秋元通信

【前編】「物流情報標準ガイドライン」って何?、秋元通信流になるべくかんたんに解説しましょう

  • 2023.4.28

内閣府が主導してきた「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」が、「物流情報標準ガイドライン」を策定、2023年1月31日にこのガイドラインを掲載するWebサイトが公開されました。
 
「物流情報標準ガイドライン」という言葉は、業界メディアを日頃からチェックされている方であれば、耳にしたことがあるかと思います。しかし、その内容は…お世辞にもかんたんとは言い難いです。
 
本稿では、「日本一かんたんな『物流標準ガイドライン』の解説」を実現すべく、秋元通信流に、「どんなものなのか?」「どのように利用すればいいのか?」を、前後編に分けて解説しましょう。
 
 

標準化が必要な理由

 
読者の中にも、「海外メーカーの家具を買ったんだけど、何かと『マッチしないんだよね…』といった経験をした方がいらっしゃるのではないでしょうか。
 
例えば、A4サイズの書類やクリアケース、ファイルなどがうまく収まらない。
例えば、これまで使ってきた収納箱やファイルラックが入らない(あるいはやけにスカスカする)。
例えば、部屋に置いたところ、他の家具と面合わせが合わない(奥行きが異なる)。あるいは隙間にうまくマッチしない。
 
これらの理由は、家具を作るときの標準となるサイズ規格が異なるために発生します。
そして、同じようなことはシステム同士を連携させる場合、あるいは他社とビジネスを行う場合にも発生します。
 
例えば、WMS(倉庫管理システム)とTMS(輸配送管理システム)を連携させようとしたとき、日付データの形式が、かたや西暦表示、かたや和暦表示だったとしたら、そのままではシステム連携ができません。
 
物流事業者の場合、荷主によって出荷依頼書や配送伝票のデータ形式が異なるケースがあります。この場合、物流事業者が取る手段はいくつかあります。
 

  1. システム投資を行い、自社システムに取り込めるようにカスタマイズを行う。(データ変換ツールの構築)
  2. 目検で伝票等を再入力する。(人力によるデータ変換)
  3. システムに取り込むのを諦める。

 
実際には、荷主や取引量などを診て選択されるケースが多いことでしょう。
例えば取引量が多い荷主は1を行うけれども、取引量が少ない荷主は2.、さらに年に数回程度の取引しか発生しない荷主については3.を選択するといった具合です。
 
データの違いは、言語の違いに似ています。
いちいち翻訳(データ変換)するのは面倒ですし、コストもかかります。
 
「うちには英語が話せる人がいないから、海外メーカーとの取引は行わないよ!」という選択肢もあるでしょう。しかし、これは間違いなくビジネス遂行上の支障となるだけでなく、時にはビジネス機会の喪失につながります。
 
だからこそ、「誰もが同じ土俵で情報をやり取りし、あるいはビジネスを遂行するために」標準化が必要なのです。
 
 

「物流情報標準ガイドライン」はどのように使えばいいのか?

 
「システムを構築する」「ビジネスを構築する」、こういった機会に「物流情報標準ガイドライン」が必要となります。
 
例えば、あなたの会社で、新しくWMSを導入するとしましょう。
このような機会には、必ずシステムベンダーに確認してください。
 
「あなたのシステムは、『物流情報標準ガイドライン』に準拠していますか?」
 
答えは3通りありえます。
 

  1. 「準拠しています」
  2. 「分かりません」
  3. 「準拠していません」

 
1.はOKですね。
 
2.の場合は、「分からないのであれば、調べてください」とお願いしましょう。本論からずれますが、ここで調べてくれないシステムベンダーは問題ありです。「物流情報標準ガイドライン」の問題に限らず、今後お付き合いしていく上で、非協力的な態度を取られるケースが間々発生する可能性が高いです。
 
問題は3.です。
「物流情報標準ガイドライン」に準拠していないと、さまざまな問題が連鎖的に発生することがあるからです。
 
 

「物流情報標準ガイドライン」に準拠していないシステムが引き起こしかねない課題

 
まず、他のシステム(TMS、生産管理システム、勘定系システム、勤怠管理システム、ECシステムなど)とデータ連携したいときに、データ変換ツールを別途用意する必要があります。
しかし、いざデータ変換ツールを用意しようとしても難しいケースがあります。
 

  • データ変換ツールを構築するのに高額な投資を要する場合
  • データ変換ツールの構築を、システムベンダーが嫌がった場合

ないと思うでしょう?
でもあるんですよ。特に後者…
 
要は、自社の他システムを売り込み、囲い込みを行うために、他社のシステム連携を嫌がる(あるいは理由をつけて断ってくる)システムベンダーって、実はいます。これ、結構な大手でもやるんですよね…。
こうなると、「他にもっと良いシステムがあるんだけど、うちのWMSと連携ができないから使えないなぁ」なんてことになるわけです。
 
また、自社でシステムを一から開発するケース(フルスクラッチ)でも、「物流情報標準ガイドライン」は準拠させておくべきです。これはシステムベンダーに委ねる場合だけではなく、自社開発するケースでも同様です。
さらに言えば、ExcelVBA、Microsoft Accessや、FileMakerといった、(言い方は悪いですけど)素人が比較的簡単に手を出しやすいツールや、最近流行りのローコード開発ツール、あるいはRPAでも心がけるべきです。
データ形式が異なると、結局システム連携が難しくなりますからね。
 
さて、前編では、標準化の必要性と、「物流情報標準ガイドライン」の使い方(接し方というべきでしょうか)をご説明しました。次号後編では、「物流情報標準ガイドライン」について解説していきます。
 
お楽しみに!
 
 


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