秋元通信

明日、誰かに話したくなる「タンニン」のうんちく

  • 2025.6.30

 筆者の娘は毎日朝食にバナナを食べます。がしかし、先っぽの方は食べたがりません…
 理由は苦みのあるバナナがあるから。すべてのバナナが苦いわけではないのですが、苦いものは大人でも「うわ…」と思うくらい、とても苦いです。娘が残したバナナの先っぽは、すべて筆者が食べているので気がついたのですが。
 
 実はこれ、バナナに含まれるタンニンが原因です。
 タンニンと言うと、ワインやお茶に含まれる渋みと理解している人も少なくないかもしれません。
 バナナにも含まれるタンニン、実は古くから人類の生活を支え、近年では新たな可能性も期待されているすごい物質なのです。
 
 今回は、タンニンに関するうんちくをお届けしましょう。
 
 
 

そもそもタンニンとは?

 
 タンニンとは、多くの植物に含まれるポリフェノールの一種です。植物が、動物や昆虫、紫外線などから自らを守るために作り出す天然のバリア成分とも言えます。
 

  • 特徴は「渋み」
    タンニンの最も分かりやすい特徴は、口に入れた時に感じる「渋み」です。これは、タンニンが舌や口の中の粘膜にあるタンパク質とくっついて、粘膜をキュッと収縮させるために起こります。これをタンニンの収れん作用と呼びます。
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  • 植物の知恵
    未熟な果物が渋いのも、動物に食べられてしまうのを防ぐためのタンニンの働きです。
    特にまだ熟していない未熟な果実は、種子が未熟なうちに動物に食べられてしまわないように、タンニンを多く含んで渋みや苦みを出し、「まだ美味しくないよ」というサインを送って身を守ります。
    熟して種子ができると、タンニンが減って甘くなり、動物に食べてもらうことで種子を遠くまで運んでもらうという、植物の賢い戦略なのです。

 
 
 タンニンは、私たちが普段口にする様々な食品に含まれています。
 

  • 飲み物
    緑茶、紅茶、コーヒー、赤ワイン、ビール
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  • フルーツ
    柿、ブドウ、リンゴ、バナナ(特に未熟なもの)、イチゴ、ブルーベリー
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  • 野菜・豆類
    レンコン、ごぼう、栗、大豆、小豆
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  • ナッツ類
    クルミ、ピーナッツの渋皮
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  • その他
    チョコレート(カカオ)、アボカド

 特に、赤ワインの深い味わいや、緑茶の心地よい渋みはタンニンが主役です。レンコンを切ったままにしておくと黒くなるのも、タンニンが空気に触れて酸化するためです。
 
 
 

なぜバナナにタンニンが含まれているのか?

 
 バナナにタンニンが含まれている理由と、特に先端部分に多い理由には、植物としての生存戦略が関係しています。
 
 まずバナナにタンニンが含まれているのは、前述のとおり「植物の知恵」です。
 バナナも未熟なうちに食べられないように、タンニンを出して自己防衛しているわけです。
 
 ではなぜ先端部分(花の名残の部分)が苦い(=タンニンが多い)のでしょうか?
 バナナの先端にある黒い部分は、花の咲いていた名残(花落ち)です。この部分は果実が成長する過程で、外部から虫や菌が侵入しやすい、いわば弱点ともいえる場所です。そのため、バナナ自身がこの弱点を重点的に守るために、防御成分であるタンニンを他の部分より多く集めているのです。
 
 このように、バナナが子孫を残すために、知恵を絞って外敵から身を守ろうとした結果、先端部分に苦みや渋みの元であるタンニンが多く含まれている、というわけです。
 
 
 

昔から現代まで。タンニンの幅広い使い道

 
 タンニンはその化学的な性質から、古くから人々の生活に役立てられてきました。伝統的な使い道の例を挙げましょう。
 

  • 皮の「なめし(Tanning)」
    タンニンの語源ともなったのが、動物の「皮」を丈夫な「革」に変える「なめし」という作業です。皮の主成分であるコラーゲン(タンパク質)にタンニンが結合することで、腐敗を防ぎ、耐久性や柔軟性のある革製品が生まれます。
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  • 柿渋(かきしぶ)
    未熟な渋柿を発酵・熟成させて作る柿渋は、強力なタンニンを含んでいます。日本では古くから、和紙(番傘など)や木材、漁網に塗ることで、防水・防腐・防虫効果を高める天然の塗料として使われてきました。
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  • インクの原料
    中世ヨーロッパでは、タンニンを豊富に含む「没食子(もっしょくし)」という植物のコブを原料にしたインクが公文書などで広く使われました。この没食子から抽出したタンニンと鉄塩を混ぜて作る「没食子インク」は、水に強く、時間が経つと黒さが増して消えにくいため、長期保存に適していました。

