秋元通信

水道橋は、なぜ「水道」橋なのか?【神田川を源流から河口まで走る / おとなの自由研究後編】

  • 2022.8.31

聖橋から御茶ノ水駅を望む。神田川では、もっとも有名なショットでしょう。

聖橋から御茶ノ水駅を望む。神田川では、もっとも有名なショットでしょう。


 
 
さて、おとなの自由研究「神田川を源流から河口まで走る」の後編です。
前回は、源流のある井の頭公園から高田馬場まで、神田川の流れをたどりました。今度は、高田馬場から浅草橋付近で隅田川に合流するまでの約8kmをたどります。
 
ちなみに、今回はマイ自転車ではなく、シェアサイクルで走ります。
 
前回と違い、すっかりお気軽なスタイルです。

前回と違い、すっかりお気軽なスタイルです。


 
残り8kmですからね、前日までの完全武装スタイルが冗談のようです。ただし、首には冷却式ネッククーラーを巻き、カバンには保冷機能を備えたボトルが入っています。
では、後半をお届けしましょう。

 ※画像はすべてクリックで拡大します。

 
 

神田川の瀬替えの歴史をたどる、高田馬場から飯田橋付近

 


 
 
もともと、神田川は平川と呼ばれていました。
後ほどご紹介する神田上水が引かれ、江戸の町に上水を提供するようになってからは、上流部分は神田上水、下流は江戸川、さらに現在の御茶ノ水よりも下流側は神田川と呼ばれるようになりました。
現在のように、川全体を神田川と呼ぶようになったのは、明治に入り、神田上水が廃止されてからだそうです。
 
明治通りとの合流付近から、江戸川橋駅(東京メトロ有楽町線)までの2km弱は、神田川沿いにおいて、もっとも明媚な区間です。特に桜の季節は素晴らしいです。
都電に乗り、面影橋駅までのんびりとした気分で鉄分を補給、神田川沿いを歩き、途中、ホテル椿山荘でランチを味わい、江戸川橋公園を抜けて、江戸川橋駅まで歩く…、僕は都内でも有数の散歩コースだと思います。
 
 

 
 
ホテル椿山荘を過ぎ、江戸川公園を歩いていると、「神田上水取水口の石柱」なる立て札があります。
発展する江戸の街に住む住民たちの生活を支えた神田上水は、ここ(厳密に言えば、100mほど上流付近)から神田川と、神田上水へと分岐していたのです。
 
 

 
 

水道の歴史を学ぶ、東京都水道歴史館へ

 
江戸川橋駅を過ぎ飯田橋交差点まで、神田川は首都高の下を流れます。
江戸時代には、江戸屈指の桜の名所だったようですが…、今となっては巨大な用水路でしかありません。神田川は、飯田橋交差点で左に曲がります。曲がってすぐ、日本橋川が分岐しますが、神田川は水道橋を経て御茶ノ水へ流れます。
 
かつて、湯島から現在の御茶ノ水付近は、神田山と呼ばれる丘でした。
二代将軍 徳川秀忠から、神田山を切り拓く難工事を命じられたのが、仙台藩藩祖 伊達政宗です。
 
もともと神田川は、神田山にぶつかり、現在の駿河台下方面へ南流していたとされます。なぜ、わざわざ山を切り拓くような手間を掛けたのでしょうか。
理由としては、洪水対策、江戸城の守りを固めるなどが挙げられていますが、どうも納得がいきません。東北の有力大名であった伊達藩のチカラ(財力)を、山を切り拓き瀬替えを行うという難工事によって削ぐというのが、最大の理由であった気がするのですが…
 
どちらにせよ、伊達政宗自ら陣頭指揮を取ったと伝わるこの難工事によって、現在も残る、御茶ノ水付近の特徴的な風景が形成されたのです。
 
 


 
 
水道橋から順天堂大学方面へと坂を上り、順天堂大学の手前で左に入ると、東京都水道歴史館があります。
ここ、とてもオススメです。
東京における水道の歴史を網羅的に学ぶことができて、しかも入館無料ですからね!
いくつも魅力的で知的好奇心がくすぐられる展示があるのですが、一つだけご紹介しましょう。
 
 

 
 
現在の水道橋(水道橋駅(JR)北東側にある橋)から、神田川の左岸に沿って、川寄りの歩道を少し歩くと、かつて懸樋(かけひ)と呼ばれる橋があった旨の石碑があります。これは、神田上水を神田川を渡すために設けられた橋であり、上水を通すための水道管が設けられていました。これが、現在に残る水道橋という地名の由来となります。
 
他にも、東京都水道歴史館には魅力的な学びがたくさんあるのですが、それは皆さまが実際に足を運び、確かめてください。
 
 
 

そして河口へ

 


 
 
水道橋から秋葉原までは、神田山を越えることもあり、神田川のすぐそばを走ることはできません。右岸側、左岸側、どちらを走っても神田川に再びたどり着けますが、途中、聖橋(御茶ノ水駅近くに架かる、東京駅寄りの橋)からの眺めは、ぜひ堪能していただきたいです。
 
秋葉原の街を抜け、浅草橋へ進むと、神田川に係留される屋形船が目立ち始めます。
かつて花街(花柳)が広がっていた名残が、屋形船という形で現代に引き継がれているのでしょう。
 
そして、河口へ。
神田川と隅田川が合流する地点が、今回のおとなの自由研究の終点です。
 

 
 
さて、今回の振り返りをしてみましょう。

  1. サイクリングとして楽しいのは、井の頭公園から環七を過ぎたあたり(丸ノ内線 中野富士見町手前)まで。
  2. 1.の区間は、サイクリングとしては楽しいけど、見どころは意外と少ない。
  3. 一方で、1.の区間であれば、お子さま連れでもサイクリングを楽しめるでしょう。
  4. 中野富士見町付近から高田馬場駅付近までの約5kmは、クルマ止めが多く、自転車で走るには精神的ストレスが溜まる。
    ちなみに、道幅が狭いところ、また路面が荒れているところも(ところどころとは言え)あって、注意が必要。
  5. 面影橋駅付近~江戸川橋駅付近の神田川沿いは、都内屈指のお散歩ルート。特に桜の季節は最高!
  6. 後編でご紹介したルートは、子どもの自由研究テーマとしても適切かも。江戸上水の歩みをたどることができるという意味で、とても自由研究に適している。
  7. 後編でご紹介したルートであれば、徒歩でもOK。もしくは徒歩と電車でも楽しいかも。

 
前後編に分けてお届けした、おとなの自由研究「神田川を源流から河口まで走る」はいかがだったでしょうか。
 
神田川は、都心を流れる河川の中で数少ない暗渠化されていない河川です。だからこそ、こういう企画が成立するわけですが。
実は、私がこの企画を思いついたのは、以前自転車仲間の友人に連れられて、石神井川を源流から河口まで走ったからです。なので、本記事をご覧になって、「おもしろそう!」と思った方は、石神井川でチャレンジするのもオススメです。
 
マジメな記事だけではなく、たまにはこういったお遊び企画もお届けしたく存じます。
お楽しみに!
 
 
 

今回の走行ルート(GPS計測データ)

 

 
 
 

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