秋元通信

【後編】「物流情報標準ガイドライン」って何?、その内容を、秋元通信流にかんたん解説

  • 2023.5.16

さて、前号に引き続き、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」が定めた、「物流情報標準ガイドライン」について、秋元通信流に噛み砕いて解説しましょう。
 
「物流標準ガイドライン」は、以下3つに分かれています。
「物流標準ガイドライン」Webサイトに掲載されている説明を転記します。
 

  1. 物流情報標準メッセージレイアウト
    運送計画や集荷、入出庫、配達といった物流プロセスで用いるメッセージを定義する。
  2. 物流情報標準共有マスタ
    物流標準メッセージレイアウトを採用する各業界システムがマスタ整備をする際の指針となる。
  3. 物流情報標準データ項目一覧
    メッセージやマスタで用いるデータ項目の項目名や項目定義を定める。

 
分からないですね。
これを読んだだけで、頭が痛くなりそうです。順不同になりますが、ひとつずつ解説します。
 
 

2.物流情報標準共有マスタとは【解説】

 
かいつまんで説明すると、物流ビジネスを行う上でやりとりされる情報の一覧であり、またシステムを構築する上では、必須とする項目を定義しています。
一例を挙げましょう。
 
 
項目名:
最大積載量1
 
必須:
必須
 
項目定義:
貨物積載量装置を最大に利用した場合の最大積載量
 
値の型:
数値6桁
 
備考:
最大積算可能な重量(Kg)
 
 
ちなみに、「最大積載量2」は、「乗車装置を最大に利用した場合の最大積載量」とあります。
 
日頃から私どもが利用している「最大積載量」という言葉ですが、その意味する内容は状況によって異なります。それを、誰もが同じ認識を持てるように、定義しているわけです。
 
なお、「物流情報標準共有マスタ」では、「車両マスタ」「事業所マスタ」「商品マスタ」「輸送容器レジストリ」の4つのカテゴリに分けて、それぞれデータ項目とフィールド定義が指定されています。
 
 

3.物流情報標準データ項目一覧【解説】

 
2.の「物流情報標準共有マスタ」よりも、より詳細なデータ項目とフィールド定義が指定されています。
 
一例を挙げましょう。
項目ID:0002の「情報区分コード」では、以下のような項目が設定されています。
 
2101:着荷予定情報
3011:運送計画情報
3012:運送計画情報(明細型)
3001:運送依頼情報
3101:集荷情報
3201:荷渡確認情報
3111:運送状況情報
3221:配達指定情報
3121:運送完了報告情報
 
その他、トータル54個の項目とコードが設定されています。
 
その下位に位置する情報のうち、着日に関するデータのいくつか(全部じゃないです)を紹介しましょう。
 

  • 「荷受人配達指定時刻(から)」(ID 30175)
    荷受人が指定する配達時刻(から)。数字4桁で指定。
  •  

  • 「荷受人配達指定日」(ID 30175)
    荷受人が指定する配達日、数字8桁で指定。
  •  

  • 「荷受人配達指定時刻条件」(ID 30178)
    荷受人が運送事業者に指定する配達時間帯(AM/PM等)。数字2桁で指定。
  •  

  • 「納入日」(ID 50270)
    納入した日付。数字8桁で指定。
  •  

  • 「納入予定日」(ID 50272)
    納入の予定日。数字8桁で指定。

 
すべて項目名が多少違っても(例えば、「納入予定日」「予定納入日」など)、IDさえ揃えておけば、異なるシステム同士の連携ができるわけです。
 
 

1. 物流情報標準メッセージレイアウト【解説】

 
これが一番わかりにくいかもしれません。
かいつまんで言えば、「物流ビジネスにおけるプロセスを定義したもの」となります。
 
一例を挙げましょう。
「物流情報標準メッセージレイアウト」では、「配達」のプロセスについて、以下のように定義しています。
 

「運送事業者が荷受人へ運送貨物を効率的に配達するため、配達に関わる貨物の受渡しや運送完了報告などの送受信に関わる運用ルールを定めたプロセス」

 
例えば、「配達」カテゴリ内の、「集荷」プロセスは、「運送依頼」「標準運送送り状・標準輸送荷札発行」「荷渡・集荷結果通知」という3つのサブプロセスに分解されます。そのうち「運送依頼」は、「運送依頼」と「運送依頼請け」というふたつの送受処理に分解され、「運送依頼」の送信者は「荷送人、運送依頼者」、受信者は「運送従事者」と指定され、これらの情報は、「運送依頼情報」にまとめられた184個のデータ項目で構成されます。
 
先の、2.、3.ではデータ項目を中心に整理整頓していますが、1.では物流における業務プロセスに紐づいて、データ項目を系統化していることになります。
 
 

「物流情報標準ガイドライン」に思うこと

 
倉庫会社や運送会社などとお話をしていると、よくこんなことを言われます。
 
「ウチの仕事は特殊だからさ…」
 
本当に特殊かどうかは別として、物流ビジネスのやり方には、多種多様なバリエーションが存在するのは事実でしょう。
 
このバリエーションの多さが、物流ビジネスにおけるさまざまな標準化の支障となってきました。
例えば、共同配送において、「ウチのやり方は、◯◯だから」といった違いが、共同配送実現の課題となるケースがあります。これも、言い換えれば標準化が進んでいないから発生する課題と言えます。
 
「物流情報標準ガイドライン」を見ていると、「よくまあ、多種多様な物流ビジネスをまとめたな!」と感心します。関係者の苦労には、頭が下がります。
もちろん、すべての物流が、「物流情報標準ガイドライン」(特に、「物流情報標準メッセージレイアウト」のプロセス)に合致することはないでしょう。
 
ただし…、ですよ。
今後、「物流情報標準ガイドライン」にマッチしない(できない)物流事業者や荷主、あるいは貨物は、他社の協力を得られず、どんどんガラパゴス化していくとも考えられます。
 
ガラパゴス化の先にあるのは、物流コスト(運賃や作業料、保管料など)の上昇や、担い手の不足です。
誤解を恐れず、端的に言えば、「『物流情報標準ガイドライン』に準拠できない物流は、先行き暗いですよ」ということです。
 
前編でも申し上げたとおり、「物流情報標準ガイドライン」はとても難解です。すべてをきちんと理解することなど、よほどの努力を費やさないと無理でしょう。
ただし、概観だけでも「物流情報標準ガイドライン」を理解しておかないと、今後、思わぬ落とし穴にハマる危険性があります。このことは、すべての物流従事者が理解しておくべきことでしょう。
 
 

参考

 
「物流標準ガイドライン」は以下に掲載されています。
 
https://www.lisc.or.jp/
 
 


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