JAFでは毎年、信号機のない横断歩道における、クルマの一時停止状況を全国調査した結果を公表しています。
本調査では、JAFが各都道府県ごとに2か所、信号機が設置されていない横断歩道を選び(※選定された場所は非公表)、クルマが一時停止する割合をレポートしています。ちなみに対象は白ナンバーのクルマだけです。
最新となる2024年調査のサマリーをご紹介しましょう。
- 全国平均の一時停止率は、53.0%。
初回調査の2016年が7.6%、前年2023年が45.1%であったことから、「信号機が設置されていない横断歩道では、歩行者が優先」という意識は高まっているものの、依然として2台に1台のクルマが、一時停止しないという状況にある。 - 都道府県別のランキング
- 「一時停止率が低い」ランキング
- 富山県:31.6%
- 北海道:34.1%
- 福井県:34.7%
- 茨城県:35.2%
- 和歌山県:36.2%
- 「一時停止率が高い」ランキング
- 長野:87.00%
- 石川:80.90%
- 岐阜:75.20%
- 熊本:74.80%
- 福岡:74.30%
- 「一時停止率が低い」ランキング
長野県と富山県では、一時停止するクルマの割合が倍以上違うということです。地理的には隣接しますが、こんなに県民性が異なるというのは、ちょっと興味深いです。
本記事の最後に、47都道府県すべての一時停止率ランキング表を掲載しておきます。
地域的な特性が見当たらない(例えば、「暖かい地域では一時停止率が高いなど」)ので、住んでいる人の性格や文化性、法令遵守意識などは、都道府県別に細かく異なっているということなのでしょうか…?
警察庁による交通事故統計によると、2023年における死亡事故・重症事故が発生したシチュエーションで、もっとも多いのが、「信号がない交差点における事故」(24.8%)でした。ちなみに次に多いのは、「信号がある交差点内における事故」(22.3%)です。
この詳細は、以下のようになっています。
- 【人対車両】信号機あり横断歩道での事故発生割合:6.7%
- 【人対車両】信号機なし横断歩道での事故発生割合:2.6%
- 【車両相互】信号機あり交差点内での「出会い頭」事故発生割合:5.8%
- 【車両相互】信号機なし交差点内での「出会い頭」事故発生割合:18.8%
言うまでもないことですが、信号がない交差点での事故では、「一時停止をきちんと行うこと」「交差点進入前・進入途中に、他車両や人がいないかどうか、きちんと安全確認を行うこと」で防ぐことができます(もちろん、もらい事故もありますが)。
ただし、交差点の中には、「事故が起きやすい交差点」があることも事実です。
ある調査研究では、「一時停止率が高まる」横断歩道の道路シチュエーションとして、以下を挙げています。
- 横断歩道表示が鮮明であること。
- ダイヤマークや横断歩道標識など、従来から広く使われているデザインが一時停止率を高めること。
- 片側2車線以上の道路よりも、片側1車線の道路のほうが、一時停止率が高まること。
また、交通事故では、被害者、第一当事者(交通事故の当事者のうち、過失割合が多い人)ともに、高齢者が多いことが知られています。
では、なぜ高齢者は交通事故を引き起こしがちなのでしょうか?
別の調査研究結果から、ご紹介します。
- 高齢ドライバーは、横断歩道を認知しても、減速のタイミングが遅く、停止線よりもより先(交差点内・横断歩道内)まで進行してしまう傾向が高い。
- 前項の結果に反して、高齢ドライバー自身は、「停止線で停止するつもりだった」と回答するケースが多い。つまり、自分自身の運転コントロール能力を誤認している可能性が高い。
- 高齢ドライバーは、横断歩道前で停止し、あるいは横断歩道に進入する際に、左右の確認回数が、比較対象とした高スキルドライバーに比べ、とても少ない。
- 高齢ドライバーは、停止線を超え、十分な見通しが取れる位置に達する前に、加速を実施しており、低速度で安全を確認しながら進行する時間が短い。
どう思いますか?
ご自身の年齢は別としても、「あれ、これは私の運転にも当てはまるかも…」と思った方は要注意です。
特に物流に関わる皆さんにとって、安全は絶対正義です。
また「信号のない横断歩道で、歩行者を優先し、一時停止をきちんとできているかどうか?」というのは、ドライバーの安全行動を測るための指標にもなり得ます。
本稿が、一時停止の大切さを再認識するきっかけになれば幸いです。