秋元通信

新入社員に対するSNS研修を考える

  • 2022.3.22

バイトテロ、バカッター…
不埒な行為を行い、SNSに投稿する行為は後を絶ちません。
 
当人たちは、ちょっとしたイタズラだったのでしょうが、その行為はあっという間に拡散され、企業イメージに深刻なダメージを与えます。
 
企業によっては、従業員がSNSを使用することを禁止しているケースもあります。
禁止までせずとも、SNSの個人紹介情報に企業名を出すことを禁止し、かつ企業名を出すこと、企業名を想起させるような内容を投稿することを禁止しているケースもあります。
 
ただ、SNSって本来ちゃんとした使い方をすれば、利用している個人にも、個人が所属している企業にも、大きなメリットが出るものです。
従業員のSNSの利用方法にまで企業が禁止事項を設けるのは、やりすぎな気もしますし。
 
ということで、秋元運輸倉庫では、新入社員に対し、SNS研修を行っています。
今回は、その内容をご紹介しましょう。
 
 
 

SNSで拡散された従業員による不正行為の事例

 
ここ数年の事件を挙げましょう。
 

  • 高級焼肉店において、女性従業員が岩塩プレートを舐める動画をInstagramのストーリーに投稿。
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  • 有名カレーチェーンにおいて、男性従業員がまかないのカレーに「スパイスを振りかけます」といって、自らの陰毛をばらまく動画をInstagramに投稿。Twitterに転載され、拡散した。
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  • コンビニエンスストアのバックヤードで、女性客の胸元を撮影した監視モニターを見る従業員たちの様子を、TikTokに投稿。
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  • フォークリフトの爪部分に人が乗ったり、クレーンに人がぶら下がる動画を投稿。
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  • 某警備会社の制服を着た元社員が、「巡回中に危険な運転を繰り返す動画」を投稿。

 
こういった不埒な行為を行った当人たちは、企業側から賠償請求を起こされたり、刑事事件として逮捕される可能性もあります。
 
東京都多摩市のそば店(個人営業店)は、バイトテロによりクレームが殺到、閉店・破産にまで追い込まれました。もともと経営が悪化していたとは言え、このような結果になったことで、世間からも注目を集めました。
なお、店側が、不埒な行為を行ったバイトの大学生に対し、1,358万円の損害賠償を求め提訴しましたが、結果、学生らから約200万円の和解金を支払うことで和解しました(破産当時の負債は3,300万円)。
 
くら寿司で発生した、ハマチの切り身を一度ゴミ箱に廃棄、その後調理する過程を投稿したケースでは、行為を行った当人を偽計業務妨害ほう助容疑で、その様子を撮影・拡散した二人を偽計業務妨害容疑で書類送検しています。
 
くら寿司の事件では、バイトテロ発覚後、株価が急落し、くら寿司側は約27億円の損害を被ったとされます。
 
不埒な行為をした従業員に対し、企業が損害賠償を行ったり、刑事告訴することは可能です。
しかし、企業側からすれば、被った損害をカバーするほどの賠償金を得ることは不可能です。
 
当たり前ですが、従業員に対し不埒な行為を行わせないことが、企業にとって最大の防御策となります。
 
 
 

高卒新入社員に対して行うべきSNS研修とは

 
新入社員に対しSNS研修を行うようになってから5年ほど経ちます。
当初の研修内容は、バイトテロなどの事例を説明し、「こういうことをしちゃ駄目だからね」という内容でした。
ですが、研修を行う私としては手応えがなく、「この内容で大丈夫なのかな?」と模索し続けてきました。
 
