突然ですが、眠くなってくると、まぶたが二重になる人がいます。
こういう人は、当人が眠気に襲われていることを隠そうとしても、周囲にバレてしまうので困っているようです。
部下でも、こういう人がいました。
打ち合わせのときに目が二重になることがあり、それが社内会議の場合は、「おっ、◯◯さんは、僕の話が退屈になってきたみたいだね」とからかっているふりをして注意したのですが、厄介なのはお客さまとのミーティングです。
お客さまも気が付きますからね…
病気なのか、それとも生活習慣によるものかはわかりませんが、お客さまに対する印象は悪くなってしまいます。
さて、今回は人の顔にあって、豊かな表情をつくる大事な要素であるまぶたについて、さまざまな雑学をお届けしましょう。
眠気を感じると「まぶたが重くなる」、あるいは「二重まぶたになる」人もいます。
これらの現象は、まぶたのむくみが原因なんだとか。
睡眠不足や眼精疲労によって、まぶたに水分が溜まり、腫れぼったくなることで、一重まぶたの人が二重まぶたのように見えたり、あるいは二重まぶたの人における二重の幅が変わって、「まぶたを重く感じる」ことがあるそうです。
しかし、これはあくまで一時的なもので、まぶたの構造自体が変化したわけではありません。
また、眠くなってくると、目が乾燥し、ショボショボしてくることがあります。
これは、眠りにつく前に涙をつくる涙腺が、涙の量を減らすことで発生する現象だそうです。
ではなぜ眠りにつく前には、涙の量が減らされるのでしょうか?
- 睡眠中の目の保護
睡眠中はまばたきをしないため、涙の分泌量を減らすことで、目の表面が乾燥しすぎるのを防いでいます。 - 副交感神経の働き
眠りにつくときは、リラックスした状態になり、副交感神経が優位になります。副交感神経は、涙の分泌を抑制する働きがあるため、涙の量が減ります。 - エネルギーの節約
涙の分泌には、エネルギーが必要です。睡眠中は、体のエネルギー消費を抑えるために、涙の分泌量を減らしていると考えられます。
いずれも、睡眠中に目を保護するための生理現象なのです。
まぶたは、眼球を保護するという重要な役割を担っています。
外部からの異物や刺激から眼球を守り、涙を分泌して眼球の表面を潤すことで、乾燥を防いでいるのです。
さらにまぶたには、眼を開けたときに水分(涙)を眼の表面に広げる働きがあり、まばたきをすることで、涙を眼球全体に行き渡らせ、汚れを洗い流す役割もあります。
まぶたは、必要なときにはすばやく反射的に閉じることで、眼を外傷から守るバリアの働きもしています。
また、涙には、基礎分泌、反射性分泌、情動性分泌の3種類があります。
- 基礎分泌は、常に分泌されている涙で、眼の表面を潤し、乾燥を防ぐ役割があります
- 反射性分泌は、目にゴミや煙などの異物が入ったときに分泌される涙で、異物を洗い流す役割があります
- 情動性分泌は、喜びや悲しみなどの感情が高ぶったときに分泌される涙です
さらにまぶたについて深堀りしていきましょう。
まぶたは、顔の皮膚から連続した薄い皮膚の層で、眼球を上下から覆っています。まぶたの表面は皮膚、裏面は結膜で覆われており、内部には瞼板(けんばん)と呼ばれる硬い組織があります。瞼板の中には、マイボーム腺と呼ばれる分泌腺があり、涙の蒸発を防ぐ油分を分泌しています。
まぶたは、前頭骨が形成する眼窩という窪みに収まっており、眼窩は眼球を保護する役割も担っています。目を開ける動作には、眼瞼挙筋と前頭筋という筋肉が関わっています。
一方、目を閉じる時には眼輪筋という筋肉が働きます。目を閉じると、眼球は上転して角膜が上まぶたの結膜にしっかり触れるようになり、酸素や栄養の供給を助けています。
まぶたには、眼球を保護するだけでなく、光量を調節する役割もあります。
強い光から目を守るために目を細めたり、暗い場所で瞳孔が開くのを補助するためにまぶたを開いたりすることで、網膜に入る光の量を調節しています。
まぶたは、私たちが快適にものを見るために、そして眼球の健康を維持するために、なくてはならない存在なのです。
人間を含む多くの動物にはまぶたがありますが、まぶたを持たない動物もいます。
その代表例が魚です。
魚は水中で生活しているため、まぶたで目を潤す必要がない種が多いです。また、まばたきをすることで外敵から身を守るための視界を遮ってしまうため、まぶたがない方が生存に有利だと考えられています。
ただし、一部の魚にはまぶたに似た「脂瞼(しけん)」を持つ種も存在します。
例えば、アジの仲間である「マブタシマアジ」や「ウルメイワシ」、ボラ、ニシン、サバヒー、サバ、アジなどが挙げられます。これらの魚は、眼球を覆うように「脂瞼(しけん)」と呼ばれる半透明の膜を持っています。
- 強い光や紫外線から目を保護する
- 水中のゴミや異物から目を保護する
- 回遊魚の場合、水の抵抗を減らす
これらの魚の多くは、回遊魚であり、外洋を泳ぎ回るため、強い光や紫外線、水中のゴミなどから目を保護する必要があると考えられています。
脂瞼とまぶたは少し異なりますが、目を保護する役割を担っているという点では、あるいは魚が水中生活に適応するために生み出した器官という点ではまぶたに通じるものがあります。
