秋元通信

今国会、注目のトラック事業適正化関連法案とは

  • 2025.5.28

※ご注意※
本稿の内容は、本稿執筆時点の情報を元に執筆しています。したがって実際に公布された法律とは異なる内容が含まれていることをご留意ください。

 
 
 
 国会では、日本のトラック運送業界に影響を与える「トラック事業適正化関連法案」が審議されています。
 
 秋元通信では、この法律が公布されてから記事にしようかと思っていたのですが、皆さん、関心が高いようですね。この法律に関する質問をとてもたくさん頂いているため、先んじて記事にすることにしました。
 なお、公布時に本記事の内容と大きく異なる情報があれば、その時には追加記事をお届けしましょう。
 
 
 

現国会で審議中の「トラック事業適正化関連法案」について

 
 現在、第217回国会において「トラック事業適正化関連法案」が審議されています。これは、全日本トラック協会をはじめとする業界団体が強く推進し、超党派による支持を得て議員立法として提出されました。
 
 この「トラック事業適正化関連法案」は、以下のふたつの法案から構成されております。
 

  • 「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」
    昨春改正されたトラック法を、さらに改正するもの
  •  

  • 「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律案」(新法)
    改正トラック法の規定の実効性を担保し、その円滑な施行を支援するための新たな法律。以下、トラック適正化新法※

 
※この法律に対する正式な略称は決まっていないようです。したがって、「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律案」をトラック適正化新法と呼ぶのは、あくまで本稿の都合であることをご理解ください。
 
 
 

なぜ、ふたつの法律が必要なのか

 

  • 既存法(トラック法)の改正は、既にできあがった法的枠組みに対して、的を絞った変更を行う
  •  

  • 新法(トラック適正化新法)は、既存法への統合が難しい、あるいは新たな権限付与を必要とする専門機関(後述する独立行政法人や政策会議など)の設立といった、より抜本的な仕組み作りを規定する。

 
 
 

主な改正内容

 

  • トラック運送事業の許可更新制の導入
    トラック適正化新法の目玉です。
    現行制度では、一度取得した事業許可は永続的ですが、改正案では5年ごとの更新制が導入されます。更新を受けなければ、事業許可はその効力を失われます。
    許可更新に関する事務の一部は、新たに設立される独立行政法人が担い、その運営費用は更新手数料によって賄われる予定です。
     
    5年ごとの更新制は、事業者に定期的なチェックポイントを設けることを意味します。
    これにより、事業運営の基準、財務状況、法令遵守状況などが定期的に審査され、また後述の適正原価の遵守や運転者の労働条件といった新しい基準への適合性も評価・チェックの対象となる可能性があります。
    この制度は、不適切な事業者や持続可能性の低い事業者を段階的に市場から退出させ、業界全体の質の向上を図るとともに、基準を下回る価格競争を抑制する効果が期待されます。
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  • 「適正原価」の遵守義務化
    国が、運送事業に必要な経費を算定した適正原価を規定し、トラック運送事業者は、この適正原価を下回る運賃・料金で運送業務を行うことが禁止されます。
    この制度は、現行の法的拘束力のない標準的な運賃制度に代わるものです。
    なお事業許可の更新時には、国土交通省が適正原価を下回る水準の運賃・料金で運送を行っている事業者に対し、是正指導を行うとされています。
    ダンピング運賃に対する直接的な罰金は現時点では明記されていないものの、許可更新時に是正指導があれば、事業者にとって実質的な圧力となることが期待されます。
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  • 運転者の処遇改善及び労働環境整備
    これ、ちょっと分かりにくいですが。
    改正後のトラック法の第1条(目的規定)には、「労働環境の適正な整備」が加えられます。
    また、同法第26条第6項として「労働者の適切な処遇の確保」が新設され、これには「労働者が有する知識、技能その他能力についての公正な評価に基づく適正な賃金の支払その他の適切な処遇を確保するために必要な措置の実施」が含まれます。これらの規定は、「トラック運転者様の社会的地位の向上と物流の持続可能性確保を目指すもの」とされています。
    これは、トラックドライバーが必要とされる運転、接客、荷役(養生)、軒先情報への理解と実践といったスキルに対し、「適正な評価を実施し、給料に反映しなさいよ」ということなのでしょうね。
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  • その他(新法及び改正案における主要規定)
    上記の他にも重要な規定が含まれています。

    • 政府内に「物流政策推進会議」を設置。
      この会議は、国土交通大臣、経済産業大臣、農林水産大臣、厚生労働大臣といった関係閣僚及び公正取引委員会委員長で構成され、省庁間の政策連携を強化します。
    • 運送業務の委託回数を2次までに制限するよう、元請運送事業者等に努力義務を課します。
    • 無許可営業、いわゆる「白トラ」に対する罰則を強化し、100万円以下の罰金を科します。

 
 
 

審議状況と今後の見通し

 
 2025年5月27日、「トラック事業適正化関連法案」は衆議院本会議で可決されました。
 この後、すみやかに参議院本会議でも同日、可決・通過する見通しとされる予定です。
 
 このスケジュール感から考えると、成立は5月下旬から6月上旬。公布はその数週間後となることでしょう。
 ただし、肝心の施行時期についてはまだ不明です。
 
 
 以下、私見です。
 まず、トラック運送事業の許可更新制と適正原価の設定については、期待したいです。
 ただし、これらが適正に運用されるかどうか、違反する事業者をきちんと摘発できるかどうかは不明です。
 こう言ってはなんですけど、運輸局や労基署による現状の取り締まりについても、穴だらけですからね…
 
 新たに設立される許可更新を担う行政法人が、きちんとしたチェック機構を果たすことができるかどうか、これから注視しなければなりません。
 
 許可更新制度が設けられれば、当然痛みが生じます。
 運送会社からすれば更新の手間が増えますし…、また更新手数料っていくらになるんでしょうね。
 
 許可更新制度が儀礼的なものになってしまえば、運送会社等の手間は減りますが、トラック輸送業界の正常化・清浄化の効力は下がるでしょう。
 一方で、許可更新制度が不埒(ふらち)な運送会社を排除できる厳しいものであれば、許可更新の際の審査にかかる手間は大きなものになるでしょうし、また更新手数料もかなり高額にならざるを得ないのではないでしょうか。
 
 となると、この新行政法人が「運送会社の負担を必要最小限に抑えたうえで、不埒な運送会社をきちんと排除できるだけの実効性を備えた運用方法」を提示できるかどうかが、重要になってくると筆者は考えています。
 
 絵に描いた餅にならないように。
 また、正直者が馬鹿を見る状況にならないように。
 
 引き続き、今後の動向に注目です。
 
 
 


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