今だから分かるのですが、手応えがない理由は新入社員たちにとって、「SNSで不埒な行為を行う」ということが現実感を伴っていないからでした。
 
近年、当社では高卒の新入社員しか入社していません。
高校生の場合、全員とは言いませんが、多くの場合SNSの利用は限定的なものです。
高校生のSNSの利用は、芸能人やインフルエンサーなどの投稿を読むだけ、ネット用語で言うところの「ROM専」に徹し、交流はリアルで付き合いのある友人などに限られているケースが多いです。
自己承認欲求、自己顕示欲を満たすべく、フォロワーの数を伸ばそうとする行為は、高校生ではまだ少数ではないでしょうか。
 
これは、私の知る高校生、もしくは高卒新入社員から得た感触なので、世間的に本当に合っている感覚・評価であるという確証はありません。
しかし、だからといって手応えが希薄な内容の研修を続けるわけにはいきません。
そこで、「こういうことをしちゃ駄目だからね」をレクチャーするのではなく、「こういうことも、イケナイことなんだ!?」という気づきを与える内容へと変化させました。
 
 
 

物流企業に求められるSNS研修とは

 
私ども物流企業において、「SNSにおいて、従業員に行われては困る行為」とは何でしょうか?
 
フォークリフトやトラックなどで悪ふざけをする行為はマズイです。
会社の安全対策や意識を疑われてしまいますから。
 
難しいのは、危険な行為ではなく、安全でない行為も、世間から批判を浴びる可能性があることです。
例えば、事例にも挙げたような、フォークリフトの爪に人を乗せて走り回るような行為は、明らかに危険な行為です。
一方、ヘルメットの着帽が義務付けられている港湾地域や工場内などで、ヘルメットをかぶっていない行為は、安全ではない行為です。
 
新入社員向けの導入研修では安全ルールのレクチャーを行いますが、SNS研修ではもう一歩踏み込み、安全でない行為(もっと言えば、安全ではないと誤解されかねない行為)に対するレーダーも鍛えなければなりません。
 
さらに、お客さまや取引先に関する情報漏洩も、絶対にマズイ行為です。
「うちの担当者の○○が、本当に嫌なやつでさぁ」なんて愚痴は、社外はもちろんですが、社内でも拡散してはいけません。
 
余談ですが、ある大企業(※毎年、50名前後の新入社員が入社)において、新入社員の発案で、同期新入社員だけ参加できるSNSコミュニティを立ち上げたことがありました。夏が過ぎ、ある新入社員から、「同期コミュニティがどうもマズイことになっている」と人事担当者は相談を受けます。
人事担当者は、その新入社員のアカウントを借り、コミュニティを覗いたところ、コミュニティ内は、部門内機密情報と、お客さまに対する愚痴でいっぱいだったそうです。
 
ここまでの話ではなくとも、愚痴や不満は、SNSに投稿したくなる内容の代表格でしょう。
SNSで愚痴を書くなとは言いませんが、個人や企業を特定できるような内容は書くべきではありません。
また、物流企業の場合、荷物が写っている写真、セキュリティやノウハウに関わるような設備の写真などをSNSにアップしてはいけないことも、知って貰う必要があります。
 
これまた余談ですが、過去に「こんなオタクグッズ、誰が買うんだろう?」と発売前のアニメグッズをSNSに投稿している知人(トラックドライバー)がいましたが、これも絶対にやってはいけないことの一つです。
 
他にも考えなくてはならないこと、伝えなければならないことはたくさんあるのですが。
 
研修は難しいですね。
高卒であれ、大卒であれ、成長過程にあることを踏まえ、将来の糧になることを意識して研修を行う必要があります。
 
当社の場合、高卒新入社員たちは、まだSNSを十分に活用していません。
SNSをいたずらに怖がるような脅しだらけの研修にもしたくありません。繰り返しますが、SNSは正しく使えば、人生を豊かにしてくれる可能性あふれるツールですから。
 
SNS初心者である新入社員らが、5年10年とSNSを使い続け、SNSに対する価値観が変わっていく将来においても、役に立つSNS研修を目指し、試行錯誤しつつ今年もSNS研修の準備を進めています。
 
 
 


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