物流の効率化に、パレットは欠かせません。
とは言え、現場を預かる物流事業者としては、パレットを用いることで生じる弊害も気になるところです。
2024年5月24日に開催された「第8回パレット標準化推進分科会」(国土交通省、経済産業省、農林水産省)では、パレット標準化によって発生する効果を試算しています。
本分科会では、まずパレットの利用実態についてレポートしています。
- パレット化率は以下のとおり
- 社内の施設への輸送:71.7%
- 社外の施設への輸送:71.8%
- 保管:86.7%
- 保管⇒出荷時の荷役作業状況は、54%がパレットのまま輸送されているが、46%は別パレットへの積み替えやバラ積みなどの手荷役が発生している
- 輸送に使用しているパレットの31.7%がレンタル
「本アンケート調査への回答企業は積極的に物流の効率化を推進しており、全企業の平均よりも高いものと推測される」と注意書きがされていることを付記しておきます。
- パレット化可能な貨物輸送量について、標準的な規格・運用のパレットの利用により積み替え・手荷役作業がなくなった場合の年間効果は、コストが6,867億円(現状比16%)削減、作業時間が2.3億時間(現状比32%)削減と試算
- 作業時間の削減分で新たに運ぶことのできる標準化されたパレットによる貨物の輸送量として、新たに約3.1億トン(2.3億時間÷0.75(h/トン))の貨物を輸送することが可能と試算
あくまでも一般論ではありますが、手積みに比べ、パレタイズされた貨物は積載量が減ります。もちろん、パレタイズしたうえで、手積み時よりも積載量を増やした事例も世の中には存在するのですが。
この試算は、パレタイズによって荷役の作業時間が大幅に減少したうえで、その減少した時間を貨物輸送にあてることができ、さらなる効果を見込むことができることを報告しています。
本試算では、輸送経路を「発地:製造業工場等⇒ 中継地:製造業倉庫,DC等⇒ 着地:卸・小売業倉庫等」に設定しています。少しわかりにくいのですが、貨物がエンドユーザーの元に届くまでに、1回だけ中継拠点を通過する前提となっています。
そのうえで、以下3パターンの輸送にかかるコストを試算しています。
- ケース1:
パレットを利用していないケース - ケース2:
規格・運用が標準化されていないパレットを利用しているケース
(積地・中継拠点ではフォークリフトで作業ができるものの、最終卸地では手卸しが発生する) - ケース3:
規格・運用とも標準化されたパレットを利用しているケース
(輸送にかかる荷役はすべてフォークリフトで実施。レンタルパレットを利用している前提)
それぞれのケースについて、荷役やパレット回収などにかかるコストは以下のとおりです。
- ケース1:15,781円/トン
- ケース2:12,077円/トン
- ケース3:10,850円/トン
比率にすると、以下のようになります。
- ケース1:ケース2:ケース3 = 1.0:0.77:0.69
すべて手積み手卸しのケースに比べ、パレチゼーションを実現できると3割程度コスト削減になるという試算です。
ケースごとの時間試算(ドライバーの拘束時間)は以下のように算出しています。
- ケース1:1時間37分/トン
- ケース2:55分/トン
- ケース3:45分/トン
比率にすると、以下のようになります。
- ケース1:ケース2:ケース3 = 1.0:0.57:0.46
これらの結果はあくまでも試算ですから、試算の根拠──例えば運賃設定など──については「そんなにもらえていないよ!」と憤る事業者もいることでしょう。
一方で、パレット化について手間とコストを想像して尻込みしている荷主に対しては、検討を開始するモチベーションになるものと期待したいです。少なくとも、本分科会で示された資料に基づいて、自社における各種指標数値を代入すれば、「私の会社における、パレタイズの効果測定」ができるわけですから。
できれば国(国土交通省ですかね)には、この試算ができるExcelファイルを用意して、各社が自社試算ができるように配布してほしいと願います。