国土交通省は、2025年4月9日に「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」報告書を発表しました。
この内容を秋元通信流にざっとまとめましょう。
既存物流施設の老朽化や庫腹占有率の増加(※湾岸地域などの一部)といった課題に加え、政府が推し進める物流革新政策との連携も含めて、「物流施設に係る政策のあり方を再検討し、ソフト施策と一体で強力に推進を図る絶好機である」。
※以下、「」内は本報告書内の表記をそのまま転記しています。
本報告書では、倉庫、物流施設ではなく、物流拠点と表記しています。
この理由については、「建物それ自体に着目したニュアンスを帯びる『物流施設』ではなく、物流施設のニーズの多角化や施設の周辺との関わり、また輸送と輸送とを結ぶ結節点であることを意識し、『物流拠点』という語を用いている」と説明しています。
本報告書では以下のような表現が登場します。
- 「地域全体の産業インフラでもある物流拠点」
- 「(物流拠点は)トラック輸送とは切り離せず、物流の効率化のためには、十分な機能を有する物流拠点が適切に配置されることが不可欠」
これは物流不動産ビジネス・マーケットにおける自然発生的(あるいは物流不動産ディベロッパーの戦略など)な施設立地の限界と課題を反映した表現と考えるべきでしょう。
見出し「2.物流拠点の現状と課題」では、現状の物流施設の概要や課題が列記されます。
「本検討会では、民間事業者の採算性等の最適化のみを考慮した配置ではなく、全体最適を見据えた政策的な配置も必要であることが大きなテーマとして議論されてきた」としつつ、以下の指摘もあり、現実的な議論が行われていることが伺えます。
- 「将来を見据えた物流拠点の政策的な配置については、物流拠点の需要と供給を踏まえた効率的な配置が重要であることから、物流拠点の整備状況や物資の流動を定量的なデータとして把握することが必要との意見もあった」
- 「中継輸送拠点を整備していくことが有益であるとの意見が多くみられた。他方、中継輸送拠点としての潜在需要は大きいものの、発着拠点としての需要は必ずしも大きくない地方部における整備については、事業の持続性や採算性の観点から、民間事業者が整備を躊躇する可能性があること等も考慮するべきとの意見があった」
- 「建替えは、代替地の確保や建築に要する期間など、一朝一夕には実現しないことから、事業者間の連携や、地方公共団体の関与による計画的な代替え地確保などによる計画的な建替えが欠かせない」
今後の政策の方向性については、基本方針として、「今後物流拠点が担うべきと考えられる役割を見定めそれを備える物流拠点を促進していくこと」「公共性の高い物流拠点に係る整備・再構築を促進していくこと」が大切だとしています。
そのうえで、今後の物流拠点に必要な要素として挙げられたのは以下です。
- 中継輸送拠点
- ダブル連結トラック・自動運転トラックなどの新技術への対応
- 地域の産業政策・振興
- 防災拠点
また本報告書では基幹物流拠点という言葉が登場します。
基幹物流拠点は、以下の6点を満たす必要があります。
- トラック輸送の変容への対応(中継輸送や休憩・休息機能の充実)
- 物資の流通への対応
- 地域における産業政策・地域活性化政策への対応
- 交通のアクセス性(ダブル連結トラック・自動運転トラックの乗り入れ、貨物鉄道駅との結節など)
- DX・GXへの対応
- 不特定多数の者への開放、防災機能等
なお、基幹物流拠点の整備および運営のあり方については、「民間事業者主導で整備・運営が進められるもの、PPP/PFI手法の導入により公的主体が整備し第三セクターを含む民間事業者が運営する形態等、多様な官民連携について議論がされた」としています。
物流拠点整備促進の方策については、「投資を促進する方策(税制、予算措置、金融支援)」と「地方公共団体の関与のあり方」をポイントに、具体的な数値とともに税制優遇案を提示しています。
興味のある方は、ぜひ出典をご確認ください。
本報告書では、以下のような指摘が登場します。
「社会インフラとしての物流拠点の中でも、国民生活や経済活動に必要不可欠な物資の調達に関係する物流拠点は、物流を通じた国民生活や経済活動の持続的活動、ひいては経済安全保障や食料安全保障にとってもなくなってはならないものである」
本来、倉庫と輸送機関はクルマの両輪のような関係性にあります。
どちらが欠けても、サプライチェーンの最適化は実現できないわけですが、物流革新政策では、主として輸送機関にフォーカスが偏りすぎているきらいがありました。
私見ではありますが、「ようやく政府も『倉(くら)』の大切さに目を向けてくれたのね」と感じます。