 
 
 では現代では、どのように使われているのでしょうか。
 

  • 食品・飲料業界
    ワインやビールの製造過程で、液体を透明にする「清澄剤(せいちょうざい)」として利用されています。醸造後のワインやビールには、原料由来のタンパク質などが浮遊し、「濁り」の原因となることがあります。タンニンにはこのタンパク質と結合して塊になり、沈殿する性質があります。この働きを利用して余分な浮遊物を取り除き、澄んだ美しい液体に仕上げるのです。特にビールでは、冷却した際に白く濁る「チルヘイズ(低温混濁)」を防ぐ効果もあります。
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  • 化粧品
    タンニンの収れん作用(引き締め効果)を利用し、毛穴ケアを目的とした化粧水や美容液に配合されています。
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  • 工業用途
    金属のサビ止め剤や、水の浄化剤、インクの原料など、今でも幅広い分野で活躍しています。
    タンニンが錆止め剤や浄化剤になる理由は、鉄の赤サビにタンニンが触れると化学反応が起き、安定した黒色の「タンニン酸鉄」という物質に変化するからです。このタンニン酸鉄が鉄の表面に強力な保護膜(黒サビ)を作り、酸素や水が内部に触れるのを防ぐため、それ以上のサビの進行を抑えることができます。

 
 またタンニンは水の浄化剤としても活用できます。
 水中に浮遊する非常に小さな汚れの粒子にタンニンが吸着し、それらをくっつけて大きく重い塊(かたまり、フロックと呼ばれる)にする働きがあり、大きく重くなることで自然に沈殿したり、フィルターで除去しやすくなったりするため、水をきれいにすることができます。
 
 
 では、現在使われているタンニンは、どこから得ているのでしょうか?
 現在でもその多くは植物から抽出されています。ミモザや栗の木、あるいはインクの原料として紹介した没食子(虫こぶ)など、様々な植物から採れる天然由来のものが主流です。 一方で、特定の機能を持たせるために化学的に合成された「合成タンニン」も存在し、用途に応じて使い分けられています。
 
 
 

最新研究が解き明かす!タンニンの新たな可能性
 
 近年、タンニンの研究が進み、私たちの健康や環境に役立つ新たな機能や可能性が次々と発見されています。
 

  • 抗ウイルス・抗菌作用
    タンニンがインフルエンザウイルスやノロウイルスなどの働きを抑制する効果があるという研究が注目されています。ウイルスの表面にあるタンパク質に結合し、細胞への感染能力を奪うと考えられています。この性質を応用したマスクやスプレーなどの製品開発も進んでいます。
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  • 腸内環境の改善
    タンニンが腸内の善玉菌のエサとなり、腸内フローラ(腸内細菌の集まり)のバランスを整える働きがある可能性が示唆されています。
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  • 環境に優しい新素材への応用
    石油由来の接着剤やプラスチックに代わる、環境負荷の少ない素材としてタンニンが注目されています。木材由来のタンニンを使った接着剤は、シックハウス症候群の原因となる有害物質を排出しないため、建材への応用が期待されています。
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  • アンチエイジングと生活習慣病予防
    ポリフェノールの一種であるタンニンは、強力な抗酸化作用を持ちます。体内の過剰な活性酸素を除去し、細胞の老化を防いだり、動脈硬化などの生活習慣病を予防したりする効果が期待されています。

 
 
 渋みの成分として知られるタンニンは、単なる味覚の要素ではありません。
 古くから人々の知恵として活用され、現代では私たちの健康を守り、持続可能な社会を実現するための鍵を握る可能性を秘めた、「縁の下の力持ち」的存在だったのです。
 
 
 ちなみに渋みがあるバナナなのですが、筆者の経験上、「価格が高いバナナだったら渋みを感じない」というわけではないようです。ちなみに(筆者が買うものですから)、高級品ではなく、庶民的なスーパーマーケットで普通に売られている、ひとパック300円以下のバナナでの経験ですが。
 
 バナナって国内に輸入されてから最終的な熟成作業を行うはずなので、このあたりは熟成事業者の腕次第なのでしょうか…?
 
 
 


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