秋元通信

ゆるブラックって何?、仕事へのやりがいを求める若者たち

  • 2021.12.16

20代、30代のサラリーマンを中心に、「ゆるブラック」なる言葉が広まっているそうです。
 
ホワイト企業とも、ブラック企業とも異なる、ゆるブラック企業の特徴を挙げましょう。
 

  • 居心地は良い。離職率も低め。
  • 残業も少ない。
  • きつい目標やノルマが課されることもなく、仕事全般に対するプレッシャーは少ない。
  • ルーティンワークが多く、新たなスキルや学びを身に付ける機会、自己成長の機会が少ない。
  • 給料はそこそこで、昇給は少ない。

 
何と言うか、「ゆるブラック」とは言い得て妙です。
ぬるま湯的環境であるがゆえに、居心地の良さはあるものの、「この居心地の良さに甘んじていて、私は大丈夫だろうか?」と思う気持ちも分かる気がします。
向上心が強い人、収入アップを狙いたい人にとっては、物足りないどころか、危機感を感じる環境であり、社風になるでしょう。
 
 
 

ゆるブラックの問題とは

 

  • 自己成長が見込めない。
  • やりがい、生きがいを感じにくい。
  • 自身の市場価値が上がらない(下がる)。

 
以前、ある一部上場企業の社員さんたちと呑みに行ったときの話です。
話題は、鴻海(ホンハイ)精密工業(台湾)に買収された、シャープの話になりました。
 
「あなたは良いよな…」──相手が言いました。
「なぜです?」、尋ねた私に、彼はこう続けました。
 
「中小企業に勤めているから、いきなり買収されてもなんとかなりそうじゃないですか」
 
私の頭の中には、はてなマークがたくさん浮かびました。
彼の言うことをまとめると、こういうことです。
 

  • 大企業に勤めていると、会社の敷いたレールで、基本仕事をするようになる。
  • ふと思うことがある。「私は、会社の名刺で仕事をさせてもらっているだけじゃないのか?」
  • 中小企業にいれば、会社のチカラが弱いため、自ずと自分自身の人間力が育つはず。

 
失礼と言えば、失礼な話ですけどね。
 
その方は、聞けば誰もが名前を知る大企業の社員です。
彼は彼なりに、己の力量に不安を感じていたのでしょう。
 
 
ゆるブラックな企業であるかどうかは、働いている当人が決めることです。そして、同じ企業で働いていても、ゆるブラックかどうかの判断は、人によって異なるでしょう。
そのあたりは、ブラック企業であるかどうかの判断と違うかもしれません。ブラック企業の場合、コンプライアンスを遵守できていない、パワハラが蔓延しているなどの比較的分かりやすい線引きがあるでしょうから。
 
「適当に仕事して、適当に給料を貰えればいいや!」と思っている人にとっては、ゆるブラック企業は理想の勤め先のはずです。
勤務している会社がゆるブラックであると感じる方は、向上心を持っているのでしょう。
 
また、それなりに能力も高いのかもしれません。
と言うのも、自身の能力を活かしきれていないと感じていたり、今の仕事は自分にとって楽だと感じている可能性があるからです。
 
ただし私は、自身の勤める会社を、ゆるブラックと揶揄する気持ちには、危うさもはらんでいると考えています。
 
 
 

「自分の可能性を試したい」という想いの危うさ

 
新卒入社から5年。転職を決めた女性がいました。
彼女は、私のお客様であり、担当であった方です。
 
彼女には向上心がありました。そこを見込まれて、企画部門に異動、Webサイトの担当になりました。私との打ち合わせ中にも、本来の職務から話が外れ、Webマーケッターとしてキャリアを伸ばすにはどのようにしたら良いのか、ディスカッションを行うことがありました。意識が高く、向上心もお持ちでした。
 
彼女の上司、同僚たちは、送別会を行いました。
社外から一人だけ招かれた私も、送別会に参加しました。
 
「どうして転職するの?こんなに良い上司や仲間に恵まれているのに」──尋ねた私に、彼女は答えました。
 
「自分の可能性を試したいんです」
 
 
ここで挙げた「彼女」は、特定の誰かを挙げたものではありません。私が、これまで見てきた、自分の部下、お客様、友人などのエピソードをモデル化した、仮想の存在です。
 
「自分の可能性を試したいんです」──言葉は美しいかもしれませんが、傲慢だと思いませんか?
裏を返せば、「今の会社では自分の可能性は伸ばせない」と考えているわけです。
 
彼ら彼女らは、皆、同年代の人に比べれば、頭一つ抜けた向上心と、能力を備えています。
会社側は、彼ら彼女らの可能性を信じ、何か特別な仕事、会社からすれば新たなチャレンジなどを託します。
 
やっているうちに、彼ら彼女らは気が付くわけです。
 
「あれ、本当に○○の能力を磨きたいと思ったら、この会社にいるよりも、もっと適した会社があるんじゃないの?」
 
 
皆さまは、こういった人をどう思いますか。
私は、駄目だとは言いません(言えません)が、良くないと思います。
 
彼ら彼女らは、結果を出していません。
会社から期待され、特別なミッションを与えられたにも関わらず、それを実現・達成しないうちに、思い上がって(とあえて言いましょう)、転職してしまうわけです。
 
ミッションを達成し、会社に貢献してから転職するのはありだと思います。しかし、結果を出していないのに、与えられたミッションを途中放棄するというのはどうでしょう?
40代、50代になってくると、結果を出していなければ、転職の際に評価されることはないでしょう。
しかし、20代、30代では、結果を出していないのに、「向上心がある」と評価されて転職ができるケースが割とあります。
 
ですが、こういう転職の仕方をした人で、転職先において結果を出した人を僕は見たことがありません。
 
原因はいくつかあるのでしょうが、一番の原因は、「別の会社・環境に行くことで、私の可能性は花開くはず」と思っていることだと、私は思います。
ゆるブラックな環境を逆手に取り、自己研鑽に努めるくらい気持ちがないと、結局のところ受け身な自分を変えることはできません。
 
結局、こういう人たちは、自身の力不足・努力不足から目を背け、環境のせいにしているだけなんじゃないでしょうか。
 
 
 

ゆるブラックと言ってしまう当人と、言われる企業の課題

 
今の自分が置かれた環境を、自分自身のチカラで打破しようという意欲がない──「自分の可能性を試したいんです」と言った彼ら彼女らのマインドと、勤め先をゆるブラックと揶揄する人たちのマインドには、共通点があります。
 
一方で、ゆるブラックと言われてしまう企業側にも課題はあります。
おそらく、ゆるブラックな企業では、社員たちの向上心を掻き立てるような材料が乏しいのでしょう。
 

  • 経営層が、会社のビジョンを示せていない。
  • 従業員に対し、キャリアパスを示せていない。
  • 新製品・新サービスの開発、時代に合わせた営業手法やマーケティング手法の開拓といった、新たなチャレンジを行っていない。
  • 経営に対し、従業員が全般的に甘さ・ゆるさを感じている。

 
ゆるブラックなる言葉が生まれた一因には、働き方改革への誤解もあるのではないでしょうか。
働き方改革において、残業削減・労働時間の上限規制は、手段であって、目的ではありません。それでなくとも他国に比べて生産性が低いとされている日本人の働き方を、文字通り改革し、より濃密で生産性の高いものに向上させることが、働き方改革が目指す、真の目的のはずなのですが。
 
ゆるブラックって、時代が生んだ徒花(あだばな)の一つなのかもしれませんね。
 
 
 


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