秋元通信

経産省が分析する物流クライシスの切り口が興味深い

  • 2021.10.13

先日2021年10月6日、経済産業省は、第一回フィジカルインターネット実現会議を開催しました。
フィジカルインターネットとは、インターネットの仕組みを模した、究極とも言える物流の進化形態のことです。ただし、本稿ではフィジカルインターネットの説明は割愛します。また別の機会に取り上げましょう。
 
私が注目したいのは、国土交通省ではなく、経済産業省が、物流クライシスという煽り文句を使ってまで、物流の構造改革に乗り込んできたことです。
今回の会議では、初回ということもあり、物流クライシスの中身もしっかりと説明されています。これが、これまでの国土交通省のストーリーとやや異なることもあり、なかなか興味深いです。
 
 
 

「物流コストインフレ」

 
「物流サービス価格は、バブル期を上回り、過去最高(物流コストインフレ)」
 
経産省の資料「物流危機とフィジカルインターネット」の1ページに踊るタイトルがこれです。
 

  • 道路貨物輸送サービス価格は、2010年代後半にバブル期(1990年の規制緩和以前)の水準を超え、過去最高(物流コストインフレ)。
  • 特に、宅配便の価格の急騰が顕著。

 
今までが安すぎただけだと思うのは、物流業界の中にいる私たちの被害者意識でしょうか。
 
その理由として挙げられているのが、以下です。
 

  • EC拡大による宅配便の急増。
  • 多品種・小ロット輸送の増加によるトラックの積載効率の低下。
  • ドライバー不足。

 
ドライバー不足に関しては、「2027年には27万人不足。2030年には物流需要の約36%が運べなくなる」とした上で、物流の2024年問題に起因し、物流コストがさらに高騰する可能性を懸念しています。
 
 
 

「物流の能力が、競争力や成長を左右する時代へ」

 
2015年に経団連が発表した提言書「企業の競争力強化と豊かな生活を支える物流のあり方~官民が連携して、『未来を創る』物流を構築する~」においても、物流業界の改革が進まないと、「産業全体の競争力も弱体化させてしまうことにもつながりかねない」として、物流に対する危機感を指摘されていました。
 
ですが今回は、より直接的に、危機感を煽っています。
 

  • 物流コストインフレにより、物流の能力が企業競争力の決定要因に。
  • 物流コストインフレは、いずれ物流需要の減退を招き、成長を制約する構造的な要因に。
  • 物流コストインフレを放置すれば2020年代後半に物流危機(適正なコストでモノが運べなくなる事態)。

 
 
 

「物流コストインフレ対策の基本的な考え方」

 
物流コストインフレを招いたのは、物流の効率化を行わず、ただ物流コストの抑制を行ったこれまでの施策が原因であったとしています。
規制緩和によって市場競争を激化させた結果、物流コストはたしかに下がったものの、ドライバーの労働環境を悪化させたことで、物流供給力(※経産省資料のまま。正確には、輸送供給力と言いたいのでしょう)は低下してしまったと、過去の政策批判を行っていることは、評価すべきかと思います。
 
対して、今後目指すべき物流コストインフレ対策は、以下としています。
 

  • 運賃をアップし、ドライバーの労働環境改善を図る。
  • 物流効率化(積載率の向上)の徹底。
  • 結果として、運賃アップ分を物流効率化で補い、トータルでの物流コストは下げる。

そのためには、荷主企業は、サプライチェーンに対し、以下の取り組みが必要であると提言しています。
 
「物流の能力が競争力を左右する時代においては、企業は、物流も統合したサプライチェーン・マネジメントを確立すべく、デジタル技術をフル活用し,経営を変革(DX)すべき」
 
そして、「究極の物流効率化」として、フィジカルインターネットを研究すべし、とまとめています。
 
 
 

高まる物流への変革圧力

 
フィジカルインターネットに関し、国土交通省ではなく、経済産業省がイニシアチブを取ろうとしているのは、「もはや国土交通省には任せていられない」という気持ちもあるのでしょう。
 
そもそも、物流とは経済活動の一部でしかありません。
これまで国土交通省が行ってきたのは、物流事業者を対象とした部分最適化であり、経済産業省が述べる、「企業は、物流も統合したサプライチェーン・マネジメントを確立すべく」という、全体最適化を目指さなければ、真の物流効率化など実現できません。
 
その意味で、産業界全体の課題として、物流の課題を指摘する今回の提言は、とても興味深いものになっています。
 
一方で、物流の輸送機能だけに、ことさらフォーカスしているようにみえるのは、今後、認識をあらためて欲しいところです。
 
中小企業が大多数を占める、運送会社、倉庫会社が、今回経済産業省が指摘してきたような、産業界全体からの変革圧力に対し、応えることができるかどうかは、とても難しいところでしょう。
 
なお、経済産業省のYoutubeでは、今回ご紹介した第一回フィジカルインターネット実現会議の様子を閲覧することができます。
私はリアルタイムで観ていましたが、これを観れば、フィジカルインターネットとは何か、そして経済産業省は何を行おうとしているのかも、よく分かります。
 
https://youtu.be/tENg8ydUByQ
 
ぜひ多くの方にご覧になっていただきたいです。
 
 
 


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