秋元通信

秋元通信が考える、2022年物流3大ニュース

  • 2023.1.18

メルマガ『秋元通信』、2023年最初の記事は、秋元通信流にピックアップした、2022年の物流3大ニュースをお届けします。
 
 
 

フィジカルインターネットのロードマップ公開

 
2022年3月8日、経済産業省と国土交通省は、フィジカルインターネットのロードマップ を公開しました。
 
フィジカルインターネットは、(ざっくりとまとめてしまうと)輸送と貨物に関するあらゆる規格を標準化し、また標準化によって得られた情報を共有することで、国内の貨物輸送網を巨大な共同配送に仕立てようという試みです。
 
詳しくは、一昨年にお届けした過去記事をご参照ください。
 
フィジカルインターネットとは?、秋元通信流に噛み砕いて解説
 
昨年公開されたロードマップを大まかに振り返ると…

  • 2030年までに、業界別の「フィジカルインターネットの姿」を模索し、
  • 2035年までに、各々取り組みを進化させて、
  • 2040年までに、フィジカルインターネットを社会実装させる

 
というものです。
 
ロードマップの内容や実現可能性などについては、議論があろうかと思います。筆者も、「もっと詰めるべきだったのではないか?」と思う部分はたくさんあります。
ただし、ロードマップがなければ、このような議論も生まれないわけですから。
このロードマップが生みだされたことには、とてつもなく大きな意義があるでしょう。
 
物流業界の課題は、個々の企業努力でどうにかなるレベルのものではなく、根本的(あるいは構造的)にゲームチェンジする必要に迫られています。私たちが、これまで常識だと思っていた物流ビジネスを、根本から変革していかなければ、現在、そしてこれからさらに深刻化する物流危機を回避することは不可能です。
その意味で、2022年にフィジカルインターネットのロードマップが示されたということは、今後の物流ビジネスにおけるマイルストーンとなる可能性があります。
 
 
 

「現実的な」物流ロボットの台頭

 
言うまでもないことですが、物流業界の人材不足はトラックドライバーに限ったことではありません。倉庫作業員も、人手不足に直面しています。
倉庫作業員の人手不足に対する直接的な解決策となるのが、自動倉庫を含む物流ロボットによる倉庫内作業の自動化技術です。
 
ただし…
倉庫内の自動化に関しては、「荷役を含めた、入庫から庫内作業(仕分け、流通加工、包装など)、出庫までの一連の倉庫作業が全部、しかも完全に自動化できなければ、物流ロボットなんて意味がないと思うんだよね」という意見が根強くあります。こういう意見を主張する人は、完全自動化を実現することが難しい現在の物流ロボットにおける技術水準、あるいはラインナップを、「中途半端だ!」あるいは「使えない」と一刀両断する傾向があります。
確かに、気持ちはわかるんですけどね。
 
こういった意見がある一方で、「人との協働」、すなわち人とロボットがそれぞれの得意分野を分担することで倉庫内の作業を効率化できる物流ロボットが台頭してきています。
「t-Sort」(+Automation)や、ラピュタロボティクスのロボット&ソリューション群などは、「人と協働するロボット」の牽引役と言えます。
 
もうひとつ、こういった協働型物流ロボットソリューション(と命名しましょう)は、サブスクリプションサービスとして、つまり月額課金形式でロボットを提供しています。よって、ユーザー側はよりリーズナブル、よりローリスクで、物流ロボットを利用できる環境が整いつつあります。
「人と協働する」ロボットをどれだけ効率的に稼働させられるかどうかは、ユーザー企業側の工夫とアイデア次第でもあります。
つまりは、同じ物流ロボットを利用しても、10の効果しか出せない企業と、100の効果を引き出せる企業が生じているのも、これまたおもしろいです。
 
2023年は、さらにさまざまな物流ロボット(あるいはその関連ソリューション)が登場することでしょう。
 
 
 

「あなたのブツが、ここに」──宅配ドライバーの苦労が、多くの視聴者の涙を誘う

 
2022年8月から放送開始されたNHKよるドラ『あなたのブツが、ここに』は、コロナ禍を宅配ドライバー(軽貨物自動車配送)として奮闘するシングルマザーを主人公としたドラマです。
このドラマ、あまり物流業界では話題になりませんでしたが(LNEWSや物流ニッポンが特集記事を組んだくらい?)、もっと注目されてしかるべきだと思います。
 
少しだけ、ストーリーを紹介しましょう。
 
主人公の山崎亜子(仁村紗和)は、小学生の娘を女手ひとつで育てるシングルマザーのキャバクラ嬢です。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴いキャバクラは休業。さらに亜子は給付金詐欺に騙され無一文になり、やはりシングルマザーとして亜子を育てた母 山崎美里(キムラ緑子)が営む尼崎市のお好み焼き屋に転がり込みます。
 
亜子はキャバクラの客として来ていたマルカ運輸社長 葛西信夫(岡部たかし)を頼り、マルカ運輸で宅配ドライバーとして働き始めます。葛西の、「宅配ドライバーは、時給5000円稼げるから」という下心丸出しの甘言にのったわけですが。
 
宅配ドライバーとして働き始めた亜子は、マルカ運輸のエースで、先輩ドライバーの武田浩三(津田健次郎)の猛烈なパワハラと、理不尽な要求をする配達先の客たちに打ちのめされます….
 
 
というのが前半のあらすじです。
 
元トラックドライバーの筆者としては、「ドライバーで時給5000円なんて稼げるわけ無いだろう!!」という葛西に対する怒り、それを信じ、ドライバーという仕事をなめてかかる亜子に対する苛立ち、配達先の客たちの理不尽に対するやるせなさ、そして武田のパワハラに対する怒りと共感と焦燥感がないまぜになった複雑な感情が、次々と湧き出してきて、とてもしんどかったです。
 
やがて仕事にも慣れ、武田にも認められていく亜子ですが、さらなる受難が降りかかります。
配達先の家庭で行われていた子どもへの虐待、愛する娘に対するいじめ、そして亜子に想いを寄せる同僚ドライバー 峯田健太(佐野晶哉)が引き起こしてしまった人身事故など…
 
巣ごもり需要による宅配取扱量激増によるストレスに加え、峯田の事故に心を痛めていた亜子は、配達中のアクシデントでついに心が折れます。
軽貨物車のかたわらで頭を抱え、泣き崩れる亜子を救ったのは、武田を始めとするマルカ運輸の仲間たちでした。
 
「なんやお前、あとちょっとやないか。こっからはお前の仕事や。踏ん張れよ!」──武田が亜子を励ますシーンは…、もう見ている私も涙ボロボロでした。
 
ドラマゆえ、「えっ!?」と思うシーンはたしかにありました。
大型トラックと称して、4tデコトラが登場したシーンは、(ストーリー上はかなり重要なシーンではあるのですが)「いや、それはないでしょ…」とのけぞりましたけど。
 
細部はともかく、社会のインフラたるドライバーの心情と現状を見事に描き、そして何よりも物流という仕事のもっとも美しい部分を見事に描いたドラマが、大きな話題を生んだことは、物流業界にとって追い風になったはずです。
 
物流を舞台にしたドラマが、これだけ話題になるなんて…
「私たちは、物流という仕事に、もっとプライドを持って良いんだな」と思えたドラマでもありました。
 
 
 
以上、秋元通信流に選んだ2022年の物流3大ニュースをお届けしました。
皆さまの記憶に残る2022年の物流トピックはなんだったでしょうか。
 
2023年はどんな一年になるのでしょうね。
願わくは、明るい兆しの多い一年となって欲しいです。


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