先月、子供が生まれました。
その愛くるしい姿と、日々成長していく様子に、大きな癒やしをもらっています。
私は、普段から自宅で仕事をしています。
妻を助けて育児を行いつつ、仕事をどのように行っていくべきか、そのやり方やスケジュールについては、当初とても悩みました。
今のところ、私の一日のスケジュールは、こんな感じです。もちろん、子どもの様子によって、スケジュールは大きく変わりはしますが。
- 9時頃 起床、朝食
- 10時頃 仕事開始
- 13時~16時 子供と散歩がてら買い出しし、その後昼食
- 16時~18時 昼寝
- 18時~23時 子供を風呂に入れ、その後、夕食+プライベートタイム
- 23時~3時 子供の夜泣き等に対応しつつ仕事。そして就寝
以前、秋元通信でご紹介し、私たちの仕事を在宅で手伝ってくれていたともちゃんは、午前3時から6時のあいだ、働いていました。
二児の母であるともちゃんにとって、21時に子供を寝かしつけ、6時に旦那さんが起床するまでの間が唯一のフリータイムです。21時に子供とともに就寝し、3時に子供を寝かしたまま起床、そして3時間だけ、働いてくれていたのです。
特殊ですかね?
でも、育児と仕事を両立させようとすると、このような、いわゆる9時-17時ではない時間帯に働かざるを得ない方も出てくるでしょう。
育児だけではありません。
血縁者の介護をしながら働く人も、9時-17時では働きにくいかもしれません。
ショートスリーパー、すなわち体質的に睡眠時間が短くなってしまう方も、もしかすると望ましい働き方は、9時-17時ではないかもしれません。
- 自らが望む時間に働くことができること。
- 断続した勤務が許されること。
就業形態については、フレックスタイムや裁量労働など、これまでも進化を続けてきました。
その究極形とも言えるのが、「WAA」(ワー)です。
WAA とは、「Work from Anywhere and Anytime」の略であり、文字どおり、働く場所、働く時間を、基本的に従業員が自由に選択することを可能とした就業制度です。
WAAを導入したユニリーバ・ジャパンでは、以下のようなルールでWAAを運営しています。
- 事前に上司に申請すること。理由は不問としている。
- オフィス以外の、自宅、カフェ、地方など、どこで働いてもOK。
- 平日5時~22時の間で、勤務時間や休憩時間を、社員自身が自由に決められる。
- 実施日数や期間の制限もなし。
- 一ヶ月の所定労働時間が設けられている。もし、労働時間が足りない月があった場合には、翌月に調整して所定労働時間を満たす。
- 工場勤務者、営業の一部を除く、全社員が対象。
「働き方の『思い込み』を捨てることが目的だった」── ユニリーバ・ジャパンにおいて、WAAの導入・実現に尽力したキーマンである総務本部長は、このように語っています。
「自分が一番強みや能力を発揮できる状況は本人が最も知っているはず」、これも同氏の言葉です。
一見、放置とも言えるWAAを、制度として同社が実現・導入できたのは、従業員を信じているからでしょう。
とは言え、社内でも不安、不満がなかったわけではないと、先のインタビューでは語られています。そのため、同社では信頼ベースの働き方へのマインドチェンジを従業員たちに促すために、研修を繰り返したそうです。
同社の取り組みは、以前メルマガ『秋元通信』でも取り上げたワーケーションに関する事例記事として、たびたび登場します。たしかに、WAAを導入すれば、ワーケーションの制度化にもつながるでしょうね。
以前、私がワーケーションについて取り上げた時、私はワーケーションの効果は認めつつも、手放しでワーケーションを評価することはしませんでした。
一方、このWAAは、ワーケーションよりも遥かに広い視野で、従業員の生産性向上に向き合っていると私は思います。
WAAを制度化する企業が増えれば、多様な働き方が実現し、例えば育児中の方も、「昨夜は、子供が寝てくれなくてさ…」なんて、眠い目をこすりながら、無理やり働かなくてはならない状況を回避できるようになるのではないかと期待します。
とは言え、従業員を信じ、働き方の管理をすべて委ねることに、不安を感じるのも事実でしょう。
実際、マイナビが行った調査では、7割の人が「テレワーク中にサボったことがある」と回答しています。
サボりの内容について、確認をしましょう。
- 動画サイトを視聴していた
- 漫画を読んだりゲームしていた
- 昼寝した
- お菓子を食べてしまった
- コーヒーブレイク
- 子どもが泣いてしまったので面倒を見ていた
「子どもが泣いてしまったので面倒を見ていた」は許して欲しいと思いますが…
また、「お菓子を食べてしまった」「コーヒーブレイクは、在宅に限らず、会社に出勤していたとしてありますよね。
ちなみに、同調査では、テレワーク中にサボった経験がある人の約3割が、「サボったことが上司や同僚に発覚した」と答えています。
ちなみに、20代の約2人に1人、30代以上の約3人に1人が「テレワーク時、サボっていると思われるストレス」を実感しているという調査もあります。
また、同調査では、年代が高いほど「テレワーク時、チームメンバーや上司・部下などに対してサボっているのでは、と思ってしまう」という結果も紹介しています。
40代では4割弱、50代では半数以上が、「他者に対し『サボっているのではないか』と思ってしまう」と答えています。
一方で、「仕事をしているかどうかの判断基準」について尋ねたところ、以下のような結果が出ました。
- 「プロセスで判断する」 46.3%
- 「成果で判断する」 45.1%
- 「労働時間で判断する」 8.5%
矛盾していますよね。プロセスや成果で判断するのであれば、部下や同僚がサボっているかどうかなんて、どうだって良いはずです。
私たちは、時間で縛られる働き方に、良くも悪くも慣れすぎてしまいました。
皆が一斉に出勤し、そこから8時間一斉に働く、旧来の働き方であれば、出勤さえすれば給料はもらえていたかもしれません。
いくら成果が芳しくないと言っても、出勤し、まがりなりにも何かしら仕事をしているわけですから、それなりの仕事はしていたはずです。
しかし、テレワークになり、周囲の目がなくなったからと言って、成果も出さず、サボり続けていたらどうなるでしょうか。
最終的には、上司からも同僚からも、そして会社からも見捨てられることは明白です。
WAAは極端ですが、テレワークを始めとする、昨今の働き方の多様化を実現する各種制度は、導入されていない企業にお勤めの皆さまからみれば、羨ましく感じることもあるでしょう。
しかし、その裏側には、自分に甘えることなく主体的に働き、しっかりと成果を求められる厳しい現実があることは忘れてはなりません。
働き方の多様化を実現することは、社会が現在求めていることであり、国も働き方の多様化を実現する方向へとかじを切っています。
おそらく働きがいのある企業、すなわち待遇が良かったり、仕事にやりがいがある企業ほど、働き方の多様化を認め、WAAのような自由な働き方を制度化する方向へ突き進んでいくでしょう。
逆に言えば、主体性を持った働き方ができない人、自己管理ができない人は、待遇の悪い企業でしか働けなくなるようになるのかもしれません。
仕方ないですよ。
自由には、必ず責任が生じますし、そして、自由度が高いほど、その責任も重くなるのは、当然のことなのですから。
働き方改革の推進を筆頭に、世の中の状況は、私たちの労働環境を良い方向へと進めています。
しかし、そのトレードオフとして、すべての働く人に対して求められるものが、よりシビアな方向へと進んでいることも、私たちは覚悟しなければならないのでしょう。