「大企業人材の44%は、DX業務にネガティブ・無関心。DX人材育成の壁は、仕事の『境界線の維持』」
とても興味深い統計調査です。
薄々「そうなんだろうなぁ…」とは感じていましたが。
まず、ご紹介した統計調査の内容をおさらいします。
本調査では、大企業に勤める方々に調査をしています。
その結果、なんと44%の人が「DX業務にネガティブ・無関心」であることが判明しました。
- 面倒くさそう。
- 大変そう。
- 自分に務まるか不安だ。
- 特に関心はない。
これらが、その理由です。
深堀りすると、さらに興味深い傾向が見えてきます。
「DXやデジタルビジネスの推進活動に関わりたいか?」という質問に対し、「できれば関わりたくない」「絶対に関わりたくない」と答えた方が、30%もいたそうです。さらに、このように答えた方の年代を確認したところ、40代が最多(38%)でした。
40代と言えば、中間管理職の方々でしょう。
言わば、何かを推進するときの仲介役であり、原動力となる方々です。
そう考えると、この結果はなんだか、とても残念です。
さらに、DXに関わりたくない理由を分析したところ、以下のようになりました。
- 「DX矮小化」タイプ(10%)
「データから新しいヒントを貰ったことがない」「一過性だし取り組んでも意味がない」という風に、DXの価値を矮小化するタイプ。 - 「境界線の維持」タイプ(65%)
「具体的に何をしたらよいのかわからない」「データはよくわからない」など、分からないことには手を出したくないタイプ。 - 「評価が心配」タイプ(8%)
「失敗して評価が下がることが怖い」という、マイナス評価につながることは止めておこうというタイプ。
DXに限った話ではありませんが、こういった「やらないこと」「無関心であること」を堂々と、しかも正当化する方々には、げんなりとします。
少し話が変わります。
私は、Webサイト制作や、Webアプリケーション開発を生業としていました。
「Webサイトをリニューアルしたい」、もしくは「新たなビジネスを立ち上げるために、これまでにないWebアプリケーションが必要なんだ」と考える人たちの前には、ほぼ100%、社内の反対勢力が立ちはだかります。
「なぜ、それ(WebサイトリニューアルやWebアプリ開発)が必要なんだ!?」
「費用対効果は、きちんと出るんだろうな?」
中には、「なぜそんなことをしようとするのか、意味がわからない」と主張される反対勢力の方もいました。理由は示しません。何を説明しても、「私には理解できない。だから、あなたのやろうとしていることの意義もわからない」の一点張りです。
また、こんなことを言って、自身が反対勢力であることを正当化する人もいました。
「新しいことをやろうとするのであれば、『産みの苦しみ』は必要だ。『産みの苦しみ』がなければ、できあがったものは、本当に良いモノにはならない。
だから、私はあえて皆の憎まれ者として、反対意見を口にしているんだ」
でも、やっていることは、「なぜ?」を繰り返し、枝葉末節で言うところの枝葉にあたるような、本筋ではないところをチクチクと指摘するばかりだったんですけどね。
「反対勢力の人たちがいなければ、こんな苦労しなかったのに…」── このようにボヤく、推進派の人たちを、私はこれまでたくさん見てきました。私自身、「反対勢力との闘いがなければ、きっともっと早く、もっと良いモノが出来上がったのではないか?」と感じてきました。
否定をベースに議論をするのではなく、「どうやったら実現できるのか?」「もっと良いものにするためにはどうしたら良いのか?」を考えたほうが、社内の雰囲気も、本人たちの精神衛生上も、きっと良くなると思うのですが。
”DXに限った話ではありませんが、こういった「やらないこと」「無関心であること」を堂々と、しかも正当化する方々には、げんなりとします。”
「げんなりする」と批判をしましたが、こういった方々は、最初から「関わりたくない」性向を持った方々なのでしょうか?
きっと、そうではないです。
というのも、もし、生まれ持ったものであれば、年代別の差異は生まれないはずですから。
既に述べたとおり、40代の方々に、特にDXに関わりたくないという人が多いということは、社内の人間関係やポジション、もしくはこれまでの経験が、その要因となっている可能性があります。
原因はいくつかあると思いますが、そのひとつは、日本社会に全体にはびこる減点主義であると、私は考えます。
中間管理職として働く40代の方々は、これまでも反対勢力の方々との折衝に、神経をすり減らしてきたかもしれません。そして今まさに、社内の調整役として、反対勢力の人たちと正面から対峙している方もいるでしょう。
そして、もしかすると…。
こういった経験をした40代の方は、やがて承認をする立場の50代となったとき、自分自身もかつては嫌な思いをさせられた、反対勢力の一員になってしまうのかもしれません。
なにか新しいモノを創り上げようとする推進派の人たちのアイデアや想いを否定するのは簡単です。ただし、「無理だろう!」「駄目だろう!」「現実性がない!」などと、通り一遍の否定ではなく、推進派のアイデアを検証し、きちんと根拠を示し、道筋を立てて否定するのは、決して簡単ではありません。
推進派の人たちは、何十時間、何百時間も掛けて、新しいモノを創り上げるための準備をしています。否定をするのであれば、推進派の人たちの努力と情熱に敬意を払い、同等とまではいかないまでも、きちんと時間を掛けて、否定するための根拠を用意すべきです。
現状維持は、衰退と同じです。
特に、現代のようにテクノロジーの進化も早く、新たなイノベーションが次々と登場する時代において、立ち止まってしまえば、いずれマーケットであり、社会から取り残されていくことは、明確です。
新しいモノを創り上げようとする推進派の人たちは、現状維持を憂い、企業の衰退を防ごうと努力する人たちです。
対して、反対勢力の人たちはどうでしょうか?
理由はどうあれ、推進派を否定するという一面だけを取り上げれば、その行動は、企業が衰退する原因の一部になってしまっています。
なぜ、新しいこと、新しい取り組みに対し、前向きになれないのでしょうか。
例えば、社長が、従業員からの上申・提案を否定しまくる人であれば、やがて従業員は、社長の顔色を伺い、波風立たぬようにサラリーマン人生を送る、事なかれ主義者になってしまうでしょう。
なにか新たなアイデアや考え方に出会ったとき、「でもね!」と反対意見から言い始める人と、「なるほど、だったら…」とそのアイデア・考え方を応援する発想ができる人、どちらが魅力的でしょうか?
もっと言えば、どちらが上司として魅力でしょうか。
冒頭に挙げた記事の結果を見て、「やっぱりDXは…」自説を支持されたような気持ちになった人、要注意ですよ。
あなたも、気づかぬ間に、反対勢力マインドに陥っているのかもしれません。
※取り上げた統計調査では、1,000名以上の方にアンケートを呼びかけて、結果アンケートに答えたのは、298名です。
母集団が決して大きくはないため、極端な主張をする尖った人たちが目立ってしまった可能性が否めないことは、付記しておきます。