政府は、2024年5月に公布された改正物流関連2法について、2025年2月18日、省令と告示を発表しました。
この内容、物流に関わるすべての人にとっては、とても重要です。
メルマガ「秋元通信」では2回に分けて、秋元通信流に噛み砕いてお届けします。
本発表では、5つの資料が発表されています。
本稿では、以下の告示を取り上げましょう。
本資料では、物流関連2法が改正された理由と改正内容の骨子が説明されています。
【概要】「貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化の推進に関する基本的な方針」
- 目的と背景
- 物流は、国民生活、経済活動、地方創生のために不可欠だが、運転者の長時間労働、厳しい取引環境によって、人手不足が深刻化している。
- 商慣習や多重下請構造により、物流負荷が可視化・価格化されにくかったため、荷主企業や消費者が物流課題を認識しにくかった。
- 物流の2024年問題(自動車運転者の時間外労働上限規制が適用されること)によって、輸送力不足が懸念されている。
- 物流過程での二酸化炭素排出による環境負荷も考慮し、脱炭素化への取り組みも求められている。
- 物流効率化の必要性
- 将来にわたり必要な物資を確実に輸送するため、物流に関わる全ての関係者がそれぞれの立場で役割を再考し、物流効率化に取り組む必要がある。
- サプライチェーン全体の関係者が連携し、共同輸配送やモーダルシフトなどを推進することで、環境負荷の低減を図り、脱炭素社会の実現に貢献することが重要。
- タスク
- 持続可能なトラック輸送実現のためには、運送の効率化に加え、運送以外の荷待ち時間等の削減を、運送会社、荷主らが、それぞれの立場から実施することが必要。
- 運送会社は、輸送網の集約、共同配送によって、1ドライバー・1運行あたりの貨物重量アップを図ることが必要。荷主は、適切なリードタイムを確保するなど、運送会社に協力して、積載効率の向上等を図ることが必要。
- 国、地方公共団体、港湾管理者、空港管理者、卸売市場開設者、ショッピングセンター等、物流に関係する者、あるいは契約等には関係しないものの商取引に影響を持つ者も、ドライバーの負荷軽減に協力することが必要。
- 荷待ち時間の短縮:2028年度までに、トラック輸送の半分で荷待ち時間等を1時間短縮し、ドライバー1人当たりの荷待ち時間を年間125時間短縮することを実現する。そのために、1運行で発生する荷待ち時間等を1時間以内にすることを目標とし、やむを得ない場合のみ、2時間を超えないようにすること。
- 積載効率の向上:2028年度までに、全トラックの積載効率を44%(現行は38%)まで引き上げる。(全トラック運行の半分で、積載効率50%を目指す)
また、重量ベースだけではなく、容積ベースでも改善を図ること。 - こういった取り組みを通じて、フィジカルインターネットを実現し、脱炭素物流を推進。
- 国と地方公共団体の役割
- 運転者の輸送と荷役等の効率化に資する設備投資、デジタル化、物流標準化に取り組む事業者を支援すること。
- モーダルシフトなどへの支援や、トラックに代わる大量輸送機関、自動運転トラック、ドローン輸送の技術開発を支援すること。
- 物流標準化を推進し、高度物流人材の確保・育成を図ること。
- 国民に対して、物流の重要性や労働者の社会的価値についての理解を深めるよう努めること。
- 事業者の取り組み
- 運送会社、荷主らは、それぞれの立場で輸送網の集約、共同配送、帰り荷の確保、荷待ち時間短縮、積載効率の向上などの措置を講じることが必要。
- 荷主は、共同配送、リードタイムの確保、発送量・納入量の適正化などによって積載効率の向上を図り、トラック予約受付システム(≒バース予約システム)、パレチゼーション、検品の効率化、バースにおける荷捌き場所の確保等を行い、効率化と荷待ち時間等の削減を行うこと。
- 国民の理解と協力
- 再配達の削減や多様な受取方法の普及、ゆとりのある配送リードタイム、返品の削減、送料有料表示の見直しなどについて、国民一人一人の理解と実践が不可欠。
- EC・通販事業者は、物流事業者と連携し、再配達削減に向けた消費者の行動変容を促すことが必要。また、送料無料表示を続けるのであれば、説明責任が生じること。
- その他
- 物流に関わる多様な主体(国、地方公共団体、元請事業者、荷主、施設管理者、消費者など)がそれぞれの役割を果たし、連携することで、運転者の効率化を一層高めることが重要。
- トラック輸送における効率化においては、トラック・物流Gメンによる摘発、独占禁止法・下請法違反も含め、悪質な荷主、運送会社、元請事業者などに対する処分を厳格化し、荷主の法令遵守が不可欠。
全18ページにおよぶ本告示を、ざっとまとめました。
概ね、政府が推し進めてきた物流革新政策の内容を網羅していますが、運送会社と直接的な契約関係にないショッピングモールや港湾、空港などの施設管理者や、地方自治体の役割にも言及している点は評価に値するものと、筆者は考えます。
興味がある方、より正確な内容を知りたい方は、ぜひ前述のリンク先をたどり、本告示の原文をご確認ください。