秋元通信

派遣ドライバー記事から考える、あえてネガティブな情報も記事にするメリットとは

  • 2022.7.21

先日、Yahoo!ニュースにこんな記事を執筆しました。
 
「派遣トラックドライバー」は物流危機を救えるか? サポート体制は年々強化、かつては数日で逃げ出すことも
 
本記事では、ドライバー派遣を行っているランスタッド:福島さまに取材させてもらっています。
記事をご覧いただくと分かりますが、私自身の経験も踏まえ、テーマである「ドライバー派遣」について、かなり否定的なことも書いています。にも関わらず、福島さまいわく、本記事公開後の反響は上々だそうです。
 
例えば、あなた自身、もしくはあなたの会社が、メディアに取り上げられるとしたら、「なるべく良いことだけを取り上げて欲しいよな」「できれば、ネガティブな情報は書かないで欲しい」と思うのは、当然だと思います。
ただし、あちこちのメディアで執筆している私自身の経験から思い起こしても、美辞麗句で固めた記事というのは、意外と反響が少ないです。
 
どうしてなんでしょうね?
 
 
 

メディアへの圧力を止めた、ある世界的IT企業のケース

 
ある世界的なIT企業の話です。
 
同社は自社のことを取り上げるメディアに対し、厳しい注文をかけることで有名でした。メディア側は、同社の注文(ある編集者は、検閲と表現しました)に辟易しながらも、ITビジネスで存在感のある同社の動向を取り上げないわけにはいきません。各メディアは、同社の注文を嫌々ながら受けていれていたわけです。
 
ところがです。ある日突然、同社はメディアへの注文を止めたのです。
それまで同社に確認を取らず、否定的な報道を行った場合、あれやこれやと嫌味を言われることもあったそうですが、そんなこともまったくなくなったそうです。
 
背景にあるのは、同社がクラウドビジネスの展開で出遅れたことだと考えられています。(と書くと、どの企業なのか、わかってしまうかもしれませんが)
 
もともとメディアに対し、高圧的な態度を取り続けてきた同社です。クラウドビジネスで出遅れたことが災いし、メディアへの露出が急に減ってしまったのです。
 
「そもそもニュースにできるような話題が乏しいのに、これまでのような高圧的な態度を取り続けていたら、わざわざ記事にはしませんよ」──そのように揶揄する編集者もいましたけれどもね。
 
結果として、同社のメディア露出は大幅に復活したそうです。それだけではなく、同社に対する問い合わせ数や、同社主催のセミナー数も、以前よりも増えたそうです。
 
 
 

ポイントは、事実を伝えること

 
勘違いの無いように申し上げると、ポイントはネガティブな情報を伝えることではありません。
大切なのは、事実を伝えることです。
 
事実が美辞麗句だけならば、わざわざネガティブな情報を加える必要はありません。
しかし、世の製品やサービス、ビジネスなどには、ポジティブな要素、ネガティブな要素がつきものです。あくまで一般論ですけど。
 
美辞麗句だけで記事や番組を飾るというのは、読者や視聴者をおとしめる行為です。
少々厳しい言い方をすれば、「事実のすべてを伝えなくとも、読者・視聴者は納得するだろう」ってことですから。
 
しかし、賢い読者・視聴者は、騙されません。
「なんか良いことばっかり書いている(放送している)けど。きっとネガティブな情報だってあるはずだよね」
 
そのように気がついてしまった読者・視聴者は、記事・放送の価値そのものに疑いを持ちます。結果、取材される側の、「うちをアピールしたい」という想いは、実現が難しくなってしまうのです。
 
 
さて、先の派遣ドライバーの記事に話を戻しましょう。
トラックドライバーの人手不足は深刻です。ただし一方で、「派遣ドライバーに任せて、ウチの配送品質は保つことができるの??」と思ってしまうのも、運送会社側の本音でしょう。
 
今回のケースでは、否定的な意見を持つ人も少なくないがゆえに、きちんとネガティブな情報も隠さず記事にすることで、記事の説得力が増し、「じゃあ、ちょっと問い合わせてみようかな?」と思う方が増えたのでしょう。
 
ネガティブな情報を出す、というのは、なかなかに勇気がいることですけどね。
   


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