秋元通信

PLC理論から考える、「3PLはオワコンなのか?」

  • 2021.12.16

PLC理論(プロダクト・ライフサイクル理論)とは、製品やサービスにも、人間同様、寿命があるという発想のもと、製品やサービスの一生を、導入期、成長期、成熟期、衰退期という4つの時期に分けて、取るべき戦略を考えるものです。
 

  • 導入期
    製品・サービスに対する市場認知が低いので、広告宣伝費、営業費など、コストを投じて売り込みを図る必要があります。
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  • 成長期
    市場認知の向上に伴い、製品・サービスが売れ始めます。
    一方で、競合も市場参入し始めます。
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  • 成熟期
    市場の成熟に伴い、競合対策(差別化戦略等)が必要となります。
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  • 衰退期
    市場がレッドオーシャン化し、製品・サービスの売れ行きも悪くなってきます。

 
レッドオーシャンとは、多くの競合他社が入り乱れる、競争の激しい市場を指します。
また、成熟期の後半では、イノベーションが発生し、より価値や機能性の高い製品・サービスが市場参入することで、衰退期に向かう流れが一気に加速することもあります。
 
 
 

携帯電話を例に、PLC理論を解説

 
自動車電話などに代わる、今で言うところのガラケーによる携帯電話サービスが始まったのは、1993年のことです。
同年、NTTドコモがPDC方式(2G)の携帯電話サービスを開始。1994年には、デジタルホングループ(※現在のソフトバンク)、ツーカーグループ(※現在はauに統合)がスタートしました。
 
皆さまが、携帯電話を使い始めたのはいつですか?
筆者は、1996年にPHSを、1997年に携帯電話を使い始めました。
 
この頃は、導入期から成長期へと移り始めた頃でしょう。
 
2000年に入ってから、携帯電話マーケットは成熟期へと移行しました。
それまでと違い、携帯電話端末がゼロ円で売れなくなり、本体価格が上昇したこともありますが、そもそも、多くの人が携帯電話を保有するようになり、競合他社との差別化に、各社が躍起になり始めた頃です。
例えば、ドコモのiモードが開始されたのは、1999年のこと。携帯電話キャリア各社が独自のサービスを開発・売り込みし、競合との差別化を模索していました。
 
そんな中、2008年3月にiPhoneが発売されます。
最初は、イノベーターと呼ばれる新しもの好きな人たちが使い始めたiPhoneですが、やがてAndroidも登場し、一気にガラケーのマーケットは縮小していきました。
 

 
スマートフォンというイノベーションが、ガラケー市場の衰退を加速し、逆にスマートフォンの市場が、一気に成長期へと突入したのです。
 
現在のスマートフォン市場は、成熟期の状態にあると考えられます。
スマートフォンメーカー各社が差別化を図る端末を企画・発売はしているものの、iPhoneにしても、以前のような圧倒的な差別化は図れなくなっています。
 
 
 

3PLはオワコンなのか?

 
3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)という概念は、1990年代のアメリカで誕生したと言われています。
日本でも、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、「3PLとは何か?」といった定義づけが行われました。
 
最近では、4PL(※3PLにコンサルティングを加えた概念)なんて言葉も登場していますが、未だ、「私たちは3PLを提供できます」と謳う(謳いたがる)物流企業は数多くいます。
 
でも今の世の中、3PLって荷主企業に刺さるパワーワードなのでしょうか?
 
Googleの検索ワードの推移を確認可能な、Googleトレンドを使い、2004年以降の、3PL、4PL、フルフィルメントの検索数を確認してみました。
 

 
 
3PLとフルフィルメントに関して言えば、2004年からしばらくは3PLの検索数が圧倒的に多いものの、2013年を境にフルフィルメントが逆転、以降、多少の抜きつ抜かれつは繰り返しつつも、総じて最近ではフルフィルメントの方が多く検索されていることが分かります。
 
また、4PLについては、最近多少検索数が増えてきているものの、基本的に鳴かず飛ばずの状態が続いています。
 
これを診て、「3PLはもはや『オワコン』だ」(※オワコン=終わったコンテンツ)と断言するのは早計です。
一方、4PLに関しては、導入期の殻を破ることができず、成長期に達することもなく、伸び悩んでいると言えるでしょう。
 
 
 

3PLという言葉は、あなたの企業をアピールできているのか?

 
大切なのは、あなたの会社のアピールにおいて、3PLというキーワードが刺さる威力を持つかどうかです。
 
これは私見ですが、猫も杓子も「我こそは3PL事業者なり!」と宣言している今、3PLという言葉の宣伝効果は、5年前、10年前に比べれば、はるかに下がっていると考えます。
 
秋元通信読者の皆さまの中にも、思い当たるフシがある方がいらっしゃるのではないでしょうか?
 
2004年に国土交通省が発表した「日本における3PLビジネスの育成に関する調査」では、「3PLと称する事業者は増加しているものの、これらの事業者が3PLとして提供しているサービスの内容や受託範囲・レベルはまちまち」であり、「3PLの確定的な定義は存在せず、物流アウトソーシングを契機とした各事業者の物流改善策の積み重ねが結果的に3PLサービスと称されるようになった」としています。
 
では、現在3PLを名乗る物流事業者は、「物流改善策の積み重ね」を今も続けているのでしょうか?
もしかすると、数年前から提供可能な物流サービスの内容と質が進化していないのに、3PLを名乗っている企業もいるののではないでしょうか。
 
私見ですが、今の時代、フルフィルメントを提供できない物流事業者が3PLを名乗るのには違和感を感じます。
 
また、「3PLならお任せください!」よりも「フルフィルメントならお任せください!」の方が、今の時代、よほど荷主に刺さり、宣伝効果としても高いでしょう。
 
3PLという言葉に頼りすぎている方がいたら、そろそろ再考するタイミングかもしれません。
 
 
 


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