15年ほど前、ニューヨークはウォールストリート界隈でとても話題になった噂話があります。
これは、ある女性が、JPモルガンの当時のCEOに送ったメールと言われています。
私は、とても美人で聡明な女性であり、最低でも年収ハーフミリオン(6千万円以上)の結婚相手を探しています。
ところが、私がこれまで付き合ってきたのは、せいぜい年収25万ドルくらいの男性ばかり。世の中には、私よりもイケていないにも関わらず、お金持ちの男性と結婚している女性もいるっていうのに。
どうすれば、お金持ちの男性と結婚することができますか?
一連のエピソードそのものが、どこまで真実かは分からないのですが、この傲慢な女性(とあえて言いましょう)に対し、JPモルガンCEOが投資家の立場から考え、返事をしたとされる内容が、とても示唆に富んでいます。
私は、年収条件から考えると、君の理想の結婚相手には足り得るのだろうけど…。
私は、君と結婚するのはゴメンだね。理由を投資家としての目線から説明しよう。
君は、自分の美しさと引き換えに、金持ちの男性と結婚することを希望している。
だけど、美しさというものは、年齢とともに失われてしまうものだよ。つまり、投資対象として見た君は、今がピークであり、今後加齢とともに、君の価値は失われていくわけだ。
対して、私の場合は今の価値が決定づけられたものではなく、今後も私の年収は上がっていく。すなわち私の価値は、今後も上がり続けるわけだ。
これ以降、価値が下がる君に対し、価値が上がり続ける私が結婚する?、それは投資としてナンセンスだよ。
まあもっとも、君が一時的な遊びとして私を求めるのであれば、いつでも声を掛けてくれまえ。
このエピソードは、あれやこれや派生バージョンがあるので、筆者が今も残るWeb上のエピソードを適当につなぎあわせ、修正しました(だから、「ホントは**じゃないの」的ツッコミはご容赦くださいね)。
ちなみに、筆者自身が当時確認したエピソードは、JPモルガンのCEOではなく、著名な投資家の返事だったし、トーンはもっと露骨だったと記憶しています。
いずれにせよ、女性の側も、男性の側も嫌味な人ですね。
先のエピソードにおける女性が、読む人に反感を与えるのは、コバンザメ的な発想で自分自身は大した努力をすることなく、人が羨むようなポジションを求める点にあります。
対して男性側は、女性の美を投資対象物として検証することで、この女性の傲慢さを論破している…つもりなのでしょうが、歳を重ねるごとに美しさを増す女性の存在を、私たちは知っているはずです。
女性の美に対する価値基準を年齢にくくってしまっていることは、とてつもなく不愉快です。
ただし残念ながら、他人への評価を将来の成長も見据えたうえで判断するのではなく、固定されたもの、もっと言えば換金可能なものとして判断する人は間違いなくいます。
私が30代の前半で、転職活動を行ったときのことです。
ある専門商社の面接で、私はその会社の社長から、以下のような質問を受けました。
「君がウチに転職した場合、君は何社の客をウチに持ってこられる?」
質問の意図を問い直した私に、社長は少しイラついたように言葉を重ねました。
「君だって、これまで法人営業をしてきたわけだろう? ウチは法人相手に商売をしているんだ。君の今までの客の中で、ウチの客にできる会社が何社あるのかを聞いているんだよ。
私は君の返答をもとに、君がウチの社員になった場合、売上がどれだけ伸びるのかを考える。
最終的に採用するのは、ウチに一番たくさんの売り上げを持ってこれそうな人だけどね」
こういう業界は無いわけではありません。
「新規顧客開拓」イコール「ライバル企業の営業を引き抜くこと」という業界です。
ただ、私は件の会社と同じ業界に勤めていたわけではありません。
あえて異業種に転職して、自分自身成長していきたいと考えているところに、あまりに露骨な形の値踏みをされたわけです。
とても、とても不愉快でした。
ある程度年齢のいった人を採用する場合、完成された能力と結果を求めるのは、企業として当然でしょう。年齢がいった人は給与も高くなりますし、それまでの社会人としての経験値を新天地で活かせないような人は、そもそも問題です。
でも、どんな年齢の人を採用するにしても、当人の伸びしろや成長意欲を、はなから期待しないような採用方法、企業は問題ではないでしょうか。
一方で、求職者の中には、最初からぶら下がり社員マインドを目指して、就職活動を行う人もいます。
参考
ぶら下がり社員を考える 【前編 / ぶら下がり社員とフリーライダー】
成長しようという覚悟も気概もない人。
社員を成長させようという覚悟も気概も、さらに言えば取り組みもない企業。
どっちもどっちです。
このような人であったり、企業に欠けているのは、「停滞することは退化することと等しい」という危機感です。
VUCAの時代と言われ、社会環境も経済もすさまじいスピードで変化していく今、成長を目指すこともなく、今と同じ明日が必ず来ると思いこんでいるのは、あまりにも能天気です。
より良い待遇を求めて転職を繰り返す人。
より良い人材を求めて採用を繰り返す企業。
どちらも、いずれジリ貧になるでしょう。
ところで、Googleトレンドでキーワード「玉の輿」を検索してみました。
Googleトレンドでは、2004年以降、Googleで検索されたキーワード「玉の輿」の動向を確認することができます。
すると、玉の輿ってキーワードの検索数、ずいぶんと減っているんですよね。
最盛期と比較すると、最近の検索数は半分以下です。
もしかすると、玉の輿という発想そのものが、(本稿で論じるまでもなく)世の中からなくなりつつあるのかもしれません。
ちなみに、玉の輿を検索することが多いのは富山県、次いで京都府、奈良県と続きます。
なぜなんでしょう?