秋元通信

改正下請法の概要が発表されました

  • 2025.3.30

 2025年3月11日、下請法および下請中小企業振興法の改正案が閣議決定されました。
 改正案の概要をお届けしましょう。
 

  • 「下請」という用語の見直し
     今まで使用されてた「下請」を改め、今後は「中小受託事業者」とするそうです。
     同じく「親事業者」は「委託事業者」に改められます。
     
     政府いわく、「下請という言葉は今や使われなくなった」との説明ですが…、読者の皆さまは、どう思いますか?
     
    ※以降、本稿では「中小受託事業者」「委託事業者」と表記します。
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  • 手形払いの禁止
     目的は、中小受託事業者をはじめとする発注側が、資金繰りで困ってしまう事態を避けることです。
     したがって、電子記録債権・ファクタリングについても、最大でも60日以内に現金化できない取引は禁止されます。
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  • 従業員基準の追加(適用基準の追加)と拡大
     下請法の対象となる、委託事業者と中小受託事業者の関係性が見直されます。
     
    今まで:
    「委託事業者の資本金が3億円超の場合は、資本金3億円以下の中小受託事業者が対象」
     ないし
    「委託事業者の資本金が1千万円超3億円以下の場合は、資本金1千万円以下の中小受託事業者が対象」
     
    改正後:
    「委託事業者の従業員数が300人超、中小受託事業者の従業員数が300人以下」
     
     ただし、改正下請振興法では、下請法対象外となる中小企業同士の取引においても、支援・指導・助言・勧奨の対象となり、価格転嫁・取引適正化の浸透を促すとしています。
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  • 協議を適切に行わない代金額の決定の禁止(価格据え置き取引への対応)
    中小受託事業者から依頼された、値上げ交渉の打ち合わせ実施を拒否
    コストアップに見合わない価格を一方的に委託事業者が決定する など
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  • 運送委託の対象取引への追加(物流問題への対応)
     これまでも、運送事業者同士の運送委託は下請法の対象でしたが、荷主と運送事業者の間の取引は、下請法ではなく、独占禁止法の管轄でした。
     
     ただし、独占禁止法では優越的な地位の濫用にあたるような不正取引に対応する上で、時間と手間が掛かっていたため、下請法を改正し、荷主~運送事業者間の不正取引に関しても、迅速に対応できるようにします。
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  • 面的執行の強化 主務大臣の権限強化
     これまでは省庁をまたいだ縄張り争いのような非効率的な運用が行われていました。例えば、下請法において、各省庁ができるのは調査だけで、執行は公正取引委員会・中小企業庁と連携して行わなければなりませんでした。
     
     さらに驚くべきは、トラック・物流Gメンに対し、中小運送事業者が荷主の不正行為を告発した場合、これまでは下請法における「報復措置の禁止」の対象となっていなかったそうです。
     
     これ、筆者自身がトラックGメンに取材した際には、「報復措置は禁止」だと聞いた記憶があるのですが。
     
     今回の下請法改正では、この状況を改め、主務大臣に指導と助言の権限を付与します。例えば、運送取引における下請法違反は、国土交通大臣が指導・助言を行えるようになります(勧告を行うことができるのは、公正取引委員会のみ)。
     
     なお、改正下請振興法では、これまで主務大臣に与えられた権限は指導・助言まででしたが、改正後は勧奨(より具体的措置を示して、その実施を促すこと)を実施できるようになります。

 
 
 この下請法および下請振興法改正案の閣議決定を受け、石破総理大臣は、2025年3月14日に開催された「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」において、以下のように関係閣僚に発破をかけています。
 

「構造的な賃上げ環境を整備するため、昨年に体制を拡充したトラック・物流Gメンによって強力に荷主等への是正指導を行うとともに、来月から施行される改正物流法、今週閣議決定された下請法改正法案を契機に、荷主等に対する一層の価格転嫁・取引適正化を推進してください。」

 
 なお、さらに深く改正案の内容を知りたい人は、以下リンク先からご確認ください。
 

 
 
 


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