差にもつながるという警鐘も行われました』

 
そもそも、企業側だって、ITリテラシーの高い学生・生徒を採用したいと思うところが多いでしょう。
Web面接ができない企業、高校、そして学生や生徒すらも、デジタルデバイドの犠牲者になっていくこと。
もはや、この流れは変えられないですよ。残念で不公平かもしれませんが、これが現実です。
 
せめてWeb面接くらいはできないと、企業も、求職者も、満足の得る結果を得られない時代になったことを、この高校の先生も自覚すべきでしょうね。
 
 
 
 


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