秋元通信

百貨店やダイエーの凋落、倉庫と共通する箱物ビジネスから考える

  • 2022.5.30

セブン&アイ株主総会 そごう・西武 売却含めあらゆる選択肢“(2022年5月26日)
 

「流通大手のセブン&アイ・ホールディングスの株主総会が26日開かれ、井阪隆一社長は、不振が続く傘下のデパート『そごう・西武』について、売却を含め、あらゆる選択肢を検討していく方針を改めて示しました」

 
そごう・西武に限らず、地方の百貨店も次々と閉鎖されています。
百貨店の凋落は止まらないのでしょうか?
 
箱物ビジネスという観点から、倉庫ビジネスとの共通点も探りながら考えましょう。
 
 
 

昭和の量販店の雄、ダイエーはなぜ没落したのか?

 
もちろん、原因は複数あります。
例えば、ダイエーは商社やメーカーなどに対する態度が横柄で有名でした。
まあ、昔の量販店は、どこも横柄でしたけど。イオンなどは、某化粧品メーカーの役員を激怒させて、取引を停止されたことがありましたし。
 
経営が苦しくなったダイエーに対し、それまでバイヤーや店長などにいじめられていた商社・メーカーの営業が、「それ見たことか!?」と愛想を尽かし、協力しなくなったという話も聞きます。
 
2000年前後、僕は九州にいて、ダイエーを担当していました。
あるメーカーの先輩営業と呑んだとき、その方が語ったのは店舗の老朽化でした。
 
創業30年の1987年にスーパー業界初の全国制覇(と言っても島根県を除いてだそうですけど)を実現したダイエーは、自社物件にこだわりを持っていたそうです。
ホントかウソかは知りませんが、店舗スペックがやがて時代の流れから取り残されていくことは、経営陣も予測していたと、先輩は語ります。
問題は、店舗スペックが時代遅れになる頃には、十分な利益を得て店舗の建て替えができるだけの財力を蓄えられる、と考えていたことだそうです。
 
今も残るダイエー(ないし旧ダイエー)の店舗を見ると、照明が暗い、天井が低い、柱が多い、エレベーター・エスカレーターが狭い(小さい)といった、箱としての魅力が欠けていることに気が付きます。
これは、僕がダイエーに出入りしていた2000年頃からすでに明らかでした。当時、九州・中国地区に次々と出店していたゆめタウン(イズミ)のショッピングモールと比べると、ダイエーの店舗に魅力が欠けているのは一目瞭然でした。
 
 
 

大戦艦主義の失敗

 
ダイエーは総合スーパー(General merchandise store / GMS)であることにこだわっていました。食品から生活雑貨、洋服、家電に至るまで、自社でラインナップすることにプライドがあったのでしょうね。
そもそも、自社物件の設計思想も、「ダイエーの店舗」であることが基本でした。現在主流のショッピングモールを実装できる箱ではなかったのです。
 
「ダイエーという大戦艦があれば勝利は確実だ!」──ショッピングモールを、複数の巡洋艦やら空母を束ねる艦隊主義だとすれば、ダイエーのそれは、1隻の大戦艦に勝利を委ねる大戦艦主義ではないでしょうか。
 
大戦艦主義では、多様化する消費者のニーズに応えることができませんでした。見た目、例えば家電コーナーを別ブランド化し、ショッピングモール風なテイストを演出したこともありましたが、消費者は騙されません。
 
ダイエー凋落は、ダイエー流店舗という箱が時代遅れになったことが一因だったのでしょう。
 
 
 

倉庫の「箱」は時代遅れになるのか?

 
難しいですね。
と言うのも、量販店(小売ビジネス)と比べ、建築物としての倉庫に求められるスペックは、そこまで大きく変わってはいないからです。
とは言え、高まりつつあるスペック要求もあります。
 
例えば空調です。
主婦や学生のパート・アルバイトなどを大量に必要とするEC系倉庫では、空調の設置は必須となりつつあります。夏は暑く冬は寒い環境では、人も定着しませんし集められないですから。
 
床耐荷重に対する要求も高まりつつあります。
自動ラックや物流ロボットなどを導入することを考えると、これまでの1.2~1.5t/平方メートル程度の床耐荷重では不足し、2.0t/平方メートル以上のスペックを必要とするケースもあります。
 
 
 

エコシステムの形成という、新たな要求

 
また、最近私が感じるのは、共同ビジネス体としてのゆるやかな一体感です。これは箱というハードの観点ではなく、ソフトの観点からの見方です。
「共同体としてのゆるやかな一体感」とは、前述の艦隊主義にあたるもので、最近よく使われる言い方をすれば、エコシステムの形成ということになります。
 
倉庫が集まった地区は全国にあります。
当社本部のある芝浦ふ頭もそうですし、湾岸部にも内陸部にも「**団地」などと呼ばれる倉庫集合地区は無数に存在します。ただし、これは物理的に倉庫同士の距離が近いだけです。「挨拶はするけど、ビジネス上のつながりはない」、そんなケースがほとんどでしょう。
 
最近の大手物流不動産ディベロッパーでは、万坪クラスの倉庫を、同じ敷地内に複数建築するケースが出てきました。さらに、テナント同士の情報交換やビジネス連携をディベロッパーが斡旋することで、ゆるやかなエコシステム(生態系)を演出するケースが見受けられます。
幹線輸送に強い運送会社、宅配に強い運送会社、TC型・DC型それぞれに強みを持つ倉庫会社などがエコシステムを形成しているエリアがあれば、メーカーや商社も集まってきます。
言ってみれば、物流機能を軸とした城下町が形成される流れが、少しづつですが生まれているのです。
 
 
私は、池袋西武、池袋東武によく行くのですが、建物の古さを感じます。天井は低いですし、増築を繰り返した店舗は客導線もよくありません。
失礼ながら、郊外に比較的最近できたイオンモールやららぽーとと比べると、箱としての魅力は明らかに見劣りします。
百貨店の凋落は、箱物ビジネスの根本である「箱」の魅力低下が間違いなく影響していると、私は考えています。
 
倉庫ビジネスに関して言えば、小売ビジネスほど極端な「箱」の価値低下はありません。
ただし、極端ではないにせよ、古い倉庫では価値低下はありますし、価値観の変化が起きつつあります。
 
2024年問題、フィジカルインターネット、無人・自動倉庫の普及など、これから迎える物流ビジネス転換期が、求める「これからの倉庫」ってどういうものなのでしょう?
物流ビジネスに関わる私たちは、注視していく必要があるでしょうね。


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