秋元通信

行動ターゲティング広告は、FacebookやGoogleに、より支配的なチカラをもたらすのか?

  • 2021.8.31

GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)に対し、世界の警戒感は高まりつつあります。巨大になりすぎたGAFAは、ある意味で国家以上に影響力を持つ存在へと成長しました。
 
その懸念の最たるものは、それぞれのビジネス分野において、圧倒的な支配力を持つことに対するものです。例えば、FacebookはSNS分野における支配的立場を強めているとして、傘下のInstagramを分離するよう、裁判を起こされています。
 
ところが、ことネット広告の世界に関して言うと、現在の潮流は、GoogleやFacebookがより支配的立場を強くするように流れています。
 
 

3rd Party Cookieに対する規制とは

 
その原因は、3rd Party Cookieに対する規制にあります。
まず、3rd Party Cookieについて、説明しましょう。
 
行動ターゲティング広告を支えているのは、Cookieという技術を利用します。
Cookieについては、秋元通信では過去に取り上げていますので、ここでの説明は割愛します。
 
3rd Party Cookieとは、訪問しているWebサイトの管理者ではない、第三者が発行したCookieのことです。ほとんどの場合、訪問したWebサイトに貼られた広告を管理している、広告代理店の役目を果たす業者が管理しています。この業者のことを、改正個人情報保護法内の表現を用い、以降「仮名加工情報取扱事業者」と呼びます。
 
仮名加工情報取扱事業者は、複数のWebサイトに広告枠を持ち、3rd Party Cookieを収集することで生活者のパーソナルデータを収集しています。
 
例えば、あなたは、キャンプ情報をまとめた情報サイトを訪問します。
例えば、あなたは、子育てに関する相談情報まとめサイトを訪問します。
例えば、あなたは、ショッピングサイトで、ベビーチェアを検索します。
 
あなたは別々のWebサイトに訪れたつもりかもしれませんし、Webサイトのオーナーはたしかに別々かもしれません。しかし、それらのWebサイトにおける広告を管理し、生活者のパーソナルデータを収集する仮名加工情報取扱事業者は同じかもしれません。
いや、同じ仮名加工情報取扱事業者でなくとも、実は結果は同じになる可能性があります。
というのは、仮名加工情報取扱事業者同士は、お互いに生活者のパーソナルデータを交換し、情報共有していることがあるからです。
 
結果、あなたは、キャンプに興味があり、子供がいて、かつ自家用車も所有しているというパーソナルデータを、仮名加工情報取扱事業者に握られることになります。
 
私たちは、複数のWebサイトを訪問することで、知らぬ間に趣味嗜好や家族構成などのパーソナルデータを、仮名加工情報取扱事業者に収集されているのです。
 
3rd Party Cookieの問題は、私たち生活者が知らぬ間に、そして把握もできないままパーソナルデータが流通し、活用されることにあります。
そのため、世界では3rd Party Cookieを規制する流れが生まれています。
 
代表的な規制は、EUにおけるGDPR(General Data Protection Regulation / EU一般データ保護規則)です。GDPRは、EU圏内における個人情報保護法にあたるものです。
 
GRPRでは、原則として3rd Party Cookieを禁止し、かつWebサイトのオーナーが、Cookie によってパーソナルデータの収集を行う場合には、その事実と利用目的等を明らかにすることを命じています。
 
日本では、まだ3rd Party Cookieに対する規制はありません。来年施行される改正個人情報保護法における3rd Party Cookieに対する態度もあいまいなままです(ガイドラインがいまだ公開されていないため)。
 
ですが、他国でも3rd Party Cookieに対する規制は始まっており、日本を含め、世界的に3rd Party Cookieが規制されていく潮流にあることは、間違いがないでしょう。
 
 

注目される 1st Party Cookieの利活用

 
ここで注目を集め始めたのが、1st Party Cookieを活用した行動ターゲティング広告です。自らがオーナーとなるWebサイトやアプリで収集できる1st Party Cookieを活用し、生活者のパーソナルデータを収集、分析すれば、3rd Party Cookie規制にかかることはありませんから。
 
例えば、百貨店や量販店などの自社アプリでは、過去の購買履歴と、アプリから取得した顧客自身の位置情報を勘案するだけで、さまざまな広告施策が実現します。
 
数ヶ月、自社店舗を訪れていない顧客には、来店を促すクーポンなどを配信することが効果的でしょう。
 
定期的に自社店舗を訪問しているものの、購買に至らぬ顧客に対しては、過去の購買履歴を元に、好みにマッチしそうな商品の広告配信を行うことで、購買に至る可能性が高まります。
 
今まさに店舗にいる顧客に対しては、タイムセールのリアルタイム告知が大きな効果を発揮する可能性があります。
 
自社Webサイトやアプリから得た、顧客のパーソナルデータに、もともと所有していた
顧客データを組み合わせることで、3rd Party Cookieが利用できなくなったデメリットを補おうとする、新たなマーケティング手法が注目を集めているのです。
 
ちなみに、こういった施策を手助けするソリューションを、パーソナルDMP(Data Management Platform)やCDP(Customer Data Platform)と呼びます。
 
 

3rd Party Cookie規制は、FacebookやGoogleの市場支配力を高めるのか

 
一方で、1st Party Cookieを収集することが難しい、もしくは顧客データが脆弱なメーカーや商社、販売店などが、引き続き行動ターゲティング広告を行おうとすればどうすれば良いのでしょうか?
 
答えの一つは、FacebookやGoogleなど、豊富なパーソナルデータを持つプラットフォームに広告を出稿することです。
広告出稿を希望する企業は、例えば「うちの広告を、家族がいて自家用車を所有しているキャンプ好きな人に表示させてください」と、Facebookに依頼します。Facebookは該当するユーザーに広告を表示しますが、ユーザーデータそのものは、広告依頼主には渡しません。
したがって、3rd Party Cookie規制が目的とする、パーソナルデータの第三者提供には抵触しないわけです。
 
3rd Party Cookieに対する規制そのものは、生活者のパーソナルデータを保護しようという、善なる意図を持ったものです。
しかしその反面、マーケットに対する巨大な支配力を持つ、FacebookやGoogleに利する可能性が出てきたのです。
 
 
大原則として、GAFAに対する対策は大きな視野で行われるべきであり、3rd Party Cookie規制のような個別の規制に対し、GAFA対策の視野まで持ちなさいというのは無理があります。
 
一方、前回ご紹介した情報銀行は、FacebookやGoogleの支配力を強めることなく、健全な形で行動ターゲティング広告を運営できる手法として、注目を集めていることも付記しておきましょう。
 
さて、5回にわたってお届けしてきた、行動ターゲティング広告、ネット広告などの話も、ここでいったんお終いにします。
 
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
 
 
 
 

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