一方、両生類の中でも、オオサンショウウオのように水中で生活する種にはまぶたがありません。これは、魚と同様に、水中で生活するため、まぶたで目を潤す必要がないからです。
また、瞬膜(第三眼瞼)と呼ばれる、まぶたと眼球の間に位置する半透明の膜を持つ動物もいます。瞬膜は、まぶたのように眼球を覆うことができ、主に水平方向に動きます。
鳥類、爬虫類、両生類の一部、魚類の一部(サメ類など)は瞬膜が発達していますが、哺乳類では退化している種が多いです。
瞬膜は、水中で目を保護するために使われることもあり、ワニやビーバー、マナティーなどが瞬膜を使って水中で目を開けたまま周囲を確認しています。
これらのことから、まぶたの有無は、その動物の生活環境と深く関わっていることがわかります。まぶたは、動物が陸上生活に適応するために進化の過程で獲得した器官と言えるでしょう。
まぶたは、感情表現やコミュニケーションにもとても重要です。
- 驚いたときに目を見開く
- 怒ったときに目を細める
- ウィンクで愛情表現や同意を示す
- 恐怖や嫌悪の対象を見ないように目をつむる
- 思考に集中するために視覚を遮断するために目を閉じる
これらはまぶたが人の感情を表現する代表的な例です。
まぶたの形は、目の外見を大きく左右します。
人は、相手を見分けるときにまぶたを含む目の形に注目することが多いため、まぶたは審美的に重要な部位とされます。
ちなみに、人種によって形が異なり、欧米人に二重まぶたが多いのは、まぶたを引き上げる筋肉の付着がしっかりしているため。
一方、東洋系の人種に一重まぶたが多いのは、眼瞼の皮膚が比較的厚く、筋肉の枝分かれが少ないからとされています。
まぶたの特徴は、その人の性格、心理状態、あるいは健康状態を示すことがあるとされます。いくつか例を挙げましょう。
- 目尻の上がり具合
目尻が上がっている人は、意志が強い傾向があるとされます。 - 黒目の位置
黒目が上まぶた寄りになっている人は、精神的に苦しい可能性があるとされます。 - 目のくぼみ
利き手側の目がくぼんでいる人は、現在、心痛の原因や困難を抱えている可能性があるそうです。 - 左右の目の高さ
左右の目の高さが違うときは、意識が散漫になっていることを示すことがあります。 - 瞬きの回数
瞬きの回数が極端に少ない場合は、嘘をついているか、緊張状態にある可能性があります。 - 目を覆う(アイブロック)
目を覆う仕草は、拒絶反応を表しています。見たくないものがあると感じている状態かもしれません。 - 瞳の感情表現
男性は瞳に感情を出さない方が、女性は瞳に感情を表す方が、説得力が増すという研究結果があります。 - 笑顔と眉
笑顔を見せていても、眉間を寄せていたり、まぶたが下がって焦点が合っていなかったりする場合は、怒りや悲しみを隠している可能性があります。
まぶたが関連する病気も紹介しましょう。
これ、意外と知られていない病気もあり、またそれ故に他人から誤解を受ける場合もあるので要注意です。
- ものもらい
まつ毛の毛根などに細菌が感染して炎症を起こす病気。まぶたが赤く腫れ、痛みを伴います。 - 霰粒腫(さんりゅうしゅ)
まぶたの分泌腺が詰まって、まぶたにしこりができる病気。 - 眼瞼下垂
まぶたが下がってきて見えにくくなる病気。視野が狭くなったり、目が疲れやすくなったりします。
眼瞼下垂は、加齢や長期間のコンタクトレンズの使用、あるいは生まれつきまぶたを上げる筋肉が弱いことが原因で起こります。
眼瞼下垂になると、まぶたが涙をうまく広げることができなくなり、ドライアイを引き起こす可能性があります。
治療法としては、まぶたを上げる筋肉を短縮する手術などがあります。 - 眼瞼痙攣:
目の周りの筋肉が過剰に収縮し、まぶたが勝手にピクピク動いてしまう病気。 - 眼瞼内反
まぶたが内側に向いてしまい、まつ毛が眼球を刺激する病気。
眼瞼内反には、まぶたが内側にめくれこんでいる眼瞼内反症、まつ毛の生える向きが内側を向いている睫毛内反症、まつ毛の生える位置がおかしい睫毛乱生症の3種類があります。
眼瞼内反症は加齢が原因で起こることが多く、睫毛内反症は先天的なものです。
これらの病気は、子供の場合、弱視の原因となることもあります。
眼瞼下垂を患っている友人がいたのですが、周囲からは眠そうな表情に見えてしまいます。筆者は本人から病気で手術をしたことを聞かされるまで、「なんか睡眠時間が短い、だらしがない生活を送っているのではないか?」と疑っていました。
眼瞼下垂になり、まぶたが重く視界が狭くなると、無意識にまぶたの筋肉が緊張、その結果まぶたを上げるためにミュラー筋という筋肉が過剰に働きます。このミュラー筋は交感神経とつながっており、過剰に活動すると交感神経が優位になり、疲労感や不眠症につながることがあります。
病気のために苦しんでいるのに、勝手に生活習慣・生活態度を疑ってしまったのです。
今回、本稿執筆のために筆者もあらためてまぶたについて調べたのですが、知らないことがたくさんありました。
とてもよく目に付く器官ではありながら、意外と知らないものですね。