秋元通信

変わる「高速道路の深夜割引制度」、その変更点を読み解く

  • 2023.1.30

「深夜0時から4時の間に、ETCを用いて、高速道路を通行する車両について、通行料金を3割割引する」──おなじみの高速道路深夜割引制度ですが、この制度が、2025年を目処に見直されます。
 
この深夜割引制度には、大きな問題点がありました。
割引の適用を目指し、0時ちょうどのインターチェンジ(あるいは料金所)通過を目指す(主に)トラックを中心に、PA・SAの混雑、渋滞、あるいは東名道の東京料金所などでは、料金所手前の本線上に駐車する車両などがいることです。
 
0時直前の東京料金所などを通行したことがある人はご存知でしょうけれども。
料金所の通過ゲートにあわせて、道路幅は大きく横に広がっているとは言え、本線上にトラックが何台も何列も連なっているさまは、やはり異常ですよ。
 
一般ニュースなどでも問題視される本課題について、本稿では、東日本・中日本・西日本の高速道路各社が打ち出した対策をご紹介します。
 
これ、特に長距離輸送を行う運送会社にとっては悩ましいことになりそうです。
 
 
 

変更のポイント

 

今回発表された深夜割引の見直し案では、適用時間帯を拡大した上で、適用時間帯内に実際に走行した分だけを割引対象にする方針が打ち出された(※画像は、発表資料より)

今回発表された深夜割引の見直し案では、適用時間帯を拡大した上で、適用時間帯内に実際に走行した分だけを割引対象にする方針が打ち出された(※画像は、発表資料より)


 
現在明かされている変更の概要は以下の通りです。
 

  • 深夜割引適用時間帯に走行した分のみ3割引
  • 深夜割引適用時間帯を22時から翌5時に拡大
  • 深夜割引の見直しにあわせて、400km超の長距離逓減(ていげん)制を拡充

 
さらに、変更後5年程度は、以下の緩和措置を行うとしています。
 

  • 深夜割引適用車両のうち1,000km以上走行した場合は、1,000kmを超える部分を割引対象走行分に追加
  • 22時台に高速道路を流出した車両について、22時台に走行した分は、深夜割引の割引率を2割とする

 
「400km超の長距離逓減制」について、補足しましょう。
 
変更後は以下のように割引されます。
 

長距離逓減制については、400km超の走行について、割引率アップを図る予定(※画像は、発表資料より)

長距離逓減制については、400km超の走行について、割引率アップを図る予定(※画像は、発表資料より)


 

  1. 100kmまで→値引きなし (現行通り)
  2. 100~200km→25%割引 (現行通り)
  3. 200~400km→30%割引 (現行通り。現行は、これ以上距離が伸びても3割引のまま)
  4. 400~600km→40%割引(+10%割引)
  5. 600~800km→45%割引(+15%割引)
  6. 800km以上→50%割引(+20%割引)

 
より長距離を走る車両にとってはメリットが出る場合もあるでしょうね。
 
 
 

新割引制度の問題

 
今回の案内では、以下の補足があります。
 
「ただし、これらの割引(新深夜割引と長距離逓減制)は、「後日還元型による割引制度に変更となります。(出口料金所等では通常料金(割引適用前)が表示されます)」
 
ということは、ポイント自動還元サービスを利用していない(※利用するほど、高速道路の利用が多くない)ユーザーは、ポイントの期限切れを起こさないよう、定期的にETCマイレージサービスにログインしてチェックする必要があります。そうしないと、そもそも割引サービスの恩恵が受けられないですからね。
 
「ETCでチェックされた時点」で割引対象となるかどうかを判定する現行の制度に対し、今回示された新割引制度では、「走行した距離と時間」によって割引対象になるかどうか、その割引額がいくらになるのかを判定することになります。
 
さらに厄介なのは、「自身がどれくらい割引の恩恵を受けられるのかどうか?」が分かりにくい点です。特に、運送会社にとっては、割引を受けられるように配車そのものを変更するケースもありますから。
 
 
 

新割引制度で得をするケース

 
では、テストケースを想定して考えていきましょう。
 
 

中途半端な夜間配送や早朝配送を行っているケース

 
例えば、23時に帰社する運送コースや、4時に出発する運送コースの場合、1時間あまりのわずかな走行かもしれませんが、高速道路通行料金が割引になります。
 
 

昼間(※0時~4時以外)に、400km以上の高速道路走行を行う場合

 
長距離逓減制により、40%以上の割引が受けられます。この場合、メリットは大きいですね。
 
 
 
◇ 新割引制度が適用されても変わらないケース
 

一回の運行で、1000km以上走行するケース

 
この場合、今までと変わらないです。
というのも、「深夜割引適用車両のうち1,000km以上走行した場合は、1,000kmを超える部分を割引対象走行分に追加」するとあるからです。
 
もちろん、5時~22時の17時間で1000km以上走ってしまう(例えばツーマンでの運行など)も、中にはあると思いますが、そもそもこういう運行は、現状も深夜割引の恩恵を受けていませんから。
 
 
 

新割引制度で損をするケース

 

22時~5時の間で休息を取っているケース

 
例えば、宵積みで出発し、22時まで走行してから8時間(つまり翌朝6時まで)の休息を取った場合、新割引制度の対象となる22時~5時の間には、1kmも走っていないので、割引額はゼロになります(※長距離逓減制の対象にはなります)。
これは痛いです。
また、2024年4月からは、休息時間が9時間に伸びる上、11時間の休息時間(※勤務間インターバル)が努力義務となります。当然、長距離輸送ドライバーの中には、「いや、22時から5時なんて、絶対に走らないし…」というケースも出てくるでしょう。
 
 
 

新割引制度から思うこと

 
筆者の憶測ではありますが、今回発表された新割引制度は、夜間におけるPA・SA駐車場不足問題の対策も考えているのではないでしょうか。
 
22時~5時の実走行距離に対する割引制度ということですから、各運送会社の配車マンの脳裏には、「だったら22時~5時は走らせるべきだよね。休ませている場合じゃないよ!」という考えが浮かぶでしょう。
となれば、結果的にSA・PAの駐車場不足問題も解消するベクトルが働くはずです。
 
現行の深夜割引には、車両の通行が少ない深夜帯にトラック運行をシフトさせることで渋滞の対策になるといった目論見もあったはずです。これに逆行する可能性もあるのではないでしょうか。
 
 
今回、高速道路各社が共同発表したリリース文には、以下の一文があります。
 
「深夜割引の割引適用待ちなどにより、トラック運転者等が深夜時間帯に運転せざるを得ない状況もみられ、結果として労働環境の悪化の要因になっているとも捉えられる」
 
逆じゃないですかね。
むしろ「深夜時間帯に運転せざるをえない状況」が加速する気がします。
 
 
とは言え、「じゃあどんな制度が適当なの?」と言われると難しいです。
組み立てとしては、長距離逓減制の割引率をアップし、夜間割引は割引率を低下させることなのでしょうか。
 
今回の発表は最終ではありません。そもそも、現在公開されている情報もざっくりなので、本記事での見解が間違っている可能性も十分ありえます(※すでに、明らかに間違った情報を発信しているメディアもありますけどね)。
特に、長距離逓減制については、情報が足りなすぎますし、今回の発表内容では、解釈にブレが生じてしまいます。
 
今後の動向を注視しましょう。
 
 
 
※参考 「高速道路の深夜割引の見直しについて」(NEXCO東日本)

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